映画 『天地明察』 (改暦1)

日本独自の暦を作った人、安井算哲(のちに渋川春海)の話である。こういう世界があるのかと、この映画を作られたことを歓迎します。天体と算術により、今までの暦に誤差がありすぎるということを証明し、新たな日本独自の暦を作るのである。この算哲は秀才であって天才ではなく、秀才が努力をするというタイプの人である。算術では初めから間違いをおかしたり、それでいながらぶつかっていくという行動にも好感がもてる人物である。その算哲の魅かれる人物達を周囲に設定し、算哲の人間性をうまく引き出して、見る方にも肩の凝らない展開にして、難解にならないように工夫されている。きちんと説明は出来ないが、このようにして暦がつくられたのかと興味は広がる。

算哲は徳川四代将軍家綱の時代、幕府の碁方を務めている。碁方とは将軍の前で碁の勝負を披露したり、幕府の要人に碁を教える人である。将軍家綱の後見役の会津藩主・保科正之(ほしなまさゆき)や水戸光圀にその才能を認められ、改暦(暦を改める)を託される。黄門さんでない光圀さんが見れるのも面白い。

ところが暦は朝廷が司るもので聖域であった。それまで、「宣明暦」を使っていたが次第に誤差が生じてきた。そこで算哲は「授時暦」が正しいとして、「宣明暦」「授時暦」「大統暦」の三つの暦の比較を三年間6回の日食、月食で証明しようとしますが、5回当たっていた「授時暦」が最後の6回目ではずれ「宣明暦」が当たってしまい、改暦は叶わない。そこで中国から伝わった暦ではどうしても日本では誤差が出てしまうため、さらなる観測を続け新たな日本の暦を作り上げるのである。そしてついに、貴族たちの妨害を押し破り、算哲のつくった「大和暦」は「貞享暦(じょうきょうれき)」の名をもらい採用されるのである。(この部分のまとめはNHK「知るを楽しむ・歴史に好奇心」のテキストを参考にさせてもらいました。これは2ヶ月分のテキストで、先に<映画王国・京都~カツドウ屋の100年>があり、こちらが目的でした。次の月は<古今東西カレンダー物語>で難しそうで読む気もしません。ところが、『天地明察』の映画を見てこの<古今東西カレンダー物語>を参考にさせてもらえるのですから映画の力は凄い。)

ライバルとの切磋琢磨、先輩たちの教え、師の教え、為政者からと期待、仕事仲間、夫婦愛等を取り込んで暦の世界に賭けた男たちの世界を堪能させてくれます。

名前・算哲の響きがいいです。算哲と呼ばれる度に見せる岡田准一さんの笑顔、驚き、悔しさ、苦渋もいいです。周りの役者さんも上手くはまっていて気持ちのよい流れです。一つ算哲に見せたいものがあります。北海道の阿寒湖畔のホテルの屋上露天風呂から見えた、冬の北斗七星です。本当に近いです。あの時の感動を算哲に分けてあげたい。「ウッオオー!」と目を輝かせると思います。

監督・滝田洋二郎/原作・冲方丁/脚本・加藤正人、滝田洋二郎/出演・岡田准一、宮崎あおい、佐藤隆太、中井貴一、笹野高史、岸部一徳、市川猿之助、市川染五郎、松本幸四郎

 

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