ヒップホップ文化

ダンス映画にはまったのは、たまたま映画『ステップ・アップ』に出会ったのである。アップルの創業者の一人であるスティーブ・ジョブズを知りたくて彼の映画を探してレンタルしていたのである。ドキュメンタリーやインタビューものも含めて観れるのはこれぐらいだなと思った時、すぐ横にあった『ステップ・アップ』の文字が目に入った。軽くダンスの映画でもと思ったらこれがダンスシーンがたっぷりでこれは次を観なくては。

ステップ・アップ』が5作品続いていた。主役は変わるが、たびたび登場するB・ボーイ(ブレイクダンスのダンサー)もいる。青春物なのだが、4作目『ステップ・アップ4:レボリューション』では登場人物が大人の設定となる。はじまりから何やら登場人物が謎めいた動きをしている。そして突然踊り出すのである。並ぶ車の上で。『ラ・ラ・ランド』が吹っ飛んでしまった。

すでにこのシーンをやっていた映画があったのだ。この映画の後、『ラ・ラ・ランド』を見直したが、車上で踊るシーンは、精彩をうしなっていた。かつては、物凄い衝撃を受けたのに。『ラ・ラ・ランド』はこれまでのダンス映画に対するオマージュということであるが。

ステップ・アップ4:レボリューション』の美術館でのダンス場面も違ったシチュエーションで魅了させてくれる。それからである。ストリートダンス映画をさらに探して観始めた。

飽きなかった。一つ一つの映画のストリーは単純である。苦難がありそれを乗り越えてダンスに生きるという内容である。ただ、ダンスシーンが圧巻である。ブレイクダンスは、バトルがあり、そこでそれぞれのB・ボーイ(B・ガールもいるが対等の力量から総称させてもらう)の持ち味が試される。それも、相手の出方によってそれに即興で対抗するのである。映画の場合、振り付け師がいて映画用に作られるのはわかっていても面白かった。ダンスの腕前が皆さん素晴らしい。

主演者がダンスが駄目なら、本物のB・BOYやプロ並みのダンサーが見せ場をつくってくれるのであるが、いやいや主演者たちも頑張っていた。映画に出ている日本人ダンサーのレベルも相当なものである。実際の世界大会のドキュメンタリーもみた。驚いた。日本人が堂々と戦っていたのである。ストリートダンスは若者たちが勝手に楽しんでやっているのだと思っていた。そこに懸ける情熱とB・BOYの一途さは半端ではない。

苦難の道であったので逸脱した人々もいたり、その情報が頑張る人々をかすめさせてしまうこともあった。皆人生と若さをそこに懸けていた。ダンサーは活動時期が短い。そしてお金にもならない。それなのにステップを踏み続けるのである。そして観る者を理屈無しで楽しませてくれる。

ブレイクダンス系を観続けてかなり経ってから知ったのである。ヒップホップは若者が自分たちの力で作り出した 文化 であるということを。

パトカーの上で踊るのが映画『ブレイク・ピーターズ』である。1985年に東ドイツでブレイクダンス映画『ビート・ストリート』が公開され、それに魅せられた若者がブレイクダンスに熱中する。しかし、当然認められない。国はブレイクダンスを認める代わりに皆に受け入れやすいように修正する。いいように操られてはB・BOYSの生き方に反すると思い始める若者たち。

映画『ビート・ストリート』は実際にある映画なのであろうか。実際にあった。日本では公開されなかった。DVDのパッケージの解説によると、 「1984年、日本では『ビート・ストリート』は未公開でビデオとLP盤のみの発売にも関わらず、日本における HIP HOP のパイオニアたちにとっては衝撃的作品であった。」 この作品はヒップホップカルチャーというものを認識させてくれる作品となった。

ヒップホップ文化の四大柱といわれるのがMC、DJ、ブレイクダンス、グラフィティということで、ニューヨークのブロンクス区で誕生する。それを体現する登場人物の友情が描かれているのが映画『ビート・ストリート』なのである。ダンスだけを追い駈けていた者に基本形を示してくれた。

ギャングになるかクスリの売人になるしかないという環境で若者たちは、銃と暴力の対立から全く相手に肉体的危害を加えないバトルをみいだしたのである。それも人種の違う人々が住む地域で。ダンス教室に通えるような環境ではない。家の前で、ストリートで、年齢関係なくステップを踏む。新しい若者文化。文化を生み出すなどと考えられない場所から出現するのである。

ヒップホップという呼び方は、1978年か1979年からという。

ダンス映画の多くの鑑賞ラストに近づいて知った。ブレイクダンスは、ユースオリンピック(14歳から18歳)ではすでに競技種目に入っており、さらに2024年のパリでのオリンピックの競技種目に加えられたのである。軽く手にしたステップが大きくアップしてしまった。

追記: ダンス映画から始めたのでヒップホップ文化の生まれた状況が不安定であったが、DVD『ヒップホップ・レジェンド』を観て、そのインタビューからかなり実態を固めることができた。この映像、好い出会いであった。

<ヒップホップ> →  2020年1月15日 | 悠草庵の手習 (suocean.com)

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