三津五郎さんの<眼>

歌舞伎舞台に立てなくても、三津五郎さんの<眼>で後輩たちの指導をし続けていただきたかった。療養生活が長くなることは予想できた。むしろ、ゆっくり療養されて欲しいと願っていた。

歌舞伎の舞台に立つとどうしても長期間となり健康管理も大変なので、時々漏れ聞くお元気そうな情報にこのまま<眼>だけは光らせていただければ充分と思っていた。

北陸新幹線の開通する前にと、一月末に福井まで足を伸ばし、帰りに松本城に寄ってきた。『坂東三津五郎 粋な城めぐり』を、行く前はバタバタして読み返していなかったので、帰ってから開きなるほどと楽しみ、月見櫓から眺めたお堀の風景などを思い出していた。

そして、つい先頃、三津五郎さんのお城に関する番組が放映された。三津五郎さんの生真面目さのうかがえるお城紹介であった。三津五郎さんが好きなことをされるだけの体調になられたのだと少し安心したのである。

視ていてくれるだけで、次世代の役者さんはどんなに心強かったであろう。

観客として、もちろん三津五郎さんの舞台復帰は望むところであるが、それが駄目であれば、三津五郎さんの<眼>があればそれで充分であった。無念である。 合掌。

 

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