関西春の旅『生駒』『大阪』『京都』『湖西・湖北』(3)

JR湖西線は山科、西大津と琵琶湖の西に向かうのである。堅田までは行ったことがことあるが、今回はさらに近江塩津まで行きそこから米原まで回ってくるのである。電車は敦賀行きで京都から北陸がこんなに近いのだと実感である。そのまま北陸に行きたい気分であった。今度体験してみよう。

 

時間がかかるので観光は駅から近いところを選ぶ。菅浦とか旧塩津宿など琵琶湖そばまで行きたいが路線バス旅行の計画が必要である。鯖街道の拠点朽木へも行ってみたい。というわけで、次々浮かぶが今回は駅から徒歩で行ける場所を三か所選んだ。

 

一か所目は近江今津駅から2分の『琵琶湖周航の歌』の資料館と歌碑である。『琵琶湖周航の歌』と『琵琶湖哀歌』が混同されているところがある。私も琵琶湖でボート遭難事故で亡くなったのが三高(京都大学)の学生と思っていた。金沢に行って四高(金沢大学)の学生であったと知ったのである。『琵琶湖周航の歌』は、やはり三高のボート部に所属していた小口太郎さんが琵琶湖周航中その美しさに、今津湖岸の宿で披露したのが『琵琶湖周航の歌』の詩である。これに当時学生たちが歌っていた『ひつじぐさ』の曲にのせたところ上手く合い、その後クルー仲間が歌い始めたのが始まりだそうである。『ひつじぐさ』は吉田千秋さんが作曲されたもので、詩ができたのが1917年(大正6年)である。

 

作詞、作曲のお二人は若くして亡くなられていた。小口太郎(長野・岡谷市出身)さんは27歳で、吉田千秋(新潟市出身)さんは24歳であった。

 

このあとに生まれたのが四校のボート部の合宿での遭難事故の鎮魂歌『琵琶湖哀歌』(作詞・奥野椰子夫、作曲・菊池博)である。遭難事故は1941年(昭和16年)である。この歌のほうが先に人々に知られるようになる。曲も似ているのである。ところが、戦時下、士気を損なうとして哀歌は歌うことが禁止されてしまう。戦後になってようやく心おきなく歌われるようになったのである。この遭難事故の日、地元の人は琵琶湖にでるのはやめたほうが良いと言われたそうである。この時期「比良の八荒、荒れ仕舞い」と呼ぶ大しけが発生するのである。

 

比良山(蓬莱山、武奈ケ岳、打見山などの高峰)と琵琶湖の気温差から山麓一帯に強い北西の季節風が吹き琵琶湖は大しけとなる自然現象があり、この荒れが長い冬の終わりで春の訪れなのだそうである。今年も3月26日に、「比良八講」という水への祈りが行われる案内があった。滋賀・京阪神地域の水瓶をつかさどる琵琶湖への報恩と、その水源である比良山系の保全・水難者回向と湖上安全祈願を捧げる法要である。(近江舞子湖畔にて開催) 悲恋伝説「比良八荒」という説話もある。

 

琵琶湖周航の歌』にもどると、今津が歌の発祥の地であることは、小口太郎さんが寄宿舎に残っていた学友へのハガキや学友の記憶でも明らかで1917年(大正6年)6月28日である。湖岸に歌碑があるがそこから見る琵琶湖はやはり美しかった。歌詞は六番まであって今津が出てくるのが三番である。

「浪のまにまに漂えば 赤い泊火なつかしみ 行方さだめぬ波枕 今日は今津か長浜か」

資料館では、色々な歌手の方の声やオーケストラ、ギター、大正琴の楽器などの『琵琶湖周航の歌』を聞くことができる。全てさわりだけ聞いたが、映画『有楽町で逢いましょう』の映画を観たばかりだったので、フランク永井さんの声に反応してしまった。係りの方が『琵琶湖哀歌』と『七里ケ浜の哀歌』も曲が似ていますから聴いてみてくださいと教えてくれた。『ひつじぐさ』もあった。美しさと哀しさを味わうこととなった。吉田千秋さんは肺結核で茅ヶ崎南湖院に入院していた時期もあった。そうか吉田千秋さんんもあそこに入院されたのかと感慨深かった。

 

今津には、ヴォ―リズが設計した建物が残っている。ヴォ―リズ通りに「今津ヴォ―リズ資料館」「日本基督教団今津教会」「旧今津郵便局」と並んでいる。もう一つ離れて個人宅の前川邸があるらしいがそこは見なかった。ヴォ―リズさんの洋館は近江八幡に多くあり有名であるが、湖西では今津が数が多い。それにしてもヴォ―リズさん随分沢山の洋館を残されたものである。やはり伝道という情熱が形となって表されたのであろう。

 

観光案内のかたが、かつての今津の駅が残っていますからそちらもと教えてくれたのでせっかくだからとそこを見てから駅に向かったが、ヴォ―リズさんの設計した建物と同じようにもう少しきちんとして残して欲しい。何か旧駅舎可哀想であった。江若鉄道 近江今津駅とあった。江若鉄道はJR湖西線が走る前、大津市の浜大津駅から近江今津駅まで走っていた路線である。琵琶湖の西にも色々な歴史があったわけである。

 

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