待たるる映画『ペンタゴン・ペーパーズ』

  • メリル・ストリープとトム・ハンクス共演の映画『ペンタゴン・ペーパーズ(最高機密文書)』。3月30日公開である。内容などどうでもよく二人の共演だけで一押しと思っていたら、スティーヴン・スピルバーグ監督の社会派映画である。新聞社ワシントン・ポストの女性発行人(メリル・ストリープ)と編集主幹(トム・ハンクス)が手に入れた機密文書をめぐっての実話をもとにしている。ニクソン大統領の時代。

 

  • 映画情報によると、映画『大統領の陰謀』(1976年)と映画『ザ・シークレットマン』(2017年)を観ておくとつながるとのことである。この二つの映画はウォーターゲート事件を題材にしている。『ペンタゴン・ペーパーズ』は時間的に二本の映画の前の話しになる。 ザ・シークレットマン』は上映中である。これは観ない訳にはいかないと観る。『大統領の陰謀』は、ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンの共演でわくわくして観た記憶がある。アメリカの若き新聞記者の二人が活躍したということはわかったが内容は地味な映画でわかったようなわからないような。再度観て納得できた。

 

  • ザ・シークレットマン』は、リーアム・二ーソン主演で、FBIの副長官・マーク・フェルトを演じる。FBIの組織が第一の副長官。フーバー長官の死によってニクソン大統領と親密な人物が長官代理となり、ウォーターゲート事件の捜査をやめるようにいわれる。ウォーターゲート事件というのは、ウォーターゲートビルのなかあにある民主党全国委員会本部のオフィスに五人組が侵入し逮捕された事件である。逮捕者の中にCIAにかつて所属していた人物もいたのである。

 

  • FBI(連邦捜査局)は司法省に属し、CIA(中央情報局)は独立機関でアメリカ合衆国大統領の直属である。フーバー長官は絶大な力をもっていた。政治家などの個人情報やスキャンダルの情報もファイルしてあり、FBIのなかでそうした仕事をしていた人とは、副長官・フェルトは一線を画していた。フェルトはFBI第一である。フーバー長官の収集した情報資料なども即処分してしまう。ホワイトハウスはFBIの一掃一新を目指している。ホワイトハウスのあからさまな介入が始まる。

 

  • 大統領の陰謀』はワシントン・ポスト側をえがいているのに対し『ザ・シークレットマン』は、FBI副長官・フェルトがなぜ情報提供者となったのかが描かれていて二つの映画を対にして観ると全体像がくっきりとうかびあがる。『ザ・シークレットマン』にはフェルトの家族も登場する。一人娘が家出をして行方不明である。娘と同じ名前の住所に手紙を出す父親フェルト。しかしその作業にも内心はみせない。父親の姿をみせるのは、、、。フェルトの仕事による家族の苦悩もあったが、そこのところは映画としての比重のかけかたも抑え気味にし、ニクソン大統領辞任への歴史的流れを邪魔させない。

 

  • 大統領の陰謀』は内容もであるが、ダスティン・ホフマンの独特の歩き方とかロバート・レッドフォードのチェックのシャツのカフス部分が忙しさのために少し折れているのにも目が行く。ワシントン・ポスト記者、ウッドワード(ロバート・レッドフォード)とバーンスタイン(ダスティン・ホフマン)は、ウォーターゲート事件に対し疑問を持ち始める。容疑者の弁護士のこと、電話で問い合わせて得たことが、次に確かめるとそんな電話はなかったとの信じられない返答。ふたりの上司は若い二人を後押ししてくれ編集主幹も掲載を許可してくれる。編集主幹・ベン・ブラドリー役のジェイソン・ロバーズがくせがありなかなかいい。と思ったら、『ペンタゴン・ペーパーズ』の編集主幹がベン・ブラドリーで演じるはトム・ハンクス。楽しみが増えた。

 

  • ウッドワードに情報を流す人物が謎で、ビルの地下駐車場で会うが、その場面が誰かに殺されるのではないかとドキドキするようにつくられている。謎の人物に仮の名前をつける。<ディ―プ・スロート>。行き詰まったウッドワードにディ―プ・スロートは金を追えとつげる。何の金か。ニクソン大統領の再選委員会の委員に取材しはじめると、取材は拒否されおびえている人もいる。ウッドワードとバーンスタインは辛抱強く一人一人取材し続け、おかしな金の流れをつかむ。

 

  • バーンスタインがウッドワードの記事を添削したり、バーンスタインの取材の粘り強さなど、二人の俳優の役の人物像の違いなども今回はじっくりである。最後はタイプライターの打つ文字が名前と有罪を知らせる。ニクソン大統領辞任。

 

  • ディ―プ・スロート>は誰なのか。2005年に元FBI副長官・フェルトが自分であったと公表。当時ホワイトハウスもフェルトであるとわかるがどんな情報を持っているかわからないので副長官からおろすがFBIから外へは出さなかった。しかしフェルトは、かつてFBIが盗聴していたことを認めて部下には自分が命令したと責任をとる行動にでるのである。1976年の映画が2017年の映画で結ばれ、映画ってやはり面白い。

 

  • 元CIAの職員でNAS(国家安全保障局)の局員が内部告発した映画がある。オリバー・ストーン監督の映画『スノーデン』(2017年)で、その前にドキュメンタリー映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』(2014年)がローラ・ポイトラス監督・撮影・編集で公開されている。アメリカが国民の個人情報を収集し監視していたのである。その監視するシステムの凄さがエドワード・スノーデンによって告発された。

 

  • 超頭脳集団が考え出したシステムに乗ってどんどん集められる個人情報。誰とメールや電話のやりとりをしていたか。パソコンからインターネットにどんな検索をしていたか。キャッシュカードの使われ方まで、想像をこえる個人情報をキャッチできるシステムが開発されていた。ここまで進んでいるのかと驚くやらあきれるやら、頭ばかりでなく、口ぽかーんである。いやいやもっと大きな情報も収集されている。

 

  • こうしたことがやれる今の世の中であるから、どんな人間が権力を握るかで一般の人々の生活が一変するわけで、それを抑えるものは何か。人間の理性であろうか。力のない虚しい言葉に響くのが哀しい。権力はそれ以上に人間にとって魅力的な力も持っているのであろう。皆がひれ伏してくれればそれは嬉しいことでしょうし、もっとと思うでしょう。

 

  • ドキュメンタリーのほうは、英国の新聞社などのジャーナリズムの前でリアルタイムでビデオカメラの前で発言していて、CIAなどの捜査をかいくぐりながらなので緊張感が伝わる。それにしても、国民の情報を簡単に下請けに任せる我が国はどうなっているのであろうか。こちらも、ポカーンであるがあまりの扱いの軽さに違う恐ろしさも加わる。優秀な人間の脳の活躍も、将棋とかスポーツの頭脳プレーのほうがずーっと人を楽しくて幸せにしてくれる。

 

  • 3月30日に公開されるもう一本の映画『ウィンストン・チャーチル』は、特殊メイクをされた日本人の辻一弘さんが大きくクローズアップされました。ゲイリー・オールドマンが辻さんを選ばれたからこそのアカデミー主演男優賞受賞となったともいえるでしょう。チャーチル役のゲイリー・オールドマンのピースが、辻一弘さんへのようにも見える。

 

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