鏡花の世界

時間がかなり経過したのであるが、坂東玉三郎さんの「言の葉コンサート」と称する朗読公演「泉鏡花・幻想の世界」を体験し、その素晴らしさに自分の気持ちの整理をしたくなった。

泉鏡花の「夜叉ケ池」「海神別荘」「天守物語」の三作品から玉三郎さんが、鏡花の世界を伝えるのに相応しいこの部分という事で選ばれての朗読である。

記憶の曖昧さから、この作品のこの部分と指し示せないのが残念であるが、舞台以上に想像力を掻き立ててくれた。玉三郎さんが幾つもの役になって朗読されていく。

白のスーツ姿での素である。

それなのに想像の世界は美しい色があり心がある。玉三郎さんが演じられた役の台詞は聞き覚えのある台詞回しである。しかし、その他の役は演じられていないので玉三郎さんから初めて聴く台詞であり<言の葉>である。さらさらと流されている感じである。それなのに想像力の影響は大きいのである。

そして、心地よいのである。その空間がなんともいえない絵模様である。

選び抜かれた<言の葉>だけがこちらに伝わって来る。さらに絶妙なタイミングでハープの調べが入り余計な<言の葉>は排除してくれる。

舞台とも違う、文字で捕らえる鏡花とも違う、儚く消えてゆくのを覚悟した鏡花のそこだけの贅沢な世界である。

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