映画『箱根風雲録』

映画『箱根風雲録』は、箱根用水の完成までを描いた作品である。箱根の西側の三島は水がないため稲作ができなかった。そのため箱根の芦ノ湖から湖尻峠を掘り進め芦ノ湖の水を三島に通すことを考える。これが箱根用水である。箱根用水が出来上がるまでの農民や民衆そしてそれを請け負った浅草の商人・友野与右衛門と村の名主・大庭源之丞を中心とした人々の苦難の道のりが時代劇として描かれている。

前進座が新星映画社と提携して1952年に山本薩夫監督(原作・タカクラテル『ハコネ用水』)で制作している。

時は徳川四代将軍家綱の時代である。友野与右衛門は、商人でもあるのでこれが成功すれば新田開発にもなると考えていた。芦ノ湖側と三島側の両方から掘り進めて、貫通するようにした。よく江戸時代にこれだけの土木事業ができたものである。

ところが幕府としては民間人が成し遂げては幕府の失墜とばかりに色々邪魔をする。与右衛門にいわれなき罪をかぶせて捕えようとする。その時助けてくれたのが、野盗の蒲生玄藩である。玄藩は与右衛門の土木の腕と農民たちをまとめる力を見込んで幕府を倒すため仲間にならないかと誘う。与右衛門は断り自分の仕事に没頭する。

しかし、工事は難航し資金の援助も絶たれる。賃金をもらえない農民や民衆たちの気持ちが土木工事から離れ始める。与右衛門の妻・リツは江戸へ金策にでかける。リツは浅草の家屋敷を全て売って帰って来る。そして自分たちの家はここである。ここが自分たちの骨をうずめる場所であると皆に伝える。与右衛門も始めた時お金儲けも考えていた自分を恥じた。再び皆工事に励んでくれる。

今の箱根神社は箱根権現といわれそこの快長僧正も与右衛門を応援してくれ力となってくれた。かつては芦ノ湖の水利権は箱根権現社が所有していたわけでそこのトップである快長僧正の協力を得て後ろ盾となってくれたことはありがたい事であった。しかし快長僧正は京都のお寺に左遷されてしまう。トンネルは水が出たり難題ばかりである。トンネルの中では与右衛門の闘う姿に動かされた玄藩がそっと隠れて工事を手伝っていた。

三年の月日がたちそろそろ両方のトンネルが合わさるときが近くなった。そんな時にまたまた与右衛門は役人に捕えられてしまう。牢から与右衛門はトンネルが貫通した知らせの狼煙を待っていた。玄藩は一味を従え役人たちと一戦交え討死してしまう。

トンネルが貫通する。農民たちは大喜びである。狼煙が上がった。感無量で狼煙を眺める与右衛門。背後から悪の刃が。与右衛門は無念の最後を遂げる。何も知らずに農民たちは流れる用水の後を追う者、用水の中に入いる者等喜びをかみしめていた。

与右衛門がどんな商売をやっていたのかわからないのであるが、新田開発を考える人であるから測量などの出来る人である。映画の中でもひたすら図面を広げ資料を調べて熟慮している。両方から掘り進んでそれを合体するなど思いもよらないことを与右衛門は自信をもって進めている。そのトンネルの合体が1メートルの違いということであるから驚くべきことである。

実際には、芦ノ湖の水を静岡県の深良川に合流させ、正式には深良用水(ふからようすい)とされる。大庭源之丞も深良村の名主である。三島は富士山の水がきていた。「メモ帳 5」でも三島の「楽寿園の庭園の池はかつてはたっぷりと富士山からの水で満たされていた」とある。ところが富士山に近い麓は表層部が火山灰を含む地質で水もちが悪かったということである。(深良村は現在、静岡県裾野市)なるほどである。

前進座の役者さん総出演である。友野与右衛門(河原崎長十郎)、蒲生玄藩(中村翫右衛門)、快長僧正(川原崎國太郎)、大庭源之丞(瀬川菊之丞)で、その他、女優陣には友野与右衛門の妻・リク(山田五十鈴)、蒲生玄藩の情婦・サヨ(轟夕起子)、トラ(飯田蝶子)らのベテランがそれぞれの立場を演じている。

DVDには中村梅之助さんのインタビューもあり、トンネルのセットは前進座の庭に設置され撮影は寒い時期で水が冷たかったらしい。梅之助さんは体調を崩しそれでも現場に行こうとしたが、病気を治すのが一番だと翫右衛門さんに止められたとか。梅之助さん、座員一同頑張っているので自分が歯がゆかったのであろう。

時代劇としてスペクタルな面も加えた映画になっている。色々検索して位置的な関係もはっきりし、映画からは江戸時代に機械もなく手で成し遂げた凄さを見せてもらった。また一つ整理できました。

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