映画『沖縄 うりずんの雨』『激動の昭和史 沖縄決戦』

「8・15 終戦の日特別企画 反戦・反核映画祭」(新文芸坐)

『沖縄 うりずんの雨』(2015年) 現在の沖縄の置かれている状況が長い歴史の中の今であることがわかってきます。分析が冷静で、話されるかたの想いが静かでありながら、何回も裏切られた人の言葉として耳を傾けさせます。

「うりずん」というのは冬が終り大地がうるおい、草木が芽吹く3月ころから5月の梅雨に入るまでをさす言葉で、1945年4月1日から始まる沖縄地上戦と時間が重なる季節のことです。

うりずんの 雨は血の雨 涙雨 礎の魂 呼び起こす雨 (詠み人・小嶺基子)

  1. 第一部 沖縄戦
  2. 第二部 占領
  3. 第三部 凌辱
  4. 第四部 明日へ

「ペリーが琉球の那覇港に来航したときすでに東アジア進出の足がかりとしていた。」のナレーションが重い。2004年に沖縄国際大学に米軍の輸送ヘリが墜落したとき米軍によって警察、消防をはじめ、大学関係者、報道など一切立ち入りを禁止され、米兵がカメラのレンズを帽子で隠す。これはショックでした。これが本土ならどう思うでしょうか。そして政府もどう対処するのか。

一つ一つ丁寧にインタビューしていきます。沖縄戦を戦った元日本兵、元米兵。元学徒隊。映像を照らしあわせつつ言葉を重ねていく。沖縄は本土の楯となって戦火におおわれる。

「占領」では、アメリカにつく、日本に復帰するの人々が半々で独立が少数であって、高校生たちが真剣に討論し、日本復帰を望んでいた人は、東京オリンピックで聖火リレーが通った時、日本国旗を力一杯ふったと語ります。復帰したら日本国憲法があり戦争もせず基本的人権にまもられた一員となれるとおもっていたが、復帰してみたら、基地は残りまた沖縄は本土の軍事的要石とされた。復帰運動が反戦運動に転換したといわれます。

米軍の犯罪は復帰後も続き、沖縄は軍事基地で食べているといわれるが、農地を基地のためにとられたため基地に仕事を求めたわけで、基地からの経済的貢献度は低下していて、返還された場合の経済効果のほうが期待できるとの考えかたもあります。

印象的だったのが、アメリカの女性隊員が、<何かおこれば24時間以内にかけつけ本国に及ばないようにくいとめます。世界各地に基地があるのはよいことです。>と明るく答えている。アメリカ本国をまもるためと。

さらに映画はアメリカの軍内部での女性兵士の受けた性暴力にもふれ、そうした被害者のネットワークSWANにも取材していて声をあげれない小さな声にも寄り添う姿勢をみせています。

沖縄という地域から、犠牲者への鎮魂と戦争という巨大怪物を消し去る方法を、人間の言葉でさぐり探しもとめる優れたドキュメンタリーでした。

監督・ジャン・ユンカーマン/企画・制作・山上徹二郎/音楽・小室等

『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年)

監督が岡本喜八さんで脚本が新藤兼人さんである。『沖縄 うりずんの雨』を観ていたので早いテンポにどうにかついていくことができた。ぞくぞくと兵隊が沖縄に到着し沖縄の人々も兵隊さんが沖縄を守ってくれると頼もしくおもい歓迎する。しかし、本土決戦を長引かせるための沖縄決戦だったのである。

そんなことは島民は誰も知らない。ただひたすら戦うしかない。本土に学童疎開中の対馬丸は米軍の潜水艦に撃沈されてしまう(1944年)。1945年3月から米軍の沖縄列島への上陸が開始され島での集団自決が相次ぐ。

戦況が報告されていくにしたがい、若い学生たちの戦闘隊が結成されていく。爆弾の木の箱を担ぎ戦車の下にもぐりこむのである。『黒い雨』でも、自動車のエンジン音がすると戦車と思い飛び出して行き、枕をタイヤの下に置く青年が登場した。

沖縄にはサンゴ礁でできた洞窟がたくさんあり、そこへ身を隠し飛び出して攻撃する作戦もとられる。洞窟は病院としても使用され、女子学生も看護婦として従事したり食事を作ったりするが、次第に洞窟からでると機銃掃射が待ち構えている。

『沖縄 うりずんの雨』の中で元兵士のかたが、皆で火焔放射では死にたくないと言い合っていたそうです。とにかく何で生き残ったかわからないような有様で、もう駄目だとなり、島民の集団自決が行われてしまう。徹底抗戦の教育が浸透していたのでしょう。

少年が兵士にお前はもう戦うなといわれ、自分は沖縄のために戦うのだといいますが少年の無意識下の叫びともとれます。

戦闘場面の時間的経過とどう守備しどう攻めるかという作戦会議、本土の大本営とのやりとりなどが加わり、観ているほうも混線してき、とにかく次々と人々が死んでいくのに麻痺してしまうような映像の追い方になってしまう。それくらい死に向かっていく道しか残されていないのです。

琉球王国から琉球藩となり、沖縄県となり、沖縄決戦である。

美しい沖縄を訪れ、沖縄の人々が語りたい沖縄の声を聞くことが鎮魂へのささやかな心の献花となるのかもしれません。

監督・岡本喜八/脚本・新藤兼人/出演・小林桂樹、丹波哲郎、仲代達矢、酒井和歌子、大空真弓、加山雄三、池部良、中谷一郎、神山繁、田中邦衛、東野英治郎、岸田森、天本英世

 

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