国立劇場『復曲素浄瑠璃試演会』

国立劇場あぜくら会の会員を対象にした「あぜくらかいの集い」での催しものがありました。

途絶えていた曲の復活で、滝沢馬琴さんの『南総里見八犬伝』をもとにした『花魁莟八総(はなのあにつぼみのやつふさ』のうち「行女塚(たびめつか)の段」「伴作住家(ばんさくすみか)の段」の復曲をめざし、今回はその試演会ということですが、すでに、大阪・国立文楽劇場で試演ずみです。さらに「芳流閣の段」は、3月22日、大阪・国立文楽劇場で試演会があるようです。

この催しは、大阪でも友の会の会員対象で、今回の東京のあぜくら会は抽選で、当選して聴くことができました。『南総里見八犬伝』は歌舞伎では、国立劇場でも上演され、澤瀉屋一門のスーパー歌舞伎でもあるのですが、文楽では途絶えていたわけです。

床本は残っていて、深川の名コンビ、竹本千歳太夫さんと野澤錦糸さんが中心になって復曲に尽力されたのです。 素浄瑠璃の会 『浄瑠璃解体新書』

はじめ児玉竜一さんの解説があり、床本の資料は渡されていたのですが資料は読まないで、実際に聴いて内容の変化を楽しんでくださいと言われました。犬がでてくるが猫の役割にも注目とのことです。猫のところでの語りが、ある作品と似ているのでどの作品か当ててくださいともいわれ、浄瑠璃の後の座談会で回答を披露されました。回答は来月の歌舞伎『伊賀越道中双六』の岡崎でのお谷のなげきのところだそうですが、全くとらえられず、残念ながら、猫に小判でした。

場所は大塚村で、今の東京の大塚でのはなしで、犬塚信乃と浜路はロミオとジュリエットのような関係で、浜路は、信乃の父親・伴作の異母姉の亀笹と夫・大塚蟇六の養女で、両家は反目しています。さらに里見の重宝村雨丸もでてきますし、信乃は刀をみると震えあがってしまうという病ですが、その病もなおります。どうして治ったかというのも聴きどころです。

亀笹の可愛がっていた猫が、伴作が飼っている与四郎犬にかみ殺されてしまいます。これは何か起こりそうです。

「行女塚の段」は豊竹靖太夫さんと野澤錦糸さん、「伴作住家の段」は、豊竹亘太夫さんと豊澤龍爾さん、竹本千歳太夫さんと豊澤富助さんです。

流れに変化があり、伴作は、自分の腹を切るのです。そこからが長く、座談会でも(竹本千歳太夫、野澤錦糸、豊澤富助/司会・児玉竜一)、切腹するとそこから20分位ですが、ここでは40分はあり、これを語る太夫さんも力量がいるわけです。千歳太夫さん、座談会では力を使い果たしたという感じでした。

試演会ではなく、有料の会として聴く人の数を増やして欲しいですし、さらに人形がつく本公演として上演されることを期待したいです。なじみやすい『南総里見八犬伝』が、浄瑠璃でこんなにも因果関係が重層している作品となっているのかと新鮮でした。

座談会では、頭(かしら)はどうなるかというような話しもでてきまして、復曲は若い演者さん達の基礎能力が試される機会になり、さらに修練の場ともなるという話しもありました。録音で聴いて練習するのではなく、床本に全て書かれているのだから、本を読む基礎がなければだめだという事でした。

お話しを聞いていますと課題はたくさんありそうですが、すでに本があって、試演で評判がよいのですから、上演にむけてさらなる活動を進めていただきたいものです。その前に「芳流閣の段」、大阪の後、東京でもあることでしょう。

<芳流閣>の屋根の上では、犬塚信乃と犬飼現八がお互いのつながりを知らず一戦まじえます。<芳流閣>は滸我御所(古河御所)にあるとする架空の建物ですが、茨城県古河市の古河総合公園には、古河館跡があり、同じ場所に鎌倉円覚寺の末寺の徳源院跡があり、そこに古河公方足利義氏の墓所もあります。

この古河総合公園の「古河桃まつり」は緑や池を背景に白、ピンク、薄紅いの桃の花が見事でして、梅や桜とは違う可憐な明るさのある彩を楽しませてくれます。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です