映画『リヴァプール、最後の恋』からグロリア・グレアム出演映画(4)

映画『悪人と美女』(ヴィンセント・ミネリ監督)はハリウッドの内幕を描いた作品である。凄腕のプロデューサー・ジョナサンが傲慢さゆえに今は上手くいっていないが復帰を試みようとかつて一緒に仕事をした仲間3人に電話がある。この3人は彼との過去に苦い体験があり、彼の電話には出ない。制作責任者のハリーに呼ばれ3人は集まり、一人づつ過去のジョナサンの仕打ちを話し始める。

ただ基本的に3人がジョナサンと会った時は世の中に今ほどの名声は得ていなかった。フレッドは、映画監督を目指していたが、映画業界での何でも屋であった。女優・ジョージアは、名優を父に持ちその呪縛から抜け出せず脇役女優であった。ジェームズは大学教授で最初の小説が売れ次はハリウッドかと世間にささやかれていた。

今彼らは、アカデミー賞も受賞した有名な映画監督であり、大スター女優であり、ピューリツァ賞も受賞したシナリオライターとなっていた。3人はジョナサンに飲まされた苦汁を一人づつその出会いと別れを話し始める。

ここで、ジョナサンのカーク・ダグラスの登場である。野心家で癖のあるプロデューサーは、はまり役である。大女優のジョージアのラナ・ターナーは出始めの華やかさはさすがであるが、酒浸りの女優からスターとなりジョナサンを愛するようになる過程はそれほど光らなかった。彼女にとっては当たり前すぎる役柄かもしれない。

グロリア・グレアムは、ジェームズの妻役であり関係してくるので、ジェームズとジョナサンの関係だけ少し紹介する。ジョナサンは、ジェームズをハリウッドに呼ぶ。ジェームズは妻のローズマリーがハリウッドに行きたがったからである。少しにぎやかだがジェームズにとっては可愛い妻であった。

ローズマリーはハリウッドに大満足で、妻のためジェームスはシナリオの仕事がなかなかはかどらない。ジョナサンは一考を案じ、ジェームスを別の場所に滞在させローズマリーにはプレーボーイの俳優・ガウチョをエスコート役に頼む。ところがローズマリーとガウチョは飛行機事故で亡くなってしまう。ジョナサンが仕組んでいたとはジェームズは知らなかった。彼は失意の中、映画撮影にも参加し完成となる。そこで、妻とガウチョの関係にジョナサンが手を貸していたことがわかりジェームズは去るのである。

ローズマリー役でグロリア・ゲレアムは助演女優賞を受賞する。典型的な淑やかで可愛らしい南部出身者の妻役に対してであった。重荷を背負った役が多い中で彼女にとってはめずらしい役であり、しっかり演じ分けられたということであろう。典型的な南部女性の定義がわからなかったので、これがなあと思ったが、数回ほど観て、そういうことなのだとやっとわかった気になった。一つの国であっても地域によっての違いなどは簡単には理解できないものである。

3人はジョナサンからの国際電話に協力は出来ないと答え部屋を出るが、そっと別の電話を取り、ジョナサンとハリーの電話でのやり取りを聴くのである。おそらくジョナサンはその事を知っていて話しているであろう。それがジョナサンである。

ハリウッドの内幕ものとして近頃観たもので面白かったのはドキュメンタリーでは『くたばれ!ハリウッド』(2002年)と映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年・クエンティン・タランティーノ監督)である。

ドキュメンタリー『くたばれ!ハリウッド』は、カリスマ的プロデューサー・ロバート・エヴァンスのジェットコースターのような映画人生である。俳優から映画制作に野心を抱き、パナマウントの制作部門のトップに。『可笑しな二人』『ロミオとジュリエット』『ローズマリーの赤ちゃん』『さよならコロンバス』『ある愛の詩』『暗殺の森』『ゴッドファーザー』等の制作を。これだけの映画名をあげれば凄腕であることが想像できるであろう。そこから急下し、また上がるという人生である。

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が、レオナルド・デカプリオとブラッド・ピットの共演でクエンティン・タランティーノ監督となれば期待と裏切られるかの気持ちが振幅する。最初に激しい暴力シーンがあるのでの注意勧告がある。このシーンはラストなので、嫌な人はラストはカットしたほうが良い。今は自信がなく自己嫌悪のテレビのスター俳優(レオナルド・デカプリオ)が映画に方向転換をするが敵役ばかりである。その俳優を励ましそばにいるのが仕事の来ないスタントマン(ブラッド・ピット)である。久しぶりに格好いいブラッド・ピットで、ダメなレオナルド・デカプリオも楽しい。

女優のシャロン・テートが殺害された事件が匂わされていて、隣にロマン・ポランスキー、シャロン・テート夫妻が引っ越してくる。『リヴァプール・最後の恋』でグロリア・グレアムも自分の出演映画を観ていたが、シャロン・テートも劇場に自分の出演映画を思わせぶりに目立つように観に行くのが可笑しい。駄目俳優を気にいっている一人として、アル・パチーノも出演している。スティーブ・マックイーン役も出て来て目が離せない。

ブラッド・ピットの扮するスタントマンのモデルは、ハル・ニーダムといわれている。ハル・ニーダムが監督した映画に『グレート・スタントマン』(1978年)がある。これまた、ハリウッド映画のスタントマンの内幕を描いた映画と言える。リアルなスタントマンの仕事ぶりが観れてどの分野もプロは素晴らしい。

1950年につばぜり合いをしたのがブロードウェイの内幕を描いた『イヴの総て』(ジェフ・L・マンキーウイッツ監督)とハリウッドの内幕を描いた『サンセット大通り』(ビリー・ワイルダー監督)である。『サンセット大通り』はフイルムノワールでもある。悪女役で魅了したラナ・ターナーの『郵便配達は二度ベルを鳴らす』もフイルムノワールである。

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