特別企画 8・15 反戦・反核映画祭

池袋の新文芸坐で特別企画のオープニングとして

8月6日 ・7日 「映画が描いた原爆の悲劇  -スペシャルゲストを迎えてーが開催された。

6日が『原爆の子』、『黒い雨』を上映し、スペシャルゲストに奈良岡朋子さんを迎えてのトークショーで、

7日が『愛と死の記録』、『母と暮らせば』を上映し、スペシャルゲストに吉永小百合さんを迎えてのトークショーです。

6日の奈良岡朋子さんの話しが実り多いものでしたので、吉永小百合さんのも是非聞きたいと思い挑戦したのですが、整理券の取得ができませんでした。映画も15時10分からしか入場できないということなので一応見てはいるのでやむなく帰ることにしました。暑いので図書館によったところ、お二人のトークの聞き手の立花珠樹さんの著書『新藤兼人 私の十本』の本があり、奈良岡さんのトークとも重なり多くの情報源となりました。

『原爆の子』は、原爆投下から七年目に撮影され、当時の広島の様子を残す貴重な映像ともなっています。新藤兼人監督、吉村公三郎監督等が独立プロ「近代映画協会」をつくり大映と提携して映画を創りはじめます。しかし、『原爆の子』は大映から許否されてしまい、『愛妻物語』で一緒に仕事をした宇野重吉さんに一緒にやらないかと相談したところ即決のかたちできまり、近代映画協会と劇団民藝が半分ずつ資金をだすかたちとなり、民藝の劇団員が出演ということになります。

奈良岡朋子さんは、乙羽信子さんが幼稚園で教えていて生き残った園児を訪ねる園児の一人の姉役で一番上の兄が宇野重吉さんです。奈良岡さんは、潰れた家の下敷きになって足が不自由になります。結婚を約束した人が復員したとき、結婚を断られるのではないかと心配しますが、婚約者は約束を守ってくれ乙羽さんが訪ねたその夜が結婚式の日でした。奈良岡さんは落ち着いた感じで喜びを内に秘め、宇野重吉さんが、乙羽さんに心からほっとして語るところが兄の妹に対する情愛をにじませます。

奈良岡さんは、『原爆の子』のロケ風景もよく覚えておられ、老婦人から本当に足が不自由だと思われ「おいたわしい」といたわられたそうで、自分たちのほうが大変なのに優しく、広島は人が少なく、泊まった民家の柱には、ガラスの破片が刺さっていたそうです。

奈良岡さんも空襲を体験されていて、そのトラウマのため70歳まで戦争のことは思い出したくなく話したくなかったそうです。しかし、やはり伝えなくてはと思い、劇団の若い人たちにも話すようにし、井伏鱒二さんの『黒い雨』の朗読もはじめられました。

日本が木造住宅であることを知っていて、先に爆弾で建物を破壊し、そのあとで焼夷弾をおとして燃やし、弘前へ疎開する列車でも、デッキにつかまっている人は、機銃掃射で殺されていったと話されました。

多くの役をされているので、その役作りについて立花さんが尋ねられると、全て自分のなかにありますと。<人殺しの役もしますが、たとえば人は殺さなくても自分の血を吸った蚊が腕に停まっているのを打ち殺したときやったと思うでしょ、それは一種の殺しの快感ですよ、全て自分の中にあります。>

明快な答えがポンポンかえってきて、それが実体験をともなっているので説得力があります。

奈良岡さんは不思議なお付き合いがあって、美空ひばりさんが大病をされた後に『みだれ髪』をレコードに吹き込まれて終わって最初に電話で報告されたのが奈良岡さんなんですよね。プロとしての仕事を成し得たとき、伝えたくなるようなかたなんでしょう。

立花珠樹さんの『新藤兼人 私の十本』から少し紹介しますと、大映が『原爆の子』を拒否した理由は、「まだアメリカの占領の最中だぞ!原爆を誰が落としたと思ってるんだ。占領が解けていないのにアメリカに対して直ちに反抗的なものをつくるなんてとんでもない。」ということです。これだけの民間人を犠牲にするなら、通告があってしかるべきかと思います。不意打ちですからね。核を持たなければいいのです。映画は平成23年(2011年)にアメリカで「新藤兼人回顧展」で初めて一般公開されています。企画したのが俳優のペ二チオ・デル・トロさん。頑張って映画にしておいてよかったです。

見たいと思っていた島崎藤村さんの『夜明け前』も近代映画協会で、脚本・新藤兼人、監督・吉村公三郎でした。

吉永小百合さんはどんな話しをされたでしょうか。『夢一途』のなかで、『愛と死の記録』でカットされた部分があり残念だと書かれていましたが、立花さんそのあたりも聴き出されたでしょうか。

それからこの企画は「新藤兼人平和映画祭主催」でもあり、若い方が尽力されています。

この映画祭で10日上映される渥美清さんが企画・制作した『あゝ声なき友』のDVDもみました。肺疾患で内地にかえされ生き残った兵士が、戦友の遺書を遺族に届けるのですが、寅さんとは別の役目を果たす渥美清さんです。最後、主人公の渥美さんの眼がどんな想いを現しているのか汽車の陰になって映されないのがこちらに何かを考えさせます。

オバマ大統領と結ばれた折鶴の少女・禎子さんをモデルとする映画『千羽づる』も13日に上映されます。

この暑さが原爆で被爆された方々にはもっともっと暑かったのです。

 

 

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