歌舞伎座3月『雷船頭』『弁天娘女男白浪』

雷船頭』と『弁天娘女男白浪』は奇数日と偶数日で配役が変わるのである。近い日にちで見比べると役者さんによって踊りや芝居の雰囲気が変わるのがよくわかる。それぞれに培ってきたものが基本に加味されて造形されているのである。

 

雷船頭』は踊りで、吉原に客を運ぶ船頭が、地上に落ちてきた雷とのやりとりを見せるのである。奇数日、猿之助さんは女船頭で雷は弘太郎さん。偶数日、幸四郎さんは男船頭で雷は鷹之資さんである。女船頭と男船頭ということもあって見せ所も違っていた。弘太郎さんの雷は少し太めでちょっとドジで落ちてしまったという感じで、粋な女船頭に軽くいなされて遊ばれている感じである。鷹之資さんの雷はすばしっこくて下界をのぞき過ぎて落ちてしまったという感じで、いなせな船頭の幸四郎さんに面白がられて遊ばれている感じ。

 

女形の場合、着物のすそで足が見えないためその表現の難しさを感じた。動きの少ない全身でその心持を表現しなくてはならないのである。その点、男船頭の場合、足の動きで軽快さを見せることができる。表現方法がかなり直接的に観客に伝えることができ観客もそのリズム感を簡単に享受できるのである。幸四郎さんは、『傀儡師』より楽しそうに軽快に踊られていて、なるほどなあと踊りによって違うものであると感じさせられた。動きのことを考えてのことか、女船頭の場合は若い者との立ち廻りをいれている。色々考慮しているわけで、それぞれの見方ができて楽しめた。

 

こうした雷と船頭の風景は現実には観られない舞台上のお楽しみであるが、現実には3月18日には浅草で浅草寺の奉納舞「金龍の舞」がある。国立劇場のほうで早々と観覧させてもらった。観音様をお守りするために金のウロコの龍が舞い降りたのだそうである。金のウロコが八千八百八十八枚あり、そのウロコがうごめいて勇壮な動きをみせてくれる。この日は『女鳴神』の龍神龍女たちも誘われて、一層高く舞い上がるかもしれない。そして、雷さんも、またまた、上から覗き込んで雷門に落ちようと思ったのが歌舞伎座であったということになっているかも。船頭さんたちまた遊んであげて下さいな。

 

弁天娘女男白波』は、御存知「しらざぁ言って聞かせやしょう」の「浜松屋店先の場」と白波五人男が勢揃いする「稲瀬川勢揃いの場」である。これも奇数と偶数日で役者さんが入れ替わっている。奇数日・弁天小僧菊之助(幸四郎)、南郷力丸(猿弥)、鳶頭清次(猿之助)。偶数日・弁天小僧菊之助(猿之助)、南郷力丸(幸四郎)、鳶頭清次(猿弥)。

 

幸四郎さんの弁天小僧は、しとやかで猿弥さんの南郷が最初はしきりにかばう感じであるが、かたりが露見すると狩野元信が弁天小僧になった感じでおとなしめの凄味をきかす。猿之助さんの弁天小僧は愛らしくしているが、変わり身はルフィが弁天小僧になった感じでまあ元気な事で、あたりを自分のペースに巻き込んでしまう。幸四郎さんの南郷は勝手にやってくれとまかせている。

 

鳶頭は猿之助さんはすっきりと形を決め、猿弥さんは貫禄ある顔のきく頭という感じであった。これまたなるほどなあと面白がらせてもらった。そういえば、今回四天王もできそうなくらいじっとしていた小三郎の寺嶋眞秀さんは、丁稚の長松をやったことがあり、お茶出ししてましたね。

 

勢揃いでは、日本駄衛門の白鷗さんが若い白波たちの後押しをされ、伸び伸びと若い役者さんの考え方に任せているような感じも受けました。忠信利平(亀鶴)、赤星十三郎(笑也)。心地よくツラネを堪能。夜の部も昼の部と同様歌舞伎初めての人も楽しめる。ちょっと違う配役でも観て観たいなと思った時は、一幕見の経験もどうぞ。

弁天小僧菊之助と南郷力丸にあたふたさせられる浜松屋の人々・浜松屋伜宗之助(鷹之資)、番頭与九郎(橘三郎)、浜松屋幸兵衛(友右衛門)

 

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