陛下の研究者としての理論性

2019年に学習院大学資料館で『華ひらく皇室文化 ー明治宮廷を彩る技と美ー』で「ミュージアム・レター No.40」を手にしました。

そこに親王であられた現天皇陛下が一文<「華ひらく皇室文化展」に寄せてーボンボニエールの思い出ー>を寄せられています。素敵な内容なのです。

「ボンボニエールとは、明治中期頃から、皇室での慶事の際に引き出物として配られてきた小型の菓子器のこと」と説明されます。

「私が、ボンボニエールを初めて知ったのは、4歳の時の「着袴の儀」であったように記憶している。皇室では、4歳になると袴を着ける儀式を行う。民間でいうと七五三に当たる。儀式は碁盤の上から飛び降りることによって終了するが、私は、直前の行われた東京オリンピックの体操競技をみていたためか、体操選手のように手を挙げて着地したように思う。その時に作られたものは、銀製で碁盤の形をしていた。」

ボンボニエールに入っていた甘い金平糖の味と「袴の儀」の着地の思い出から次のように続きます。

「碁盤型のボンボニエールを考えてくれた両親に感謝している。」

そして視点は研究者としての探求心に移ります。

「ここ10年ほど、私は、「西園寺家文書」の中でも、鎌倉時代の西園寺家の当主が乗った牛車の絵図について共同研究を行っているが、史料館には、牛車形をしたボンボニエールもあると知り、驚いた。」

思い出から一転、ご自分の研究にも触れられ、展示を鑑賞する者への楽しみ方まで教えてくださっています。

「私も、客員研究員としては最後となる今回の展示を、史料館で過ごした日々を思い返しながら、心ゆくまで鑑賞したいとおもっている。」

ご自分の思い出からボンボニエールに親しみを持たせ、研究者としての視点を示し、鑑賞する人と共にご自分も楽しみたいとされる姿勢は、国民と共に歩まれるとする陛下の心を感じます。

ボンボニエールに対してと同じように、新型コロナの感染下におけるオリンピック開催に対しても、陛下の肌感覚と研究者としての視点と理論性は、大きく国民をとらえられて考察をされていることは十分に想像できるのです。

一方、知性のみじんも感じられない「安心、安全」のむなしさと責任感のみじんも無い言葉の繰り返しがただ落ち葉のように散っています。どこに視線があるのでしょうか。

・ボンボニエールのポストカード

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