仏教関係の映画(3)

お寺を持つこともなく民衆の中に入っていった聖でよく知られているのが作仏聖の円空(1632~1695年)です。12万体の微笑み仏像を作ったといわれています。

ドキュメンタリー『円空 今に生きる』。「例えどのような朽ちた素材からでも、全ての人々を救うための神仏像を、私は彫るつもりである。」

円空が仏の道に入るきっかけとなったのは、母が洪水で亡くなったことによるようです。悩み苦しむ人のために、病に苦しむ人のために、干ばつに苦しむ人のために、限りある命を助けるために、ひたすら仏像を彫り続けたのです。何の効き目もなくあざけられたり、苦しさのはけ口として罵倒されたりもしたのです。時には自分の守り仏として喜んで受け取ってくれる人もいました。

それらすべてを受け入れて円空はその一瞬一瞬を仏像に祈りを込めて彫り続けたのです。

中国から茶を日本に伝えたのが栄西(1141~1215年)です。この方も興味があり、映画はないかと探しましたが無いようです。考え方が柔軟というのでしょうか周囲とあまり対立することなく禅の道を歩まれたようです。

ここからは少し番外編で進みます。市川雷蔵さんの映画を観ていた中から『安珍と清姫』と『妖僧』。

安珍と清姫』といえば道成寺です。もちろん安珍の隠れた鐘に蛇となって巻き付き火炎を発します。ただラストは悲しくも美しい恋の物語となっています。安珍は雷蔵さん、清姫は若尾文子さん。

清姫は馬に乗り、弓を使うのです。狐を射った矢が旅の僧の腕に刺さってしまいます。奥州の白河から道成寺に21日間こもり祈るための旅の途中でした。清姫の真砂の屋敷で療養します。自分を避ける安珍を清姫は僧も男であると惑わし、そこから安珍は煩悩にさいなまれます。安珍はついに戒律を破り清姫を抱いてしまいますが、やはり心が決まりません。

安珍は清姫の幸せを願い再び道成寺へ。そこで僧侶たちに鐘の中に隠されます。追いかけてきた清姫は川に飛び込み蛇となり鐘巻となります。安珍は命が助かりますが迷いなく清姫への愛を貫くことを決心します。そして亡くなった清姫の遺体を抱きかかえ一生清姫の菩提を祈ることにするのでした。

妖僧』」は、奈良時代の超悪僧の声高き道鏡と天皇の恋の話です。全て恋の話となるところが映画スターと大衆の映画の娯楽性に対する要望でしょうか。

10年に及ぶ修業に耐えた僧が妖力を得、女帝の病を治します。僧は道鏡と名のり、正しい政治を行うことを女帝にすすめ、女帝もそれを実行しようとします。しかし、私利私欲にまみれ腐政を行う権力者たちがそれをはばみます。女帝は道鏡に恋をし、道鏡も戒律との板挟みになりますが、恋の力に負けていき、それと同時に妖力も失い新たな女帝の病を治すことが出来なくなります。

女帝は道鏡との短い恋に満足して亡くなられ、道鏡も死を持って女帝との未来を信じ暗殺の刃を受けて亡くなります。道鏡には権力欲は無く愛に生きた人として描かれています。

映画『山椒大夫』は、如意輪観音に導かれているといってもいいでしょう。平正氏は農民の側について奥州から筑紫に左遷となってしまいます。

正氏は息子の厨子王に「人は慈悲の心を失っては人ではない。おのれをせめても人にはなさけをかけよ。人は等しくこの世に生まれてきたものだ。幸せにへだてががあって良いはずがない。」と教え、家に伝わる如意輪観音像を手渡します。

厨子王、妹の安寿、母の玉木、召使の姥竹の4人は父の居る筑紫に向かいます。ところが越後で人買いにだまされ、母と姥竹は安寿と厨子王とは別の舟に乗せられ姥竹は舟から転落して亡くなってしまいます。母は佐渡へ連れていかれ、安寿と厨子王は丹後の山椒大夫の屋敷で奴隷として使われます。

厨子王は、長い奴隷生活のため如意輪観音も信ぜられず、父の言葉も失っていました。安寿は屋敷の外に出る機会のあった時に兄を逃がし、自分は入水してしまいます。厨子王は何んとか逃げることができ、如意輪観音像を持っていたことから身分がわかり、都の宮廷で出世し、丹後の国主となります。

さっそく厨子王は奴隷の解放を命じ、山椒大夫を追放しますが、命を懸けて助けてくれた安寿とは会うことは出来ませんでした。山椒大夫が管理していた荘園は右大臣の所有で国主が勝手にできる場所ではありません。それを厨子王は知っててやったのです。その時の厨子王には父の言葉がよみがえっていました。

厨子王は佐渡で眼の見えなくなり鳥追いをしている母を探し当てます。母に如意輪観音像をさわらせ自分が厨子王であることを告げます。そして父の言葉に従い出世を捨てましたと言い、母は喜びの涙にくれます。

映画『敦煌(とんこう)』は、出世を望んだ男が生きる最後の目的として、価値はわからないが戦から仏教経典を守るというラストでした。

仏教を深く学ばれている方は映画からもっと違う見方をされるのかもしれません。

そんな本にめぐりあったのです。

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