映画館「銀座シネパトス」有終の美 (3) 「あした来る人」「銀座の恋の物語」

「あした来るひと」(1955年)と「銀座の恋の物語」(1962年)。

「あした来る人」は白黒のフランス映画を見ているようである。原作・井上靖、監督・川島雄三、出演・山村聰/三橋達也/月丘夢路/新珠三千代/三國連太郎。

新珠を中心に人間関係を説明すると、新珠は洋裁店を開いておりパトロンが山村である。新珠はふとしたきっかけから三橋を好きになる。三橋は月丘と結婚しているが三橋は登山が命で、夫婦仲は上手くいっていない。月丘はかじかの研究をしている三國に魅かれる。月丘の父が山村である。山村は関西の財界人で、東京に来た時泊まるのが日比谷交差点にあった日活国際ホテルである。このホテルで新珠は山村の娘が月丘であることを知る。その時三橋と月丘は離婚しているのであるが、新珠は心の整理がつかず三橋のもとへは行けなくなるのである。ラスト、ホテルの廊下を歩く山村が若い者たちがまだ不完全でいつか彼らも完全な人となるであろうと心の中でつぶやく。

登場人物はきちんと言いたいことをいう。何で行き違うかもはっきりしている。その方向で行動する。しかし、立ち止まる人がでる。それが「あした来る人」ということなのか。

可笑しいのは三国が、こんな面倒な人間関係は御免であると、さっさとかじかの世界にもどり東京を後にする事である。。そういう道も作っているのが川島監督らしいし、新珠さんも月丘さんも美しい。この美しさがどろどろした人間関係にならない。この美しい人に余計な台詞は使わない。時として人形に陰影を与えるような表情を映し出す。こういう表情はスクリーンで見てこそである。

新珠さんの洋服は森英恵さんのデザインできりっとしている。月丘さんは着物で後ろ姿の帯の模様がモダンで妥協しなさを表している。川島監督の女性に着せる衣裳はその性格をも表し、おしゃれである。東京生まれのモダンボーイと思いきやそうではないので、彼独特の美意識なのだろう。森さんも監督たちの美意識が師でもあったと言われている。

日比谷交差点前の日比谷公園も噴水などよく使われる。「東京は恋する」では日比谷花壇(花屋さん)の看板描きをしているし、「二人の銀座」では、楽譜を忘れる場所がこの近辺の公衆電話である。

「銀座の恋の物語」でも浅丘ルリ子さんは洋裁店に務めている。妹分として和泉さんもお針子さんとして出ている。恋人が絵描きの石原裕次郎さん。浅丘さんの記憶喪失の時期があるが最終的には結ばれる恋物語である。お金の無い二人のデート場所が夜のビルの屋上でご馳走は屋上からの銀座のネオンである。裕次郎さんに心よせる婦人警官に江利チエミさんがでている。三人娘の映画の時はいつもコミカルな明るい役なのであるがこの映画では地味で脇を固めている。短いが歌う場面はさすが華がある。この映画の衣裳も森英恵さんで貧しい若き二人という事で衣裳の数も少なく地味である。

この映画の出だしは裕次郎さんが人力車で銀座の町を走る。スクリーンで見るとその道路の上とかビルの狭間とかにいる気分にさせてくれる。

撮り方も上空からビルの間を潜り細い通りの道路上で止まり、その時はセットの道路上でそのまま主人公の歩く進行方向に動いて行き主人公の目指す建物の前にいる形となり、実物とセットを上手く組み合わせていく。おそらく俳優も忙しくなり、また、ロケなどでの人の整理も大変になってそういう手法が多くなるのであろう。

「東京の暴れん坊」の第二弾「でかんしょ風来坊」などは<松の湯>なども煙突は実物で中はセットである。こちらの銀座の次郎長の台詞の滑らかさは第一弾より江戸っ子になっている。

 

 

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