ドキュメント映画『エトワール』

ドキュメント映画『エトワール』(2000年)は、パリ・オペラ座バレエ団に初めて撮影を許可された映画だと思います。その後『パリ・オペラ座のすべて』(2009年)が公開されましたが、こちらは映画館で観ていて、練習風景や、バレエ団の組織としての運営や企画、団員との話し合い、団員の年金のことなど、知られざる様子がわかりました。そして、振付師や演出家の要求を次々クリアしていく過程もすばらしかったのです。

『エトワール』は、オペラ座バレエ団の5階級のトップがエトワールで、エトワールを中心に、その他の階級の団員の様子やコメントなど、団員の練習と本番が中心に撮られています。

パリ・オペラ座バレエ学校に世界中から試験を受けに来て、受かったものは一年間訓練をうけ団員への試験を受け、晴れて団員となります。とにかく競争に勝った者が残れる場所なのです。

バレエの踊れる年齢には限度があり、バレエ団の定年は40歳で、年金が貰えるようになっているようです。定年で退団する人も、この世界しか知らなくて他の世界のことは何もわからないが、まだやり直せる年齢よ、思っていたほど淋しくないわというかたもいました。

エトワールから指導する側になった人は、辞めて練習から解放され好きに生活していたら、半年くらいで筋肉が緩んであちこちが痛くなって関節炎もひどくなって、急に肉体を解放してはダメよともいわれています。年齢からくる骨の痛みは周りの筋肉を鍛えてカバーするのと同じように、毎日練習するのは、素晴らしい跳躍やステップ、柔軟性を表現してくれるその筋力を落とさないためでもあるのでしょう。

とにかくどの階級の団員も、単調な日常で、練習と舞台だけといってもよいような感じで、出演者に選ばれなければ誰かが故障したときの代役となるのですが、踊れることが生きているあかしとばかりにしっかりノートして自主練習し、踊ることしか自分のなかにはないといった人達です。それはそうだと思います。小さい頃から、このために遊びたいのも我慢して練習に励んできたのですから。踊ることが大好きな人達なのです。

パリ・オペラ座バレエ団は古典も新作も公演するので、イリ・キリアンさんやモリス・ベジャールさんも振り付けに来ていまして、こうして、ああしてというのをすぐ表現できる身体なのには驚きます。そして見ていてその完成度が楽しいのです。

実際の舞台では、衣装から見える素肌からは汗がにじみ出ていて、舞台から引っ込むと倒れてしまう団員もいます。トウ―シューズを履く前に足の豆にテーピングをして化膿止めに抗生物質を飲んだりと一回の短い出でも、踊ることが全てなのです。

何分か何秒のために長い練習時間があるのです。

エトワールも、エトワールになったからと言って上達するわけではなく同じ状態でエトワールになるので、その責任の重圧のほうが大きい場合もあり、今までの競争なり練習はそのための技術と精神力の両方のバランスを取って来た時間でもあるといい、バランスのとりかたが難しいと語ります。

同じメンバーでいる長い年月は、人によっては周りはライバルであり仲間であり、お互い深くは入り込まないし、孤独でもあり、時にはお互いがわかっているので信頼できる部分もあり特殊な狭い世界をかたち作っているとのこと。

そうした言葉を消してしまうほど、踊っているエトワールは、やはりエトワールの輝きに満ちていて映像であっても観る者を魅了し感動させます。

調べてみたら『エトワール』の後の『パリ・オペラ座のすべて』にも出てくる団員のかたも沢山いました。

二コラル・ル・リッシュ、マリ=アニエス・ジロー、オーレリ・デュポン、アニエス・ハテステュ、クレールマリ・オスタ、マニュエル・ルグリ、ウィルリード・モリスなど。

『パリ・オペラ座のすべて』は記憶部分が少なくなっており、『エトワール』から9年ほど経っているのでその変化を知りたく、もう一回みたいのですが、この時期ですからあきらめます。

『エトワール』は今年最後の映画の一本とします。凄く力を貰える映画でした。

来年の2017年には新しいドキュメント映画『パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち』が公開予定です。

 

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