2016年 新春歌舞伎総集編(2)

国立劇場『通し狂言 小春穏沖津白波(こはるなぎおきつしらなみ)ー小狐礼三ー』

今年は河竹黙阿弥さんの生誕200年に当たるそうで、2016年から200年を引くと1816年がお生まれです。亡くなられたのが1893年(78歳)。

歌舞伎座『直侍』、新橋演舞場『弁天小僧』、浅草公会堂『三人?三』『切られ与三』も黙阿弥さんの作品である。

『小春穏沖津白波』は1864年(49歳)初演である。<白波>というのは盗賊を主人公にしていて、この作品では日本駄右衛門、船玉のお才、小狐礼三の三人の盗賊が活躍するが、狐の妖術を使う小狐礼三の活躍が多い。

話しは芝居をみていれば判るようになっている。基本としてお家騒動があって、その主人のほうを助けるという話しである。武家社会の騒動を庶民の盗賊が主人公になって助けるのである。武士よりも盗賊のほうが格好良いということになる。

武家の月本家の若殿は傾城花月という女性がありながら、美しい姫君に出会うと口説いてしまうというタイプである。そんな若殿・数馬之助であるから、家来に乗っ取りをしかけられてしまう。悪人として狙うのはいつものごとく家宝である。家宝の「胡蝶の香合」があちらこちらの手に渡り最後は無事若殿の手もとにもどるのである。

その枠組みの中での、三人の盗賊がどう活躍するかは種明かししないほうが楽しめそうである。そして三人のそれぞれの台詞の聞かせどころは黙阿弥さんならではである。日本駄右衛門のゆとりの菊五郎さん、船玉のお才のどこか妖しく腹の座った時蔵さん、小狐礼三の若いが自信に充ちた菊之助さんとそれぞれ役が生きる台詞である。

船玉お才と小狐礼三の場面ごとでの出会いと探り合いも、それぞれが違う人物に化けていて忍びの者の感じもあって面白い。

狐の妖術というのが、狐であるからだまされるというたぐいの軽いものから、季節を変えてしまえるということもでき、これが舞台転換の楽しさを新春らしい彩にしてくれる。

さらに、外国の方なら「伏見稲荷!」と大喜びするであろう場面での立ち廻りもある。最後は日の出ありと、サービス満点の芝居となった。

亀三郎さん、亀寿さんを筆頭に若手の脇の形がしっかりして、落ち着いてみていられた。頼りない若殿の梅枝さんがじーっとその頼りなさを維持し、それを助けようとする周囲も手堅いし、それを失脚させようとする悪役の亀蔵さんを主に整っている。驚いたのは、若殿の相手、傾城花月の尾上右近さんである。いつの間にそんな手練手管を身につけたのであろうかと思わせる。

芝居のわかりやすさとともに、役の一人一人が特徴を出していてこういう人物なのだというのが良くわかる。狐もよく頑張られていた。

菊五郎劇団ならではのチームワークの良さが、のびのびとした新春を飾る芝居に作り上げられた。

 

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