新橋演舞場・新作歌舞伎『NARUTO ーナルトー』

  • G2の脚本・演出である。かつて『憑神』のとき、最初の休憩で帰ったことがある。この後から面白くなるのかもしれないが、とするならそこまで持って行く過程が長すぎと思って座っているのがいやになってしまったのである。今回は竹本の語りからで、それも聴きなれていない人のためにと字幕を用意してくれた。このベンベンの音に最初から腰をすえる。

 

  • うずまきナルトとうちはサスケには、本人たちの知らない過去がある。それぞれの過去が本人それぞれに知らされる過程が違う。うずまきナルトには九尾(きゅうび)というバケモノを半分封じ込められており、そのことで死んだ父(四代目火影)と母がナルトにいきさつを教えるのである。それは、父と母の愛として届けられるのであるが、その展開が工夫されていて面白い。

 

  • サスケのほうは、うちは一族の生き残りで、兄・うちはイタチがうちは一族の父と母をはじめとして皆殺し、弟のサスケだけは殺さなかったのである。命を助けられてもサスケは兄を許すことができずに、仇として忍者学校でも頑張ったのである。ただ、ナルトに対しては、ナルトにも両親がいないので心ゆるすところがどこかに少しある。

 

  • ナルトは、落ちこぼれでライバルのサスケにもばかにされるが、自分は木ノ葉隠れの里の頂点の忍者である火影になるときめている。周りの上忍からは、ばかもこれだけばかなら大したものだと暖かく見守られている。サスケに心ひかれる春野サクラ、サスケ、ナルトは教官のはたけカカシのもとで木ノ葉隠れの里を守るために働く。伝説の三忍・綱手(つなで)、自来也(じらいや)、大蛇丸(おろちまる)がからんで自体は次第に怪しくなってくる。この三忍がでてくると四代目・雀右衛門さんが友右衛門時代の映画『忍者児雷也』を思い出してしまう。舞台での大なめくじ、大ガマ、大蛇の登場も映画のこともあって待ってましたである。

 

  • 大蛇丸は自分の忍者としての能力を不変にすることが第一で、木ノ葉隠れの里と一線を引いている。サスケはこの大蛇丸に、サクラは綱手に、ナルトは自来也のもとで修業する。サスケは大蛇丸に学ぶものはないと大蛇丸を切り刻む。そしてナルトとサスケはさらなる敵のうちはマダラに立ち向かうのであるが、ナルトは自分の過去も父母の愛で知ることができたが、サスケは真実を曲げて教えられている。それをきちんと教えるため自分の命をかけるのが自来也である。ナルトが、父母の愛を受け、サスケが可哀想だなと思うところなので、自来也の行動は感動ものである。

 

  • そしてナルトとサスケは見事うちはマダラを倒すのである。しかし、サスケの心は晴れない。ついにナルトとサスケの決闘となる。ここの本水の場も見せ場である。二人の対決は必然の若さの爆発であり、一度はぶつからなければならない宿命である。お互いそれで自分の進む道が決まるのである。

 

  • ナルトの体に九尾が封印されたいわれが解けていくのが中心であるが、そこに過去をもつサスケと、それら全体をとりまく忍者がナルトとサスケの成長を助けていくところが上手くできている。

 

  • ラーメンが好きで落ちこぼれでも夢をすてないナルトの巳之助さんは四代目火影も。一族の滅亡で世の中を斜めからしか見れないサスケの隼人さん。真正面からお互いに正々堂々と受けて立つ二人の関係も若さ溢れるさわやかさ。駄目だよなとわかっていてもサスケを想うサクラの梅丸さん。エロ仙人でもあるが目配りのきく自来也の猿弥さん。五代目火影となりしっかり者の綱手の笑也さん。大蛇丸と愛いっぱいのナルトの母との二役の笑三郎さんの違いも見どころ。非情なサスケの兄・うちはイタチで通す市瀬秀和さん。教官として優秀なはたけカカシの嘉島典俊さん。

 

  • うちはマダラは、猿之助さんと愛之助さんの交互出演。九尾やガマ仙人の声も担当。両方を観たのであるが愛之助さんの声はわかったが猿之助さんの声とはおもえなかった。お二人の違いを言葉であらわすのは難しいのであるが、声質も含めて愛之助さんは少し妖気がかったマダラで、猿之助さんは声を落とし時代がかった古風さのあるマダラであった。

 

  • 立ち回りも大人数ではなく、一人、一人の動きがわかるようにして、登場人物の内面の表出をおおってしまわないようにし、大蛇の切られるところの工夫は、そうなるかと面白かった。巳之助さんと隼人さんは『ワンピース』の延長での役者さんを周りに固めてもらい、猿之助さんと愛之助さんのバックアップもあり、幸運な新たなスタートである。音楽は「和楽器バンド」の提供であるが、「上々颱風(しゃんしゃんたいふーん)」の曲調を思い出し心地よかった。

 

  • 原作・岸本斉史/脚本・演出・G2/猿飛ヒルゼン・三代目火影(猿四郎)、木ノ葉隠れ里の相談役・水戸門ホムラ(欣弥)、同じく相談役・うたたねコハル(段之)、薬師カブト(國矢)、うみのイルカ(蝶一郎)、綱手の弟子・シズミ(梅乃)、干柿鬼鮫(安田桃太郎)、etc

 

  • 帰りにDVDのレンタルショップに寄ったら、あるわ、あるわ、「ナルト」の数多いDVD。若いカップルが借りてゆく。やはり人気があるのだ。劇場でも年輩のご婦人が、おおざっぱによくまとめてあると話していた。「ワンピース」より原作を読んでいる年齢層の巾が広いのかもしれない。うずまきナルトは落ちこぼれで、いじめにもあっているらしいので、忍者学校の様子などはちょっとアニメで観てみようかなと思う。名前に漢字があるとカタカナだけより印象が強くイメージを膨らませてしまう。年代の差。

 

  • 『NARUTO』(巻ノ一)を借りたら24分で終わってしまった。何話か入っていると思ったのだが、もっと借りてくればよかった。ナルト、イルカ先生から忍者の額あてをもらって忍者アカデミーを無事卒業した。舞台の木ノ葉隠れの里の町の絵の背景の雰囲気、どこかで見ているような気がするのだが思い出せない。

 

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