映画『ザ・サークル』『ポリーナ、私を踊る』

古い映画ばかりを観ていたので、映画館での新しい映画で、トム・ハンクスとエマ・ワトソン共演の『ザ・サークル』期待したのですが肩透かしというか、後味の悪さを残す映画となりました。

評判になった『美女と野獣』を観てディズニーらしいファンタジーだなと思い、『ザ・サークル』は美しいエマ・トンプソンの違う面が観れるかなと期待したのですが新たな魅力も感じられませんでした。チラシには<サスペンス・エンタテインメント>とありましたが、サスペンスにも疑問でした。

自分はこのまま田舎に埋もれてしまうのはいやだでと思っていた若い娘メイ(エマ・トンプソン)が、SMS企業の大会社「サークル」に採用されます。とにかく多くの人に登録してもらい社員もいいね!とフォロワーの数を増やすのが任務でそれが仕事ができるかどうかの評価になるのです。

「サークル」のカリスマ経営者ベイリー(トム・ハンクス)は、新しい目玉のような小さな映像カメラを開発し、誰にも見つかることなく設置できて全ての犯罪などから人々は守られると紹介し、社員から喝采を浴びます。

メイは田舎に帰ってカヤックで海に出て遭難し、人々のSMSの連携で助けられ、そのことから新開発のカメラで自分の24時間を公開することを承諾。益々人気者となりアイデアも出し会社の重要な位置まで登ります。さらに隠れている犯罪者を短時間で見つけ出そうという試みをして成功し、次に社員がもとめたのはマーサーを探し出すことでした。

マーサーはメイの元恋人で、良かれと思ってメイはマーサーが制作している鹿の角のシャンデリアを紹介したところ、鹿殺しときめつけられマーサーは身を隠してしまいます。その人を探し出そうという人々の興奮の要請にノアはオッケーをだします。近未来への警鐘なのでしょうが、観ていて狂っているなと思います。当然悲劇が起ります。

ノアは最後にベイリーと共同経営者こそ24時間を公開すべきだと社員に働きかけ復讐ということなのでしょうが、その前に、なぜマーサーをそっとして置かなかったのかと、凄くいやな気分になりました。そこが映画の狙いなのかもしれませんが、安易な展開でサスペンスでもなくあまりにも単純に盲信するSMS企業社員が軽すぎです。

原作があるのでそうもいきませんが、喜劇にでもしてトム・ハンクスの演技力にエマを絡ませて彼女の新しい面を引き出す方法もありだなと思いました。こういう問題は喜劇のほうが身につまされるかもしれません。

エマ・ワトソンのベルということで、ジャン・コクトー監督のほうの『美女と野獣』(1946年)も観ました。野獣の住む屋敷の中の壁の蝋燭を持つのが人の腕だったり、彫刻の顔が人で眼が動いたりとの工夫があり異様さが結構面白かったです。演技が舞台人のようなところもあり、衣裳も時代がかっていて半分舞台演劇としてもみれました。

野獣はベルを戻すため、ベルに宝物の鍵、行きたいところへ行ける手袋、見たいものが見える鏡、館にもどれる白馬などを与え、童話的現実では無い世界として位置づけています。ただ、野獣と王子と求婚者のアヴナンがジャン・マレーが三役で、ベルはアヴナンの求婚を断ったのは父のそばにいるためできらいだったわけではなく、王子になった野獣にアヴナンの顔が好きだったと言います。人間どうしになると新たなる恋の駆け引きでジャン・コクトーならではの大人のひねりを加えたのでしょうか。

この際とジャン・コクトーの『双頭の鷲』『オルフェ』も観ましたので、ジャン・コクトー監督の映画はこのあたりまででいいかなというところです。

ポリーナ、私を踊る』は踊りがよかったです。ドキュメンタリーではなく、映画ですが踊る場面がドキュメンタリー映画のごとく多くて、それがきちんとしているので好みの映画でした。監督が全然知らないお二人でヴァレリー・ミュラーとアンジュラン・プレルジョカージュで、アンジュラン・プレルジョカージュがバレーダンサーでありコンテンポラリーダンスカンパニーの振付家として有名なかたのようです。

原作はフランスの漫画だそうで、主人公の少女・ポリーナはでボリショイ・バレエ団に入るため厳しい練習にはげんでいます。家は貧しいのですが、両親は彼女に夢を託しています。ところが彼女は自分の踊りが踊りたいとボリショイ・バレエ団への入団を前にロシアから南フランスへパートナーと旅立ちます。

クラシックバレエのキャリアもコンテンポラリーダンスには通用しません。バーで働きつつポリーナは自分の踊りを探します。路上で雨に濡れた猫のような眼をしていた彼女が、次第に自分の踊りを見つけて自信に満ちて来て好い表情で踊るまでの経過が納得いく映像で撮られていました。アニメ原作とは思えない作品です。

主人公ポリーナ役のアナスタシア・シェフツォワは実際に実力派ダンサーで映画デビューとなりました。ダンスと演技がバランスよく愉しませてもらいました。踊りがしっかりしていますのでシンデレラストーリーにならずに成長物語となったのがよかったです。久しぶりでジュリエット・ビノシュにも会えました。。

 

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