新橋演舞場 再演『ワンピース』観劇二、三回目

観劇一回目の時は、猿之助さん休演で代役の尾上右近さん始め皆さんが今までの力を見せつけてくれ愉しませてくれましたが、さて、二回目はいかにです。一カ月ぶりですからどんな感想を呼び覚ましてくれるのでしょうか。

パンフレットの中で、脚本・演出の横内謙介さんが「伝統芸能たる歌舞伎で、現代人を感心させるのではなく、感動させるのだ。」と書かれていて、これは、先代猿之助(現猿翁)さんからの叩き込まれたストーリーに関わる教えです。横内さんは、漫画『ワンピース』を読んで、自分が一番泣けたところを軸に構成を考えたのだそうです。(パンフ買う予定ではなかったのですが、マチネ料金で返金がありましたので購入)

一回目の観劇と二回目の観劇で大きく違ったのは、胸にグッとせまる場面が多くあったことです。おそらく、役者さん達は、この組み合わせでいくのだと腹を据え、自分の役の人物像を再構築して、対する相手の人物像とどう対峙していくかを模索しつつ進まれたのだとおもいます。

白ひげとスクアードとの場面、白ひげとエースら子供たちとの場面、ルフィとエースとの別れの場面、そしてルフィを立ち直らせるジンベエとの場面が大きくかぶさってくるのです。パンフレットは、二回目観劇のあとで読みましたので横内謙介さんの手の内にはまったかと思いました。そして、そこへ、行き着く過程を役者さんたちも通過したのだということを感じました。

ルフィの尾上右近さんも、ルフィの人物像、性格、成長をしっかり仲間と作り上げていました。動きもよく、これが右近ルフィだなと思わせてくれます。ハンコックも、美人である自分を誇示してルフィとの出会いから変化していき、最後は自分の背中の刻印に左右されぬ高貴さへと高めました。あの首のそりが笑わせてくれますが、漫画でもその設定なのが歌舞伎の型とつながりアニメあなどれずです。

エースが仲間の止めるのものも聴かず、サカズキの罠にはまっていくあたりは、エースの性格をよくあらわしています。そこが、ルフィがエースを慕うところでもあります。ロジャーの子として苦悩する自分をみつめてくれた白ひげへの想いが冷静さを越える感情として爆発するのです。

海軍はスクアードのロジャーへの憎しみを上手く操り、白ひげに刃向かわせ、全てを見通しての父としての白ひげの想いもはっきりでました。

海軍はセンゴクを筆頭に、エースにしろ、スクアードにしろその性格を見抜いていて狡猾です。

ジンベエは漁人族で海軍に囚われていますが、エースを助けにくるルフィという人間のガキに興味を持ち、ルフィを立ち直らせます。ルフィを助けてくれるのは、海軍が人間世界からはみ出させた者たちなのです。

麦わら一味白ひげ海賊団海軍女ヶ島アマゾン・リリーニューカマ―ランド漁人族天竜人赤髪海賊団。舞台上での関係は把握できました。覚えきれませんが、それぞれに、不思議な力を供えているのです。ルフィがゴム人間で手が伸びたりするように、それぞれが戦いの場面でもその力は強調されます。

クザンの吹雪を起こす力。(見せ場です) ルフィが氷つき、それをエースの炎が溶かすのです。この能力は、その能力を発揮する実があり、それを食べると備わることができ、その実の一つが最初の奴隷市場でも売られています。最初はこの意味がわかりませんでしたが、も重要な意味があったのです。

エースとサカズキのマグマの炎と炎の対決。(見せ場です) 指揮をとる赤い大きな旗と小さな旗。踊り狂う炎とマグマ。またこの場面進化していました。旗の間で飛び回っていた人たちが、前面であるいは対角線状で飛び回ります。最後のカーテンコール最初出られる赤い衣裳の6人がそのかたたちだと思います。

本水もやはり見せてくれます。こちらでの看守は、カーテンコールの赤い衣裳の6人の両脇8人のかたとおもいます。ブラボーと叫びたいほどの活躍です。

この本水の大うけの後でのボン・クレーでの花道、きついですが、いえいえ見事に引きつけます。「大当たり!」と大向うがかかりましたが、駄目なおかまが花道を制覇するとは、ワンピース歌舞伎ならではの快挙です。

ルフィの宙乗りも、10月とは違う満面の笑顔で、ここまできた一カ月の時間をおもい起こさせてくれます。

観劇三回めは、高校生に囲まれての観劇となりました。こういう状況はどう楽しもうか。埼玉の高校だそうで、お行儀のよい生徒さんで、「面白いからしっかり手を叩いてね。」と声をかけました。始まってしばらくすると、「はっちゃんか。」の声が聞こえます。普段なら「静かにしてください。」というところですが、耳をそばだてます。漫画を読んでいるのでしょう。「監獄所長の」で「マゼラン!」と即聞こえます。若い子のワンピース大向うが成立しそうです。「あれは?」ピサロはちょっとわからないようで、「あれがイナズマか。」三幕目あたりからは、芝居に引き込まれたらしく話し声がありませんでした。

ファーファータイムでは、後ろの高校生に、「立ちますので、見えなかったら立ってね。」と伝えました。後でおもったのですが、もしかすると、観劇中は立ったりしないようにと指導されていたかもしれませんね。宙乗りは見えていたと思いますがごめんねです。終わったあとは、スーパータンバリンをあげました。「もう出番はないけどね。」いえいえ太っ腹ではなく細っ腹です。隣の初演をみたというご婦人と、ここから若い人が歌舞伎に興味を持ってくれるといいですニョンと。(ニョンはご愛嬌ニョン!)

休憩時間、スマホで「これがジンベエだ。」と数人で検索しつつ覗いているので、家で検索しました。一気に漫画の登場人物がでないかと<ワンピース>で大まかに検索していたのですが膨大すぎてやめていたのです。そうか一人一人で狙い撃ちがいいのだと検索しました。

顔だけでなく全身の絵もあり、役者さんが衣装や顔の作りにそれぞれの工夫をしているのと比較でき、キャラもわかり一層面白さを増してくれました。若さの実の試食のお陰でしょうか。

ウソップの衣裳に赤い鹿の子があり、囚人のボーネスの頭には太い鉢巻が歌舞伎的要素を取り込んでいます。その他沢山あります。

一幕の休憩から「面白い。」の声が聞こえていましたが、おばさんはおばさんの実を食べなくてもおばさんですから、「面白くなるのはこれからだから楽しんでね。」「ありがとうございます。」と素直な返事。アマゾン・リリーの微妙な女の子たちよりやはり可愛いい女子校生でした。

一回目のとき、アマゾン・リリーで、スーちゃんのカツラが取れてしまうのですが、イワンコフがルフィを見て「あっ!笑ってる。」といったのです。これはスーちゃんのアクシデントで、イワンコフがルフィの気持ちをほぐすためだったのかなとおもいましたが、今回もかつら事件はありましたから最初からあったのでしょう。かつら事件もう一件あります。

人形のチョッパーの名前も映像にきちんとありました。花道のチョッパーも小さいながら存在感たっぷりで愛らしいです。

序章の声も勘九郎さん、七之助さんきちんととらえられました。勘九郎さんは、かなり感情を込められた語りとなっていました。

あれもこれもと浮かびます。若い人たちの感想ももっと聞きたかったのですが、この後は、若い人たちの感覚で盛り上がってくれることを想像して静かにします。

(サンジに過酷な過去があるらしい。好奇心の実より)

新橋演舞場 再演『ワンピース』観劇一回目

 

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