東海道 藤沢から茅ヶ崎

旧東海道歩きも、気ままさゆえに自分でもどこまで歩いたか混乱している。飛んでいるから間を埋めなくてはならない。というわけで一人、藤沢から平塚までの予定であったが、茅ケ崎までとなった。

藤沢での旧東海道を見つけるのが大変であった。戸塚から藤沢までの時、遊行寺の後、浅間神社に寄って一応おしまいとしてJR藤沢駅に向かったため、遊行寺の出口を参道の階段ではない方の黒門から出ていたので遊行寺橋を渡っていなかった。地図に<遊行寺橋>とあるのに、実際にある<藤沢橋>を名前が変わったのだと勘違いしたのである。地図には<藤沢橋>の名前がなかったのである。北側にもう一本道があり迷ったが<藤沢橋>を背にして進んでしまった。そろそろ右手に<藤沢公民館>が出てきてもいいはずだが出て来ない。人に訪ねると道が違うと思うとのこと。仕方がない。迷ったところまで戻るしかない。<藤沢橋>を右手に北に向かうと旧東海道の案内板がある。完全に間違っていた。さらに進むと右手奥に赤い<遊行寺橋>があった。

昨年はこの参道の階段から見事な桜を眺め見降ろしたのである。遊行寺の境内まで上がる。あの美しかった八重桜も、今年は終わりを告げていた。その分、銀杏の木が青々と元気な姿を誇っている。一度この銀杏の秋の色も堪能してみたいものである。

心機一転、階段を下り、旧東海道に向かう。出てきました。右手奥に<藤沢公民館>が。この辺りが藤沢宿である。<蒔田(まいた)本陣跡>の標識、左手の消防署の前に<坂戸町問屋場跡>の標識。<問屋場(といやば)>というのは、幕府の公用の役人の旅のお世話をする事務所である。人足や馬を手配したり宿を世話したりと役人相手の仕事なので気を使い大変だったようである。

消防署の裏手の常光寺のさらに裏手に<弁慶塚>があるというのである。結構探すのにてまどった。裏とあったので、お寺の脇からまわり裏から入ったが、本堂側に降りてきたところにあった。文章と文庫本の地図で探すので距離感が予想になる。この本の編纂にかかわった方の一人が、保土ヶ谷駅近くのお蕎麦屋さんのご主人で、偶然そのお蕎麦屋さんに寄り、その事実を知る。「この本だけで歩いてるの。」と驚かれ、それからは手に入ればパンフレットなども使うが、私たち仲間はこの文庫本が好きである。「迷って地元の人に聞くのも旅を感じるよね。」「言葉と会話の理解の幅も感じるし。」古いことは年配者がよく知っているが、道のみに関しては若い人のほうが、簡潔に説明してくれる事もある。

東海道にもどり、先の右手奥に、源義経を祀った<白旗神社>がある。白旗神社に向かう前に<義経首洗い井戸>があり、奥州で亡くなった義経の首が首実検のため鎌倉に送られ、そのあと片瀬の浜に捨てられたと「吾妻鑑」にある。その首が境川をのぼりこの地に着き、里人によってこの井戸で首を洗ったと伝えられている。

<白旗神社>には、その石に触ると健康で病気にならないというに<弁慶の力石>があり、芭蕉句碑もある。「くたびれて宿かる比(ころ)や藤の花」。藤はまだであったが、藤が風にゆれているのを想像したら、くたびれたというため息が似合っている。ただし句碑の上の藤棚には「弁慶藤」とあった。元気がよさそうな藤である。白旗神社のお祭りには、義経と弁慶の二基の神輿が出るとのこと。

<白旗神社>から東海道にもどり、道路の反対側の奥に<永勝寺>があり、このお寺には、<飯盛女>と呼ばれていた旅籠で給仕と同時に遊女の側面をもっていた女性たちのお墓もあった。彼女たちを抱えていた旅籠小松屋が、39人の墓を建て供養したのである。悲しいかなこのように供養されたのは珍しいことである。東京には、投げ込み寺というのもある。

小田急線の「藤沢本町駅」を右手に進むと、道路左手に<見附跡>がある。道路左右に史跡があるので、横断歩道を右に左に渡り歩きつつ進まなければならない。<見附>があれば、藤沢宿のはずれである。引地川に架かる引地橋を渡りひたすら西に歩く。このあたりは国道一号線と旧東海道が一緒なのであるが、のちに気が付くが、この引地橋手前で国道一号線を外れて旧東海道を歩く部分があった。それを見逃していた。このうかつさは、大磯から二宮での歩きで経験する。

西へひたすら進むと、東海道と大山詣でへの道とに分かれる分岐点にぶつかる。小さな<四谷不動>の堂があり、右手には大山道に向かう道で石の大鳥居が立っている。この鳥居を潜って、大山詣でに向かうのである。関宿の伊勢路への鳥居を思い出す。

大山も行ってみたいとおもうが、こちらは東海道を進む。そして<一里塚跡>がある。JR辻堂駅と並ぶ位置である。松並木が少し残っている。<茅ヶ崎一里塚>に至る。一里約4キロ。街道の両側に盛り土をして、その上にエノキなどが植えられた。この木の木陰で行程の検討をつけホッと一息ついたのである。近頃では私たちも、この一里塚の跡などで行程を考える。藤沢から茅ヶ崎で約8キロである。

今回は平塚まで行く予定であったが、道を間違え時間的ロスもあったので茅ケ崎までとしてJR茅ヶ崎駅に向かう。折角であるから、志ん朝さんの『大山詣り』のDVDを楽しむことにする。