四世宗家新内仲三郎披露・七代目家元新内多賀太夫襲名披露演奏会

国立劇場大劇場での<四世宗家新内仲三郎披露・七代目家元新内多賀太夫襲名披露演奏会>大盛況でした。予定があり、前半だけ鑑賞させてもらいましたが、盛りだくさんで後半には菊之助さんと染五郎さんの踊りと津川雅彦さんの浄瑠璃もあったのですが、残念でした。

多賀太夫さんの浄瑠璃『道中膝栗毛 ー赤坂並木の段』には、こんな新内もあったのかと新内に対するイメージを拡大させられました。<赤坂並木>とありますが、赤坂宿まえの<御油の松並木>のことでしょう。弥次さんが狐のお面をかぶり、喜多さんを驚かすという流れで、三味線もその雰囲気の調子で、浄瑠璃の節回しとのミックスさがなんとも楽しいです。

『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべ さとのえいざめ)』は、歌舞伎でよく知っていますから聴いていてもよくわかります。『明烏夢泡雪(あけがらすゆめのあわゆき)』『蘭蝶』などは新内の代表作ですが、歌舞伎でよかったという記憶がなく気が乗りませんでした。ところが、『明烏』を『明烏異聞録』として朗読の語りを入れて三味線だけではない楽器を加えて新内とのコラボでやってくれまして、新内だけの『明烏』とは一味ちがうそれでいて新内の印象も深いものとなりました。

その前に『口上』がありまして、松本幸四郎さんが中央で紹介されご披露されたのです。歌舞伎役者幸四郎さんの声が国立劇場大劇場にぴしっと響き、よい口上となりました。高麗屋と新内仲三郎さんとのご縁は初代白鴎さんからのつながりがあり長いとの事。新内仲三郎さんの長男である剛士(たけし)さんが、祖父の名跡である七代目新内多賀太夫を襲名されたわけです。新内は直接生活の場に流れ親しまれた古典芸能でもありますが、時代の流れで今は劇場内での楽しみ方にかわってきています。そうした流れの中で、新・多賀太夫さんは期待されているかたです。

『口上』のあと休憩がありまして、面白いチラシをみつけました。『日本音楽の流れⅠ』「日本の伝統音楽の楽器に注目し、その音楽の歴史について紹介する新シリーズ〔日本音楽の流れ〕。第一回の今回は<筝>を特集し、多彩な筝曲をお届けします。」面白そうです。さっそくチケット売り場でゲットしました。

次の演奏『明烏異聞録』にお琴が二面加わっていました。お琴の音色を頭の中で浮かべると出てくる感じがありますが、それとは違う低い音のお琴が一面ありまして、その効果にも注目しました。チケットを買ってのすぐのお琴との対面で興味ひかれます。

その他、笛、尺八、パーカッションが加わり、語りは、風間杜夫さんと名取裕子さんです。そこに新内多賀太夫さんの弾き語りが加わるのです。そのバランスが絶妙でした。新内の弾き語りもきちんと浮き立ち、若旦那・時次郎と遊女・浦里の心中への物語性もしっかり構成され、そこに侵入するそれぞれの楽器の音色も無駄な添え物のまやかしの音ではないのです。

時次郎と浦里が船で逃げて逃げ切れるわけでもなくその上で心中するというのも終わり方としてよかったです。歌舞伎などですと、道行が長くないと見せ所が減りますので、船上での心中は駄目でしょう。良く計算された舞台でした。

この後、新内協会関係者の挨拶があり、理事長の鶴賀若狭掾さんの「古い物をどう伝え、新しいものをどう取り入れていくかが大事である」というようなことを言われていましたが、古典芸能の場合のあらゆるものの課題です。

鑑賞する側としては、迎合して鑑賞者の鑑賞する力を落としてほしくないでし、新しいからといって、その話題性で終わってしまっては、話題性だけを追う観客を育てることになります。

新内を味わうためには、国立劇場大劇場は大きすぎると思いますが、こうした大きな会もやりようによっては面白いという証明になりましたから、七代目新内多賀太夫さんのような若い力の活躍がこれから一層期待されることとなるでしょう。

神保町シアターで<映画監督成瀬己喜男初期傑作選>が始まっています。芸人ものも入っています。『鶴八鶴次郎』『歌行燈』『女人哀愁』は観ていますから他作品がお目当てです。そういえば、風間杜夫さんは、波乃久里子さんと、三越劇場で『鶴八鶴次郎』を演じられていますね。

ついでにとは失礼ですが、染五郎さんと猿之助さんの弥次・喜多コンビ、シネマ映画『東海道中膝栗毛<やじきた>』の宣伝紹介でラップをやっております。こちらも古いものと新しいものとをどう進めて行かれるのか、それぞれの分野での闘いは続いています。

先ずは、<新内>の世間様へのさらなる浸透が大きな任務とおもわれます。期待大です。

 

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