旧東海道 戸塚から藤沢 (2)

信号のあるところで渡ろうと信号の前に立つと見えました。浅間神社の石塔が。道路と並行の形で上っていく。古い神社なので樹齢600年の椎の木があるという。しかし、この椎の木、根本に近い幹はもう少しで小さな子供が座れるくらい空洞で、これからどう伸びればよいのやらの状態である。案内板も曲がって上の方は折れている。頑張れ頑張れと撫ぜてあげる。他にも太い椎の木がある。境内に上がると、道路は上着を脱ぐ暑さである。東海道を歩くのも今月末くらいであろうか。境内の緑の中は涼やかで気持ちが良い。

リーダーは焦っている。箱根越えをなんとか早めにしたいと。ただ彼女、夏は陽が長いからと登山に忙しいのでその前と思っていたらしい。小田原から箱根が16.5キロ。箱根から三島が14.7キロ。箱根は二泊の電車つきフリーの安いのを見つけて、これはどうかと案を出したが、これのどの日にするか。皆が3日間、日にちを合わせるのが難しい。でも2日ではきついと頭を悩ませていたようである。こちらはバスの通っていない道の距離と高低が問題である。脱落の場合を検討しておかなければ。今日の戸塚から藤沢が7.8キロである。

藤沢まで半分は来たであろうからと昼食とする。﨑陽軒のレストランがありここにしようかと立ち止まったが、ここに入ったらゆっくりしてしまいそうと隣のとんかつ屋さんへ。予定は終わってはじめて実行結果となるので、途中の油断は禁物である。帰りの電車は通勤時間帯を避けるので、早めに終了としなければならない。美味しくて、適当な値段で、頼んだものが迅速に出てきて、気持ちよく食事ができること。合格点であった。疲れが出ないうちに食事も終わり歩きも快調。

左側舗道に、<道祖神・馬頭観音>があるはずであったが、来る途中ところどころに道祖神があり、<馬頭観音>と思いこんでいたのでどうやら道祖神の中に<馬頭観音>があったようである。観音様の頭の上までゆっくり眺めなかった。<諏訪神社>。

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ここの椎の木が元気で立派であった。囲いがあり幹に触ることができなかった。さてここから先で国道1号線と分れるのであるが、それがどこなのか。途中で地元の人に尋ねる。どうやらこのまま進めばよいらしい。私よりも、他の仲間の尋ねた人のほうが詳しい説明であった。「これから下る道場坂は地元では遊行寺坂と言っている。右手に一里塚跡の案内板があり、左手にもう一つ別の諏訪神社があり、その向かいに遊行寺があり、そのお寺はひろいので、小栗判官・照手姫の墓は、遊行寺の中にあるかもしれない。ゆっくりお寺を散策するといいですよ。」との説明。言われた通りであった。尋ねかたも上手だったのであろう。

舗道には色々の種類の花々が開花して歩く者の目を楽しませてくれる。八重桜も風に揺れている。仲間に教えてもらった<べにばなときわまんさく>の木も桜に負けてはいない。白の花もあり、緑の葉と同化して白に近い薄みどりなのも品がある。楽しんで歩いているがなかなか一里塚跡がない。右手前方に木々が密集している。あそこが遊行寺であろう。とすると一理塚跡は見落としたか。「あった!」突然現れた。

安心して<遊行寺>へ向かう。道路左側にもう一つの<諏訪神社>の旗が見えるが、<遊行寺>を先とする。右手に関所のような門がある。藤澤山無量光院清浄光寺が正式な名前であるらしい。この藤澤山の号からこの地域が藤沢になったという。一遍上人の開いた時宗の総本山である。境内の一本の八重桜が満開である。咲く花に優劣をつけるのは申し訳ないが、八重桜は可愛いいのであるが色が強かったり、ボテボテッとしていたりする。ところが、この八重桜は色も淡い淡いピンクで一つ一つ花も小ぶりで、柔らかく優雅に寄り添って咲き、それが全体に木をおおっているのである。三人とも「お見事!」と感嘆する。今年はこの一本に出会えて満足である。

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仲間の一人はすでに藤沢から平塚まで歩いていて、この<遊行寺>から始めたらしい。大イチョウの木を見て思い出したようである。樹齢660年、30m以上あったらしいが台風で一部分折れてしまったらしい。<小栗判官・照手姫の墓>は本では点で示されているので<遊行寺>の中とは思わなかったのであろう。探さなかったらしい。小栗判官墓所入口と彫られた石柱があった。

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行く途中幾つか武家関係の墓や説明がある。お墓の中にも枝垂れ桜がある。枝垂れ桜は、桜の中でも儚い寂しさがある。墓所の上に小栗堂があり、その正面側面に<小栗判官公墓所へ>の表札と板戸の門があり片側が開いている。

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そこを入り狭いお堂の脇を入っていくと、お堂の裏側に庭のようなあつらいになっているところに、小栗判官、照手姫、荒馬の鬼鹿毛のお墓がある。お墓の後ろにはツツジが咲いており、説教伝説としての一つの空間を作り上げている。

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歌舞伎にも「當世流小栗判官」「スーパー歌舞伎『オグリ』」として上演されている。

「貴種流離譚(きしゅりゅりたん)といわれるもので、高貴な生まれの男女、小栗判官と照手姫が、諸国を流浪し、すれ違い、大変な辛苦の末に熊野権現の霊験により、ようやく結ばれるという大ロマンです。」「第三幕では、照手姫が足腰のたたなくなった小栗判官を車(木の箱に木車のついたもので手綱で引っ張るようなもの)にのせて熊野の湯に向かい、そこで出会った遊行上人の奇特で元の体に戻り、念願の敵を討ちます。」(「猿之助の歌舞伎講座」三代目猿之助著)

照手姫建立厄除け地蔵尊もあり、照手姫は小栗判官の死後ここで尼となり、判官と家来の菩提を弔ったとされている。

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境内にもどり散策する。放生池そばにも桜があり、池の面は散った花びらが細い花筏を作っている。驚いたことに金色の鯉が二回水面からジャンプしたのである。仲間たちと、あれは、花びらを虫だと思ったのではないかと想像する。きっと今頃は、俺としたことが二回もジャンプしてしまって、一回で気が付きそうなものをエネルギーを使ってしまったと後悔しているよ、などと勝手に鯉の吹き出しを作る。その庭の外門が古そうで、門の前の立派な蘇鉄に朱色を少し薄くした実がなっていた。その回りにフェルト布のような薄茶のギザギザしたものが実を囲っていた。

境内に上るもう一つの石段は急であるが両脇に桜が咲き上から見ていても美しい。しかしこの階段を下りると浅間神社まで多少遠くなるので、その元気はない。ゆっくり散策できたのも、あそこで昼食にしたのが良かったと話す。<浅間神社>は上までどうしようかと迷ったが、上ることにする。高いので木々がなければ見晴しもよかったであろうが、森の鎮守の神様にそれを言うのは失礼である。

そこからJRの藤沢駅に向かう。藤沢駅から遊行寺まで20分くらいあるので駅から旧東海道まではたどり着くのは半信半疑だったようである。駅から旧東海道までをもう少し詳しく調べておくほうが良いかもしれない。

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