歌舞伎関係イベント

かなり時間が過ぎてしまったのですが、歌舞伎関係のイベントを二つ。一つは早稲田大学演劇博物館での「第80回逍遥祭 シェイクスピアの上演と翻訳」で、歌舞伎俳優の中村京蔵さんのお話と朗読で、もう一つは、歌舞伎学会の企画講演会「演劇史の証言 山川静夫氏に聞く」です。

「第80回逍遥祭 シェイクスピアの上演と翻訳」(早稲田大学演劇博物館主催)

 歌舞伎俳優の中村京蔵さんは、蜷川幸雄さんの『NINAGAWA・マクベス』の魔女を演じてこられ、亡くなられた蜷川さんの追悼公演で海外を回られ、埼玉での追悼公演を目前にしておられました。蜷川さんのマクベスは観ていないのです。残念ながら埼玉の公演も観れませんでした。

蜷川さんの練習には何時くらいに入ればよいか経験者に聴いて二時間前くらいと教えられその時間に行ったところ、蜷川さんがもう来られていて、ほんとどの方が入られていて慌てましたと話されていました。観ていないためお話を聞いても想像圏内を遠くまで広げられませんが、先に魔女役をされた嵐徳三郎さんを踏襲してとのことで、蜷川さんから物が飛んでくることはなかったそうです。

聞き手が児玉竜一さんで、京蔵さんしっかり調べられていて小田島雄志さんと坪内逍遥さんの訳の違いなども話されました。こちらの勉強不足で、その違いについての面白さを上手く書けません。

その後、坪内逍遥訳の『ヴェニスの商人』法廷の場の朗読がありました。これには、尾上右近さんと江添皓三郎さんが加わわられました。

シィロックを中村京蔵さんが、アントーニオほかを江添皓三郎さんが、ポーシャを尾上右近さんで、尾上右近さんは女方ということになります。聴きごたえがありました。その前に、映画『ヴェニスの商人』を見ていましたので法廷の場の展開は楽しみでした。

シャイロック(アル・パチーノ)、アントーニオ(ジェレミー・アイアンズ)、ポーシャ(リン・コリンズ)ですが、映画の映像も飛んでしまう濃い朗読でした。かなり間をとるなと思っていましたら、右近さんが、次は京蔵さんと思い京蔵さんならではの間かなと思ったら自分が勘違いしていたとの朗読後の報告がありました。いやいや、京蔵さんも目くばせすることもなく落ち着かれていて、右近さんも表情が変わらず続けられましたので、大きな問題なしです。

児玉さんも言われましたが、シャイロックは財産を没収されるだけでなく、宗教もユダヤ教からキリスト教に改宗させられ映画を見てそのことが新たな驚きでした。シェイクスピアさんはやはりただ者ではありません。『もうひとりのシェイクスピア』という面白い映画もありました。シェイクスピアさんとのお付き合いはゆっくりとです。

京蔵さんは、京屋の三姉妹(京蔵、京妙、京紫)のお一人でもあられるのですが、そのお一人京紫さんが先月亡くなられました。(合掌) 昨年の国立劇場での研修発表会で『仮名手本忠臣蔵』の二段目の格の高い戸無瀬をされていたのが印象的で、若い役者さんたちにとっても早すぎるお別れでした。

京蔵さんは、個人的にも色々な歌舞伎に関する催しをされているようでチラシをいただきました。秀山祭では、『極付 幡随長兵衛』の長兵衛宅の女中およしとして、女房お時、長松をおぶる子分の清兵衛といっしょに花道からでてこられます。

京妙さんは、『再桜遇清水』で、病に苦しむ清玄に薬を与えながら、清玄に殺されてお金を奪われる富岡の後室をされています。

歌舞伎学会の企画講演会「演劇史の証言 山川静夫氏に聞く」は、聞き手が神山彰さんと児玉竜一さんで、お二人が質問されることに即答えられ、二対一でも負けないほどの歌舞伎通で、さらに、役者さんたちの声色もできてしまいますから、楽しくて二時間が短かったです。

山川静夫さんは、静岡浅間神社神主の長男で、神主になるべき勉強をされながら歌舞伎にはまってしまわれ、神主の研修の祝詞がつまらないので、声色で祝詞をしたというのですから極め付きです。

NHKのアナウンサーになられ、アアナウンサーの地方局勤務のお話から紅白のお話、名物アナウンサーのお話などまで巾が広いのです。ラジオで劇場中継をしていて、担当アナウンサーによって歌舞伎の情感も違ってきたようです。小津安二郎監督の映画にも田中絹代さんが歌舞伎のラジオ中継を聴いていて、かつては聴くだけで歌舞伎がわかったのか凄いなあと思っていましたが、アナウンサーに導かれて鑑賞していたのですね。一度聴いてみたいです。

導かれたといえば、こちらは、NHK衛星第二『山川静夫の華麗なる招待席』で歌舞伎など先導のあとについていったほうですが、衛星放送が始まり、番組編成にゆとりがあり長時間の『山川静夫の華麗なる招待席』(1994年から)が生まれたのだそうで、いや好い時に遭遇しました。今でもこの時に録画したものは観させてもらっています。三階席からの大向うで今も時々お声をききます。「あっ!山川さん来られているな。」とわかりますが、ふっとそう思ってさっと頭から消えるような絶妙な掛け声です。

三階から声をかけると、下に届くまでにわずかな時間差があり一呼吸おくれてしまうとのことで、そんな些細な時間差まで考慮されるのかと驚いてしまいました。アナウンサーという限られた時間を進行されるかたならではです。

2000年には脳梗塞にて失語症になられますが、言われないとわからない弁舌でした。苦言もありました。『勧進帳』の弁慶の引っ込みで手拍子がおこるのはいかがなものか、手拍手の間ではありませんと。

もっと時間があっても愉しませてくださったとおもいますが、著作も沢山ありますので続きはそちらでということで。

『山川静夫の華麗なる招待席』での録画とは別の録画で、『極付 幡随長兵衛』がありました。長兵衛が吉右衛門さんで水野が仁左衛門さんの時で、子分が染五郎さん、松緑さん、松江さん、男女蔵さん、亀寿(改め坂東亀蔵)さん、亀鶴さん、種之助(改め歌昇)さんでした。驚いたのは、児太郎さんが同じ役で大きく変わられていました。柏の前が福助さん。お時が元芝翫さん。

清兵衛が歌六さんで、花道で舞台番にこしかけた坂田金左衛門の吉之丞(吉之助改め)さんが腰かけられる側舞台番でした。京蔵さんは水野側の腰元で、役が敵味方逆転するなど時間がたつと役者さんの役どころの変化もおもしろいものです。

山川静夫さんは、もっと沢山の役の違いをみておられることでしょう。

 

 

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