竹本千歳太夫さんと野澤錦糸さんの<素浄瑠璃の会>。大変刺激になり復習もしました。11演目の聞かせどころ、クドキの違いなど実戦をともなっての解体なので新たな好奇心がムクムクと目を覚ます。
友人に電話で「千歳太夫さんと錦糸さんの・・・」と言っただけで「行きたい!」との即答である。
『野崎村の段』での、お店のお嬢様のお染と、村娘のお光の違い。<勘平腹切りの段>のメリヤス。<帯屋の段>のサワリ。<鮨屋の段>のゆるり。「三つ違ひの兄さんと・・・」「せまじきものは宮仕へ」「十六年も一昔。」の有名な部分。<尼ケ崎の段><堀川猿回しの段><政岡忠儀の段>の境遇の違う女性の語りの違い。千歳太夫さんは苦手の子供が語る<順礼歌の段>など、いつもは三味線の者はしゃべらないのですがと錦糸さんが、解説してくれ、千歳太夫さんからも話しを引き出してくださる。千歳太夫さんは、本を何冊も出し、即その場面の気持ちに早変わりである。
皆さん感心したり、納得したり、笑ったり、反応が良い。最後は、『艶姿女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)』<酒屋の段>の「今頃は半七様、どこにどうしてござらうぞ。」を覚えて行って下さいと、皆で声を出す。難しい。希望者が5人ほど次々前に出て肩衣を着けてもらって語られた。伸ばすところは、千歳太夫さんが助けられ、錦糸さんの三味線にのり、個性を発揮された。錦糸さんお薦めのお風呂で、帰ってから語られたかたもいるやもしれない。
録画として『絵本太功記』、『仮名手本忠臣蔵』があり、早速、解説された部分を観る。『絵本太功記』<尼ケ崎の段>は、豊竹咲太夫さんに、豊澤富助さん。『仮名手本忠臣蔵』<勘平腹切の段>は竹本住太夫さんに鶴澤燕三さんであった。そして『艶姿女舞衣』<酒屋の段>の素浄瑠璃があった。住太夫さんと錦糸さんである。三味線の弾かない時間が思っていたよりも長くあり、次に音を出す時は太夫さんの調子と場面とを考えて神経をつかうであろうと思える。あまり大きく押すと太夫さんの声を駄目にしてしまうとのこと。太夫さんがのっているからと合わせて勢い込むと度を越してしまい、引き過ぎると勢いがなさすぎたりするのであろう。
「素浄瑠璃」も良いものである。自分で場面や話しを想像する。ただどうしてここはこんなに伸ばすのであろうかと思う。その辺が、こちらの現代の呼吸と違うところで、そこがいいのだというところまでには至っていない。至ることはないであろうが、人形がそれに合わせて動くと、一体化して必要な長さとなるのである。
また、千歳太夫と錦糸さんコンビの企画を江東区森下文化センターで考えてくれそうな予感がする。地下鉄からたどり着くまで三人のかたに道を聞いてしまったので、その経験を是非次回生かしたい。