国立劇場10月歌舞伎『霊験亀山鉾』(1)

もっと早い日程で観劇する予定が用事が入り友人に行ってもらいました。国立劇場初めて、通し狂言初めてで大丈夫であろうかと気にかかりましたが、面白かったとの知らせにホッとしました。

一つの芝居を4時間も観ているのとちょっと引いたそうですが、観ているうち引き込まれ長く感じなかったそうで、「立つことの出来ない孫のためにお婆ちゃんが、自分の臓の生き血を飲ませて孫が立てるようになるんだけど、私も物語に入っていたけど、あなた、近くの若い女の子は泣いていたわよ。」とのことでした。お芝居の展開がスムーズで分かりやすく、涙を誘うまで高揚させる舞台であったということでしょう。

さて、観劇の感想ですが、やはり何んといっても、色悪の仁左衛門さんの魅力がお芝居の流れに添って大きくなっていく楽しさです。二役ですが、両方ともに悪役で、その違いもくっきりと演じられました。実際にあった伊勢亀山城下での敵討を題材にして四世鶴屋南北さんは4つも作品を書いていて、その一つが『霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)』で、鉾は、お祭りのほこで、亀山八幡祭りの日に敵討がなされ、威勢よく傘鉾が出てくるのです。

敵討ですから色々な場所へ話しが飛びます。甲州石和(いさわ)は石和温泉が有名ですし、播州明石となれば源氏物語、駿州安倍川となれば静岡の安倍川近くで、ここでは遊郭と焼き場が重要な場面となります。そして、勢州亀山となります。旧東海道を歩いた時、亀山宿で確かにこの敵討をした<石井兄弟敵討の碑>があったのです。ながめつつ聞いたことがないけれどずいぶん立派な石碑だことと思ったのです。江戸時代には曽我兄弟と重ねて語られるほど評判の敵討だったようです。

藤田水右衛門(仁左衛門)は、遠州浜名で石井右内を闇討ちにし、その弟・石井兵介(又五郎)が石和で掛塚官兵衛(彌十郎)の検使のもと仇討ちをしようとしますが、水右衛門と官兵衛は懇意な中で、兵介のほうの水盃に毒をもり、兵介は無念なことに死んでしまいます。

敵討ちは、右内の養子の源之丞(錦之助)に引き継がれます。源之丞は実家は明石なのですが、お松(孝太郎)との不義から右内のところへ養子にだされていたのです。お松との間の長男・源次郎は、腰の立たない奇病で、お松は機織りをして子供を育てており源之丞が帰ってきました。兵介を心配する二人ですが、兵介が返り討ちにあったことをしります。

そしてこの源之丞も、水右衛門にまたまた闇討ちにあってしまうのです。水右衛門は二人も返り打ちにしてしまうのです。それも汚い手をつかって。如何に水右衛門が悪党だかわかりますが、色悪は、悪いやつだがちょっとその悪には、ぞくっとする色気があり華があります、とこなければいけないわけです。その色悪ぶりをしっかり仁左衛門さんは見せてくれるわけです。

さて、若い女の子が泣いたという場面までどう展開するかは次といたします。読むより観たほうが面白いとおもいます。

 

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