映画『英霊たちの応援歌 最後の早慶戦』『月給泥棒』 

『英霊たちの応援歌 最後の早慶戦』(1979年) チラシの紹介文を載せておく。

昭和18年に行われた最後の早慶戦と、学徒出陣して特攻隊員となった選手たちのその後を描く。当時の写真やフイルム映像を織り込みながら淡々と描かれる彼らの姿が、心から野球を愛した若者たちの命を奪っていく戦争の惨めさを浮かびあがらせる。英霊たちの鎮魂歌を奏でる佐藤勝のトランペットも心に沁みる。

 

岡本監督の映像の回転は速い。元気で、泣きつつ笑わせられる。理不尽な暴力にも笑いが起こる。何とばかばかしいことが、まかり通ってしまうのか。怒るはずのことを笑いとすることで、こんなことで笑わせるお前らじゃないよな、野球という場で、元気と感動を与えていたお前らだったはずなのにと監督が映像の裏で言っているようである。

大学を卒業するまでの何年かは大丈夫であろうと意識的に野球に没頭する学生たちも、戦争の状況によりそれは許されなくなる。学徒出陣を前に、何とか最後の早慶戦をやりたいと、関係者は動き実現する。映像は昭和59年の早慶戦とオーバーラップされる。映画はさらに特攻隊となった野球を愛した彼らを追う。<〇〇玉砕>の文字の入った当時のフイルム映像が戦局の経過と共に挿入される。その映像の映っている時間は短い。彼らは当時の戦局をどうのこうの言えるような考える時間などないのである。フィイルム映像の挿入とともに、特攻隊の出撃までの練習時間は短縮されて行く。

出撃を前に一人の若者が、ばかになるか気が狂うしかないという。その若者は迷う友人に、お前は何の為に死ぬのかそれを捜せ、母親ではだめなのかと投げかける。母親しか家族のいない友人は、プロ野球選手になって母を幸せにしようと考えていた。彼は、特別休暇をもらい、母のもとへ。母は空襲のため病院で、息子に看取られ息を引き取る。 野球を愛した若者たちは、野球をやっていた時の激を飛ばし合い突っ込んでいく。そこには上官などより、一緒に野球をしてきた者同士の信頼関係だけがある。戦争がなければ、プロとして活躍し、喝采を浴びた若者がもっといたことであろう。

知覧を訪れた時、特攻隊の訓練時の宿舎が残っていて内部に入ることが出来た。ここでまだ少年とも呼べる若者たちが、短い日数で実戦に向かうための厳しい訓練を受け、飛び立っていったと思うと胸が締め付けられた。

監督・岡本喜八/原作・神山圭介/脚本・山田信夫・岡本喜八/撮影・村井博/音楽・佐藤勝/出演・永島敏行、勝野洋、本田博太郎、中村秀和、山田隆夫、竹下景子、大谷直子、水野久美、八千草薫、田中邦衛、岸田森、殿山泰司、仲谷昇、東野英治郎

 

『月給泥棒』(1962年) 高度成長時代のサラリーマン・コメディ。<税金泥棒>と<月給泥棒>に因果関係はあるのか。解りません。

ある会社では、会社に貢献しない者は月給泥棒であると重役からの朝の訓話が放送で流されている。

自分の誇示、出世欲旺盛な一人のサラリーマン(宝田明)が、上役のご機嫌もとり、明朗快活に動き回る。さらなる飛躍は、自分の会社のカメラを石油王国の王様(ジェリー伊藤)に売り込む事。口八丁手八丁でライバル会社と渡り合う。その為に、家が没落したお嬢様育ちの美しいホステス(司葉子)の女性を使うのであるが、王様はこの女性に惚れてしまい、恋仲と思いきや、お互い割り切ってそれぞれの欲の方を選んでしまう・・・・・

サラリーマン喜劇のお色気たっぷりのホステス、芸者、宴会ではなく、至って健康的である。そしてコロッと物事がひっくり返るところが、岡本監督特有のテンポの良さである。美男美女のサラリーマン青春映画と言えそうである。司葉子さんの衣装にハリウッド的夢がある。それでいながら、ちゃぶ台が似合う結果となる。

監督・岡本喜八/原作・庄野潤三/脚本・松木ひろし/撮影・逢沢譲/音楽・佐藤勝/出演・宝田明、司葉子、十朱久雄、中丸忠雄、宮口精二、横山道代、若林英子、原知佐子、ジェリー伊藤

 

 

 

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