歌舞伎座 秀山祭九月歌舞伎 『碁盤忠信』『太刀盗人』『元禄花見踊』

『碁盤忠信』 『碁盤太平記』と書きそうになりましたが<忠信>だったのです。

忠信が碁盤をもって戦ったという伝説はかつては広く知られていたことらしいのです。初演は七代目幸四郎さんで明治44年(1911年)で一度だけの公演で、それを100年たって復活させたのが染五郎さんで、平成23年(2011年)の日生劇場にて上演でしたが、私は観ていません。初代吉右衛門さんも演じられていたようですが、一つのテーマが内容を変えて劇化されているので、『碁盤忠信』も幾つかの脚本があったのでしょう。

荒事の単純なお話です。忠信(染五郎)といえば、義経の忠臣ですから、義経を奥州に逃がし敵と戦うのですが、亡くなった妻の小車の父・浄雲(歌六)が頼朝側と内通していて、その窮地を小車(児太郎)が亡霊となってあらわれ碁石で知らせ、忠信は碁盤を片手に大あばれします。そこへ、横川覚範(松緑)が押し戻しであらわれお互いに見得を切ってチョンです。

先にだんまりがあり、源氏の宝刀の探り合いがあり無事忠信の手に入ります。それぞれの役どころが身についた基本のできただんまりで綺麗にうごかれていました。呉羽の内侍(菊之助)、万寿姫(新悟)、三郎吾(隼人)、浮橋(宗之助)、宇津宮弾正(亀鶴)、江間義時(松江)亀鶴さんと松江さんにはもっと出て欲しいです。

忠信の舅・浄雲は愛嬌のある悪人で、その家来の右平太(歌昇)と左源太(萬太郎)も道化を含んでいます。小車は父を諌めて自決してしまいますが、舅のすすめるお酒に酔って碁盤を枕に眠ってしまった忠信の夢のなかに小車があらわれて、忠信の危機を救うのです。歌昇さんは演じている道化ですが、萬太郎さんそのままでゆるくなるのでお二人が台詞を言うたび楽しかったです。隼人さんは背の高さから奴はどうかなと思いましたが大丈夫でした。

松緑さんの覚範が現れることによって荒事の大きさが示され、初期の複雑さと知略のまだ加わらない見せる荒事の一つと言えるような作品で、目で楽しみ耳で音を受けるという作品でした。染五郎さんの声が次第に荒事に向かってきています。

その他出演・亀蔵、桂三、由次郎

『太刀盗人』 これまた肩の力を抜いて楽しめる狂言仕立ての舞踏劇です。都にでてきた田舎者・万兵衛(錦之助)が市で盗人・九郎兵衛(又五郎)に目をつけられ太刀を盗られそうになります。そこへ目代(彌十郎)と従者(種之助)があらわれます。二人は目代にどちらが盗人か裁定を頼みます。目代は、引き受け質問をしますが、万兵衛から始めるので九郎兵衛はあとからそれを真似ます。そこで二人一緒に舞いでことの次第を説明することになり、九郎兵衛はあやふやなおどりとなり盗人が発覚してしまうのです。

錦之助さんと又五郎さんは笑い中心にはせず、しっかりとした踊りでそのほころびでどちらが盗人であるかをあきらかにしていくという踊りでした。大きな彌十郎さんに畏まってつく従者の種之助さんのなんだかおかしいなという感じに愛嬌がありました。

『元禄花見踊』 最後は艶やかな踊りで締められた。ふわふわした綿あめを食べるような感触で終わってしまいました。

玉三郎さんを求心力に元禄の男6人(亀三郎、亀寿、歌昇、萬太郎、隼人、吉之丞)と元禄の女6人(梅枝、種之助、米吉、児太郎、芝のぶ、玉朗)が、元禄の華やかさを楽しく踊り賛歌するという趣向ですが、若い12人がどこかお澄ましで少し緊張気味なのがおかしく、一人一人追っていたので忙しくもありました。芝のぶさんと玉朗さんであろうとおもうが間違っていたらもうしわけないことです。可愛らしい誰だろう誰だろうと思いつつ眺めさせてもらいました。吉之丞さんもこんな派手な舞台で、さらに玉三郎さんと絡んで踊るのは初めてではないでしょうか。落ち着いてもう一回みたい気分です。

昼の部 『碁盤忠信』『太刀盗人』『一條大蔵譚』

夜の部 『吉野川』『らくだ』『元禄花見踊』

重さと軽さの配分の良い舞台でした。

 

 

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