東京国立博物館『京都大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ』

  • 京都の大報恩寺は行っていない。北野天満宮の近くのようだが、梅の時期に北野天満宮だけを目指し周辺を散策しなかった。大報恩寺のみほとけの解説は分かりやすく頭の中の整理ができた。六観音がそろい、十大弟子がそろった。先ず、釈迦如来坐像(行快作・快慶の一番弟子)のお顔の目が切れ長で少しつりあがっている。これが鎌倉時代の仏像の特徴のようである。六観音のお顔もそうで、姿が平安と比べると細身である。特別展は平成館で、本館の彫刻展示室に仏像がありどれが鎌倉時代か当ててみた。平安との比較でもあるので当る確率は高い。

 

  • 釈迦如来坐像を中心に並んでいるのが十大弟子たちの立像である。どこかでチラシを手にしたら見開きにしてながめてほしい。十大弟子がそれぞれどんな力があるのか簡潔に紹介してくれている。棟方志功さんにも十大弟子の作品があるが、どいう修業をして何が優れているのか調べもしなかった。そんな怠け者にとってこの説明は灯です。運慶と並び称せられる快慶作。

 

  • 自分がなれるなら目犍連(もくけんれん)がいいなあと。超能力が使えるのです。少し膝を曲げ、いつでも発するぞの気構え。修業ぬきでの願望なので、阿那律(あなりつ)に見透かされそうである。眼は見えませんが、心の眼で見通せるのです。そして、そういうことではいけないと富楼那(ふるな)に説得されそうである。どのような人でも説得してしまうのです。

 

  • そう考えると十大弟子も親しみがもてる。そして、棟方志功さんの十大弟子が気になる。棟方志功さんは、この弟子をどう考えてこう表現したのかなあなどと興味がわいてくる。手の位置や形などにも何か意味があるのであろうかとも考える。棟方さんの十大弟子はどこか愛嬌が合って今阿難陀(あなんだ)は静かに集中してお釈迦様の教えをきいているのだなあと想像がついてきたりする。よかった。これで棟方志功さんの十大弟子に会っても会話できそうである。

 

  • 六観音菩薩さまは、六道のどの世界にいても手を差し伸べて救ってくれる。天道→如意輪観音、人間道→准胝(じゅんでい)観音、修羅道→十一面観音、畜生道→馬頭観音、餓鬼道→千手観音、地獄→聖観音。六観音菩薩像は運慶の弟子・定慶作である。六体が光背も台座も造られたままで残されている。六体あるのでなるほどと思って鑑賞する。自分は極楽に行くと言い切る友人がいる。私が地獄にいたら助けてちょうだいと頼んである。もちろん蜘蛛の糸を垂らすようなことはせずに即救助してくれるようにとつけ加えてある。かの友人はわたしにとって聖観音菩薩ということになる。体形的には鎌倉でなく平安である。

 

  • 誕生釈迦仏立像は、花まつりで甘茶をかけらるお釈迦様の誕生像だが、天を指す右手の人差し指と地を指す左手の人差し指が超長かった。心して思考せよと言われているみたいだが、あまりの長さに思考がとまった。作者不明。平安時代の作者不明の千手観音菩薩立像の手があどけない赤子の手のようだった。

 

  • 見どころ1 「慶派のスーパースター 快慶・定慶・行快の名品がずらり!!」
  • 見どころ2 「秘仏・本尊・釈迦如来坐像と十大弟子が同じ空間で!!」(寺外初公開で寺院では別々に安置されている)
  • 見どころ3 「六観音菩薩像の光背を会期中に外し背中も間近にみれる!!」(現在は外された状態) 東京国立博物館・平成館 12月9日まで

 

  • わかりやすくて満足。今度はやはり現地での再会をである。東洋館がリニュアールされてから観覧していないので再び訪れる。その前に人気の明治外苑イチョウ並木へ。人が多く想っていたより黄色がはっきりしない。歩道をおおう左右の薄黄色と薄緑のコントラストのトンネルのほうが面白い。上野公園では数本の色鮮やかな黄色のイチョウのそばに桜が咲いていてこちらの方が印象に残る。

 

  • 東洋館が観やすくなっていた。展示室の空間を狭くして展示品も少なくしたのであろうか美術館感覚で鑑賞できた。鑑賞したいところをメモしておいて出かけた。

 

  • 5階から降りてゆく。5階の9室「清時代の工芸」ーガラス工芸と玉製器物で繊細で美しい。
  • 4階の8室「特別企画 中国近代絵画の巨匠 斉白日」-これが新感覚。墨絵も近代となるとこうなるのかという楽しさである。赤とか黄色などの使い方。濃淡。熊谷守一さんと似たところがあって身近なものを描いていたりする。カニの群れ。魚の群れ。カエルの群れ。群れと言ってもイラスト的な感覚も加味され、軽さがあり格式ばった山水画のイメージが一掃され、いいな、いいな、いいなと心の中で連発していた。
  • 3階の5室「中国の陶磁器」ー景徳鎮窯の作品。なんという色であろう。どうしてこういう色がでてくるのか。自然の色にかなわないというが、押し込められた人工の色もなかなかである。アジアの占い体験コーナーもあり、国立博物館前が見渡せるテラスにも出られる。疲れた時にはくつろげる場所である。地下の13室「アジアの染織 カシミヤ・ショール」を忘れて見逃してしまった。

 

  • 本館1階では「綴プロジェクト作品 平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」が展示されていた。原本は大英博物館にあり、これをデジタルの高性能さを使用しオリジナルの保存と鑑賞の機会を設けるということらしい。すぐそばでながめることができた。鵯越(ひよどりごえ)の逆落とし。那須の与一の扇の的。熊谷直実の呼び戻もどされる平敦盛。義経の弓流し。それらが二双の屏風画に描かれていた。
  • 2階の9室「能と歌舞伎 歌舞伎衣装」ー 戦で攻撃から身を守るために着用する鎖帷子(くさりかたびら)を、七宝つなぎ模様に金糸で編み胸当てや脛(すね)当て部分に装飾としていて、なるほどあれは鎖帷子なのか。
  • 10室「浮世絵と衣裳 江戸(衣装)」ー 忠臣蔵をを動物たちで描いていた。武家屋敷の年末の大掃除がこれまた忠臣蔵に見立てられている。
  • 18室「近代美術」ー「形見(かたみ)の直垂(ひたたれ)・虫干」(川村清雄)幕臣の子として生まれた川村は、早くにフランス、イタリアで本格的に油絵を学んだ。画家の保護者であり恩人であった勝海舟の死を悼んで制作された作品。勝海舟の胸像があり、少女が葬儀の時にお棺かつぐ侍者が着た白い直垂を着ている。「虫干(むしぼし)」ともあり周りには他の衣裳がみられる。その中で白さが際立つ。下村観山の「白狐」も秋の森の中での白がりんとした静謐さを感じさせた。

 

  • やはり二日にわたって鑑賞して正解であった。時間があっても一日で全てをでは新鮮味がなくなる。旧東京音楽学校奏楽堂もリニュアールオープンしたので、上野公園も楽しい場所になりそうである。

 

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