前進座『明治おばけ暦』 (改暦2)

もう一つ明治に入ってから改暦があった。それは、2012年の前進座創立八十周年記念公演『明治おばけ暦』で知る。今回改めて振り返った。

明治5年11月、暦問屋角屋では来年明治6年の暦を小売に渡しひと段落ついた後で号外が出る。明治6年から太陽暦を採用する改暦の号外である。明治6年には6月の後に閏6月があり、1年が13ヵ月ある年であった。太陰暦では2年か3年に一度、閏月を設け1年を13ヵ月にして調整しなければならなかった。太陽暦にすれば4年に一度、1日を増やせばすむのである。ところが改暦となると明治5年の12月は2日で終わり、3日目は明治6年1月1日なのである。暦問屋角屋は大変である。小売から前の暦は返品となり急遽摺りなおした新しい暦は人気がなく売れない。ついに角屋の主人は大赤字のため自殺に追い込まれる。芝居が好きで芝居にうつつを抜かしていた息子の栄太郎と戯作者・河竹新七は、改暦をすすめた大隈重信を懲らしめる芝居を考える。

この芝居の作者は、今年のNHK大河ドラマ「八重の桜」の山本むつみさんである。河竹黙阿弥となる前の新七が出てきたり、他にも歴史的なことや、当時の庶民の生活や心情がでてきたり、かなり盛りだくさんである。そうなのか、そうなのかと思って観ているうちは良いのだが、見終わってみると改暦の混乱さのような状態であった。架空の話も加わりお気楽のようでいて中々奥が深いのであるが観るほうの理解度がそこまで手が届かなかった。

ここで、政府の改暦の事情に触れる。それまで役人の報酬が年俸制だったのが、明治4年から月給制になった。明治政府の財政は大赤字である。次の年が13ヵ月である。ここで改暦すると、12月は2日間であるから役人の月給12月分を払わないとし、さらに来年は12ヵ月で1ヵ月分払わなくてもよい。ここで2ヵ月分の給料が浮くのである。相当明治政府として助かったことになる。諸外国との関係からも、太陽暦にしたほうが統一され都合が良かったのである。ただ国民には極秘で明治5年11月9日に突然発表されたのであるから、暦問屋さんと同じような大変な事になった人々も多々あったであろう。この時、太陽暦や改暦について分かりやすい本をだしたのが福沢諭吉で、その著書『改暦弁』は大ベストセラーになったようである。

前進座『明治おばけ暦』 作・山本むつみ/演出・鈴木龍男/出演・嵐芳三郎、河原崎國太郎、嵐圭史、中村梅之助

 

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