京マチ子映画祭・ 浅草映画・『浅草紅団』

  • アルフレッド・ヒッチコック監督作品の映画に没頭していたところ「京マチ子映画祭」を開催しているのを知る。(角川シネマ有楽町)京マチ子さんは、『羅生門』(1950年)、『源氏物語』(1951年)、『雨月物語』(1953年)、『地獄門』(1953年)、『鍵』(1959年)など、海外で脚光を浴びた作品に出演され、その演技力は周知の通りである。

 

  • しかし、その他の映画での京マチ子さんも魅力的で、この方の出ている映画は飽きないのである。リアルさとは違う独特の人物像を作って披露してくれるのである。驚いたのは『愛染かつら』で、田中絹代さんのイメージを変えて京マチ子版にしてしまっていたことである。映画の中での舞台映えがするのである。一応探しあてられるだけのDVDはレンタルして観たのであるが、今回は一挙に32本の映画上映である。

 

  • 映画『浅草紅団』は川端康成さん原作であるが、『浅草紅団』ではなく『浅草物語』のほうの映画化らしい。脚本が成澤昌茂さん、美術が木村威夫さんで、監督は久松静児さん。京マチ子さんは、女剣劇の紅座の座長・紅竜子役で地方をまわりをしてやっと浅草で興行できることになった。それも浅草の顔役・中根の力で、さらにその中根に子供の頃浅草寺そばで拾われここまでにしてもらった恩義がある。この顔役が悪い奴という定番である。

 

  • 中根が狙っているのは、おでん屋の娘でレビューに出ているマキの乙羽信子さんである。お金を貸して返せないなら俺の女になれという。マキは島吉という好きな人がいる。島吉の根上淳さんは、中根からマキを守ろうとして子分を刺し浅草から身を隠したが、島吉が戻って来たという声が飛び交う。マキは中根がねらっている島吉を浅草に来させたくないが島吉は浅草に顔を出すのである。島吉は上野で田舎から出てきた女に浅草に行きたいのだがと行き方を尋ねられる。地下鉄で一本だと島吉は教えるが、女は不安だから連れて行って欲しいと頼むのである。それは中根の差し金の竜子の誘いであった。竜子は気風のよい島吉を守る形となる。そして、竜子とマキの関係が島吉を通じて明らかになるのである。

 

  • 筋としては目新しいものではないが、マキの乙羽信子さんの笑顔の「百万ドルのえくぼ」が画面いっぱいにあふれ、明るく歌う。そして、京マチ子さんの剣劇が格好いいのである。マキと島吉を舞台の背景の道具の後ろに隠し、その前での立ち回りはたっぷりと見せてくれる。乙羽信子さんのえくぼと京マチ子さんの剣劇をを見れただけでも満足である。マキちゃん!竜子!と声を掛けたくなる雰囲気である。映画のなかでの観客はもちろん声をかける。京マチ子さん、リズム感があって動きがよい。それでいてピタッときまるのである。そして目力もたっぷりである。舞台映えの生きる映画でもある。それも浅草での女剣劇である。近い目線。当時の女剣劇の人気度がわかる。

 

  • 浅草寺から六区あたりもたっぷりで、時代設定としては瓢箪池の埋め立て工事が始まった頃としている。瓢箪池が埋められたのが1952年で映画『浅草紅団』の公開が1952年であるから同時代の浅草の映像である。久しぶりの映画館での浅草であった。浅草の映写とセットが上手く合って楽しませてもらった。

 

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