大衆演劇散見

  • 浅草木馬館から始まった大衆演劇散見は、10劇団は観劇したと思う。大阪は新世界にある朝日劇場がデビューである。『合邦辻閻魔堂』に参ったのでここから移動も面倒なので新世界の朝日劇場にした。劇団名は頭の中で混乱しており調べるのも手間なので記さないこととするのであしからず。座長さんが「数ある大阪の大衆演劇劇場の中でここを選んでくださりありがとうございます。」の挨拶。大阪は大衆演劇の激戦区らしい。災害の影響か、新世界も観光客の人数は減っているように思う。

 

  • 大衆演劇を観て思うには、股旅物は大衆演劇が継承してくれるであろうということである。もう大衆演劇しかないともいえる。まだその形を身体に残していてくれる役者さんが多く残っていてくれるからである。ただ大衆演劇の場合毎日、昼夜芝居の演目が代わることが多いので気に入った芝居にあたるかどうかはわからない。いつも飛び込みなので当って砕けろである。新たな劇団、できれば新たな劇場を目指しての散見である。大衆演劇の劇場を訪ねると名所仏閣とか美術館とはまた違った思わぬ風景と出会う。

 

  • 愛知一宮の妙興寺駅の近くの一宮芸能館SAZANもそうであった。駅から近いらしく駅の反対側には妙興寺がある。無人駅である。駅前には大きなスーパーだけ。まわりには何もない。本当に劇場があるのであろうか。あった。公演しているとのこと。では、妙興寺へ。これがなかなかのお寺さんで、正式には『妙興報恩禅寺』と称し禅寺の修業の道場のためのお寺さんなのだそうであるが山門も大きい。拝観の釈迦三尊像の大日如来像のお顔がすっきりとしている。脇の普賢菩薩と文殊菩薩もいい。考えたら久方ぶりの仏像拝観である。お寺のかたのお話では確か3月から11月までの公開で寒い時期は閉まっているらしい。

 

  • お隣の一宮市博物館にはもっと古い時代の仏像がありますと教えていただいたが、博物館は工事のため閉館していた。残念である。駅近くまでもどろうとして線路を越えたら、和風の大きな建物がありお蕎麦屋さんかと思いきや珈琲専門店であった。周りは何もない。車や自転車が並んでいる。中は広いので、お客さんが良い具合にくつろいでいる。名古屋ならではのモーニングでシナモントーストをつけてもらう。おいしい。棟方志功さんの版画が何か所かにかかっている。野の草花が生けてある。お店の人によると、専門の人が生けにきて、このお花の写真を撮りに来る人もいるらしい。納得。『らんぷ』。チェーン店らしい。経験したことのない土地の様子である。

 

  • 芝居のほうは、これまた挨拶で「今日は午前中風が強かったようですが、私たちは大災害などにならない限りお客様が一人でも開演しますので安心して足をお運びください。」と。誰かさんに嫌味に聴こえそうであるが、その前のことである。これが芸人さんだとおもう。あのかたは、ご自分が大アーティストと思っておられるのであろう。それはさておき、こんな具合に、その土地の面白い風景に出会ってしまうのが醍醐味でもある。

 

  • 昨夜、NHKテレビ『探検バケモン』(再放送・10月31日午前4時02分~)で東京北区の十条銀座商店街と篠原演芸場が紹介されていたが、この十条銀座商店街に行った時、アニメの中の商店街が突然出現したような驚きであった。横浜には小さいがこんなところに商店街がと思う場所が三吉橋通商店街。商店街に入ると上に「歌丸さんありがとう」の横断幕があった。歌丸さんが亡くなられたとき、テレビでこの風景が映されていた。まさかその商店街に立つとは思わなかった。この場でそっと合掌させてもらった。ここに歌丸さんも愛した三吉演芸場がある。

 

  • 劇場の中は様々で、どんな場所であっても役者さんたちは、そこでどうしたらお客さんに楽しんでもらえるか工夫されている。設備の問題、照明の問題、音響の問題などこちらから観ていてもハラハラする時もあるが、それも大衆演劇のご愛嬌となる。家内工業的に、役者さんのおばちゃんが照明をされていたりもする。舞台が近いので、上手い、下手もよくわかる。三度笠一つとっても若いのに綺麗な扱い方をしていたり、やはり、立ち姿に年季が入っているなど一目でわかる。近いだけにそういう怖さもある。

 

  • 何が飛び出すか分からないのも大衆演劇の楽しさでもある。ゲストの役者さんが来ている日は、劇団の人数では出来ないような芝居をされたりするようでもある。名作と言われる芝居も、その芯はとらえつつ笑いを入れ、お客さんが飽きないように工夫し、そこが上手くいくとお見事とおもってしまう。笑いから芯に引き戻す力量がいる。ラストショーがメチャクチャ盛り上がったりする。それらと出会えるかどうかはなんとも保証のかぎりではない。こうだからこう楽しいとは限定できないのである。

 

  • 一回の観劇では、演目も踊りも変わるのでその劇団の特色がわかったことにはならない。大衆演劇が観たいという友人を連れていって、あの踊りがもう一度観たいのだがといわれたが、それがいつ出るのか保証の限りではないと伝える。一緒に行った人はほとんどが値段の安さに驚く。それと、終演後の役者さんによるお見送り(送り出し)。こちらが10劇団ほど観させてもらったのも、お値段と一か月は公演しているからである。もう一度観たいと思っているのは、同性のよしみでお名前をあげさせてもらうと、橘鈴丸座長である。最初女座長とは知らず少し線が細いなとおもったが、踊りの発想がおもしろく、なるほどと思う。女子高校生が好みそうである。大衆演劇はなんでもありでいいと思う。

 

  • 温泉につかってお芝居や舞踏ショーを楽しむなどとは、日本の庶民ならではの文化であろう。ずーっと働き続けて、時々息子さんがここに送って来てくれ、ゆっくりここで一日過ごすことができるのが楽しみであるという方のお話を耳にすることもある。遊びかたが多様化して大衆演劇も大変のようであるが庶民の楽しみの場は元気であってほしい。

 

  • 〔追記〕 思い通り、女座長・橘鈴丸さんを観にいく。武蔵野線の吉川駅から5分。場所がわかれば帰りはもっと近い。駅のこんな近くに温泉がある。よしかわ天然温泉ゆあみ。大衆演劇つき。温泉好きが、大衆演劇の力に負けて温泉にも入らずに退散とはこれいかに。芝居は母もので泣かせてくれる。長い台詞なのにくどいとは思わせない。怒りが情に変わる。舞踏ショーでは、がらりとかわってやさぐれた男(中性的)を現代バージョンでおどる。そう!鈴丸座長のこういう雰囲気見たかったのです。今後の予定で、怖いのをやりますと言ってました。つつつーと引っ張られた。怖いのいいと思う。いつかまたの機会にである。楽しかった。ファイト!

 

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