『バカのカベ~フランス風~』(加藤健一事務所)

時のながれも粋なもので、風間杜夫さんと加藤健一さん息もぴったりである。

風間杜夫、加藤健一とくれば<つかこうへい>だが、その頃は演劇雑誌か何かで「熱海殺人事件」を読んで、こんな台詞をどうやって料理して舞台に載せるのかと想像がつかなかった。舞台の汗だらけの役者さんの写真と劇評を読んでもやはり想像力はこの台詞たちを突き抜けられなかった。つかこうへいさん作・演出の初めての舞台は、「熱海殺人事件/モンテカルロ・イリュージョン」で感じはつかめたので、最初に読んだ戯曲の舞台を楽しみに待ちやっと見れた時は嬉しかった。台詞と役者の動きが突発的であるのに必然でもあるようにも思わせ、それは不合理だと思わせていつの間にか納得させられてしまうその押し寄せる波は、怖さと快感を伴っている。今度はだまされないぞと思っているのにまた裏をかかれる。世の中よく見つめなければ。

とにかく動き回りしゃべりつづけたお二人の30年ぶりの共演(競演)である。文句なく楽しい。登場人物になりきっていただければ話の展開としては笑わせてくれる話なのであるが、そう簡単なものではない。ドタバタで終わってしまう可能性もある。

ピエール(風間杜夫)は毎週火曜日、変わり者を招待し本人には気づかれないように「バカ」として仲間内で笑って楽しむという悪趣味がある。そんな事を知らず招待されたフランソワ(加藤健一)は自分の趣味のマッチで作る橋や塔の事を理解してくれる新たな友人が出来ると思い込んでいる。ピエールがぎっくり腰になってしまいフランソワと自分のマンションで待ち合わせて行こうと思っていた悪趣味のパーテーにいけなくなる。動けないピエールはやってきたフランソワに来週に延ばすことを了承してもらい、来週の為にフランソワから笑いのねたを捜しておこうとする。動けないピエールの事を思ってやるフランソワの行動は自分の思い込みを優先させ脱線し誠実でありながらどんどんピエールを窮地に追い込んでいってしまう。動けないといってもフランソワとのからみで動かざるえないピエール。つかさんが見たら30年後のおまえたちの動きにしては上出来だといいそうで可笑しい。笑い者にされかけたフランソワが引き起こす渦はあるところでキュウーと上手く治まるかに見えて・・・・

風間さんと加藤さんのそれぞれが歩まれた芝居の経験のコラボの上手さだと思う。ピエールとフランソワの人物像がしっかりしているのできちんと役の登場人物を楽しめる。そこの基本はお二人共通していると思える。どんなに笑っても観たあとで、ピエールはこんな人、フランソワはこんな人と人物像が残る。お二人気が合って楽しそうに演っておられるがそれだけの役者魂とは思われない。よく笑わせてもらいました。つまらぬ事をぐだぐだ書いて笑われているのは承知のうえである。

 

 

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