映画『オーバー・フェンス』

探しているものが見つからないというのは不快ですね。それも、自分の整理整頓の悪さからきているのですから、忸怩(じくじ~PCの変換でないと書けません)たる思いがあります。映画『ダ・ヴィンチ・コード』のパンフレットがみつからないのです。映画『メリー・ポピンズ』へ行き着きたいのですが。

見つかるまで、最近見た映画『オーバー・フェンス』について。池袋新文芸坐での企画 「気になる日本映画達 <アイツラ> 2016 」 の中にも入っていて見に行こうと思っていましたら日程があわず、レンタルとなりました。

監督・山下敦弘/原作・佐藤泰志/脚本・高田亮/撮影・近藤龍人/音楽・オダギリジョー、蒼井優、松田翔太、北村有起哉、満島真之介、優香

函館の作家・佐藤泰志さんの原作で、佐藤泰志さんの映画化三部作『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』の最後の作品です。原作をどれも読んでいないので原作との比較はできませんし、内容というより撮影ロケ場所の点からいえば、『オーバー・フェンス』が一番気に入りました。

作品として重要な位置づけとなる撮影ロケ場所が、函館公園の中にある遊園地<こどものくに>なんです。昨年の春に函館に行った時、この公園に小さな遊園地がありまして観覧車には、「日本国内で稼働する現役の観覧車としては最古であるといわれています。」と案内板がありました。1950年に大沼湖畔東大島に設置され、当時は「空中遊覧車」と呼ばれ、1965年に現在の地に移設されました。

「空中遊覧車」とは当時の夢を感じます。直径10メートル、高さ12メートルです。乗ったのですが風景を見渡す感じではなく、大きな樹の枝と葉っぱがすぐ近いというかんじです。手動で乗る人がいれば止って乗せて動くので、乗る人が多ければ時間が長く、乗るひとが少なければ早く回ってしまいます。乗ったのは2組だけ。

日本最古の現役の観覧車に乗れたのですから満足です。

蒼井優さんが夜はキャバクラで働き、昼間はこの観覧車の係り員のアルバイトをしていて、観覧車に乗ってる子供たちに、「騒いじゃだめよ、落ちると体がぐちゃぐちゃになるからね」と注意しているところに、オダギリジョーさんがあらわれ「ぐちゃぐちゃにはならないだろう」と笑っていうのですが、この台詞が気に入りました。うまいこの台詞。ここでのこの観覧車ならではの名セリフと拍手です。

函館公園には小さな動物園もありまして、この動物園もこの映画作品では重要な意味があるのです。残念ながら動物園はのぞきませんでした。のぞいておけばよかった。

函館公園は、青柳町にあって啄木の歌碑があり、この公園の前の坂を登って行くと、石川啄木さんの住んでいた場所があるのです。下りて市電の青柳町停留所の次の谷地頭停留所の海側に石川啄木家の墓があり立待岬となります。

ミニ遊園地とミニ動物園、佐藤泰志さんの小説に出てくるのでしょうか。出てこないような気がするのですが、そのうち調べてみます。佐藤さんの作品には何らかの出来事で傷ついたり、その環境から抜け出せない人々が登場します。

オダギリジョーさんも仕事人間で離婚を経験していて、東京の会社を辞め、函館の職業訓練校に通っています。そこでの人々も紆余曲折をへて通ってきているのです。そこの仲間の松田翔太さんにさそわれて行ったキャバクラで、オダギリジョーさんと蒼井優さんとが出会うのですが、この二人はその前に偶然の出会いをしていたのです。その出会いも蒼井優さんの印象を強める面白い設定です。蒼井優さんは薬を飲んで精神的均衡を保っている女性で、その危うさのなかで、お互いに魅かれていき、ぶつかりあいながらも、多少の明かりが見えてくるといった流れですが、特に動物園は重要な場面となります。

皆危うくて、どこかで歯止めをかけていて皆の信頼度の高いオダギリジョーさんが、職業訓練校の仲間から誘われて居酒屋に来てみれば、若い子のお遊びのエサにされ、「おまえたちもすぐおじさんおばさんになるんだよ、すぐにな。」といってマジになって切れるところは、何かホッとします。穏やかに争いなくやっている人が時にはひっくり返すところです。こんなのにつき合ってられるかとの思いが、本音だけは言っておくぞといったところがいいです。そのオダギリジョーさんに謝り、気分を鎮めさせるのが、背中一面に入墨のある職業訓練校仲間の北村有起哉さんです。

松田翔太さん、北村有起哉さんも好演で、それぞれの生き方上の性格が表れています。

独特の感情表現をだす蒼井優さんと自分の生きる価値を見いだせないふわっとしたオダギリジョーさんの関係に独特の雰囲気があります。自転者に二人乗りして鳥の羽根を飛ばすあたりには、ありえないメルヘンタッチな映像ともなり自由な心の動きがとらえられます。

映画『海猫』にも少しだけ函館公園がでてきましが、出てきたなと思う程度で、『オーバー・フェンス』は無くてはならない場所としての役割です。

佐藤泰志さん、まさか死後、三部作などとして映画になるとはおもわなかったことでしょうね。

この三部作、函館を映画に取り入れた映画として探さなければ、見なかったかもしれません。

パンフレット探さなければ。五月は、見たい映画もあり、整理整頓月として、腰をすえ、旅はやめよう。

今もやっているでしょうか。函館山頂上の展望台で夜景を見た時、時間が経つと寒くなり、でももう一回見たいなと建物の中に入ったところ、函館の町の映像を上映するという場所があって、誰もいなくて一人だったのですが、昼間観た場所の映像もありなかなか観光客にとっては楽しかったのです。終わって、スクリーンの後ろのカーテンが開き、硝子越しの夜景がばーっと広がった時には、思わず感嘆の声がでてしまいました。凄いサプライズでした。

体も温まり二回目の夜景を楽しませてもらいました。あのサプライズは最高でした。知ってしまうとサプライズは成立しません。

 

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