平成25年10月26日から始まった市川市ミュージアム企画展の『水木洋子展』も3月2日で終了である。期間が長いのでと思っていたが、なんとか2回行くことが出来た。水木さんが脚本を書くにあたって現地へ行かれ念入りな取材と資料の中から積み上げていった事はよく分った。たとえば、『ひめゆりの塔』に関して、現地の校長先生の話の取材で<沖縄では、いわゆる適格者(18歳以上60歳までの男女)は軍の命令によって疎開できなかった>とあり、映画の会話の中にも、自分の母親が60歳なので疎開できないで残っているとでてくる。水木さんの取材メモが無かったら見過ごしたであろう。そんな事実があったのだ。
東日本大震災のとき、未亡人の知人が息子さんさんにとにかく後で笑い話になってもいいから関東から脱出して関西に行ってくれと言われ京都に行ったそうである。ホテルはどこも満室に近かったようだ。お母さんが行っててくれれば何かがあれば、僕たちはバイクでもなんでもそちらに行けるからと言ったそうで、笑い話ではなく、凄い親孝行な息子さんと話を聞いた皆は感心した。この沖縄の話からそんなことも思い出した。
今回は、展示されていた水木さんの映画作品のポスターやチラシの中の宣伝や紹介文を一部載せておく。
『ひめゆりの塔』 一人の英雄もなく一人の残虐な将校もいない焦土と化した沖縄に「ひめゆり部隊」二百余名の乙女がその若き生命を捧げて永遠の平和を願う 一大叙事詩!世界映画史上に不滅の一頁を!
『キクとイサム』 村中をひっくり返すデブちんと腕白小僧!
『おとうと』 生きることに徹し愛することに徹した二つの魂!市川崑が人間の美しさ挑む文芸大作!
『喜劇 にっぽんのお婆ぁちゃん』 ズラリ揃った奇想天外の配役陣!愉快で陽気なオバアチャンの浅草道中!
『あれが港の灯だ』 波荒き玄海灘に体当たりする日本映画界空前の野心作!!
『裸の大将』 頭がよわいが絵を描きゃ大将!日本中の毒気を抜いてぶらぶら歩けば犬まで笑う!
『ここに泉あり』 いばらの道をふみこえて夢は大きく花ひらく今井映画最高の壮麗ロマン!
『あらくれ』 幾度も男に傷つき躓きながら女の生甲斐を求めるお島
『あにいもうと』 洋画ファンも文化人もきっとこの怒りと愛情に泣く!最高文芸巨編!
『夫婦』 市井の片隅に揺れていて侘しい夫婦のささやかな愛の灯妻の倖せとは・・・全女性いに献げる愛の珠玉
『丘は花ざかり』 恋する現代女性の生態、限りない親愛感を以てせまる石坂洋次郎文学決定版
『おかあさん』 往年の名作「綴方教室」を凌ぐ感動の芸術作品!
『浮雲』 風に吹かれ雨にたゝかれ儚くながれゆく浮草の流転する姿にも似た女が・・・・
今回展示されているポスターの一部で、ポスターは幾種類かあるので、そこにはまた違う宣伝文があるであろう。
展示と関係の無い他の資料の中には、たとえば、『浮雲』などは、<漂泊の涯てなき恋の旅路の歌かあわれ女の情炎図>と書かれたものもある。こうして見ていくと、いかにして映画にお客を引き付けるか宣伝部が工夫をこらしていたのであろうと 想像できる。今の時代のポスターはどんなであろうか。気にかけていなかったので、これを機会に気をつけてみよう。