浅草映画『青春怪談』

映画『青春怪談』(1955年・市川崑監督)は、昭和30年にこんな感覚の映画がコメディータッチで撮られていたのかとそのモダンさに驚かされる。原作は獅子文六さんで『ちんちん電車』を書かれているので浅草の何処がでてくるのか楽しみである。脚本は和田夏十さん。芦川いづみさんの日活入社第一回作品ということである。

芦川いづみさん(新子・シンデレラを短くしたシンディが愛称)は、バレエ学校の先輩である北原三枝さんを慕う後輩役である。北原三枝さん(千春)の男の子ような話し方や性格のさっぱり感が魅力的で、魅かれるシンディの芦川いづみさんが少女のような可憐さで千春に接する。北原三枝さんの日本人離れしたスタイルが、役にピッタリである。二人はレスビアンともとれるが、その辺は勝手にそちらで自由にどうぞ、あなた達の見方に私たちは左右されないはという雰囲気が漂っているのがなかなかである。

千春にはボーイフレンドで美男子の慎一(三橋達也)がいる。慎一は女性にモテるが近づく女性はビジネスのパートナーとして考えていて、千春の男っぽさが気にいっている。千春は父親・鉄也(山村聰)だけで、慎一は母親・蝶子(轟夕起子)だけである。千春と慎一は父と母を結婚させることにするが、その前に千春と慎一が結婚することが得策となり、二人はあっさりと結婚式を決めてしまうのである。

そして、それぞれ父と母を伴い浅草で合流し、二人だけをタクシーに乗せてデートさせる。この時の浅草の待ち合わせ場所が吾妻橋のところである。千春と哲也は吾妻橋側の地下鉄浅草駅(寺院形式)から慎一と蝶子の待つ吾妻橋たもとへ。東武鉄橋がみえる。吾妻橋交差点がしっかり映り、そして対岸のビール工場、タクシーを止めて都電の走る雷門通り東武浅草駅神谷バー地下鉄ビル仁丹塔等が映る。さらに花川戸交番。『昭和浅草映画地図』(中村実男著)を参考に観ているのであるが、旧浅草駅ビルはわからない。他の映画でもこちらが確定できない物は載せていない。

都電がしっかり映っていて獅子文六さんも満足でしょう。こちらも満足です。

鉄也と蝶子が去った後に、慎一に色香で接する芸者・筆駒(嵯峨美智子)が現れる。慎一は女性の色香には全然興味がなく、千春も気にしないで用事があるからと帰ってしまう。そんな千春を見て芸者は千春が男っぽくて私も好きだわという。女でも惚れてしまうという千春のさばさば感を言い当てている。この時代に慎一と千春を登場させたのが新しい世代、『青春怪談』である。

昭和30年の浅草の映像も魅力的であるが、鉄也と蝶子が向かった先が向島百花園なのである。映画の中で向島百花園を観るのは初めてと思う。それもたっぷりなのである。鉄也は蝶子の気持ちを知っていながらなかなか結婚を承諾しないのである。しかし乙女のような蝶子の勝ちとなる。

ビジネスのパートナーであるバーのマダム・トミ子(山根寿子)は慎一をあきらめることなく嫉妬が爆発する。その事で、千春とシンディの関係が面白おかしく新聞に載ってしまう。千春は一生の仕事としているバレエの主役の座を失ってしまい、シンディが喀血。シンディは自分の思いこみはこれで全て身体から出てしまったからと千春に告げる。そのことから千春は自分のこれかたの生き方を決め、慎一に伝える。慎一は納得する。理想的なカップルである。

おネエ的アクセントもある慎一の合理主義は、ビジネスから日常生活にまで及んでいる。利益に対してもきちんと計算するが、相手の経営が悪ければ賃貸料も下げるのである。強欲ではないところがいい。

慎一と金銭的に接する宇野重吉さんやバーの内装を語る滝沢修さんの台詞の操り方が面白い。壁に耳ありのばあやの北林谷栄さん、バレエ教師の三戸部スエさん、鉄也の兄に千田是也さんなど脇役怪談である。撮影は『愛のお荷物』の峰重義さん。

驚いたことに新東宝でも同じ年に獅子文六さん原作の同じ映画を撮っていた。新東宝のも観てみたいものである。慎一(宇津井健)、母・蝶子(高峰三枝子)、千春(安西郷子)、父・鉄也(上原謙)、新子(江畑絢子)、トミ子(越路吹雪)、筆駒(築紫あけみ)

追記: アマゾンの偽メールが横行しているようですのでご注意を!

追記2: フードバンクボックスを設置してくれているスーパーがある。少し気持ちを伝えられるかなと利用させてもらっている。

追記3: これから検察庁はどう動いてくれるのでしょうか。なんだやはり現政権と癒着していたのかでは、新型コロナと闘う意欲が全て怨みと怒りに倍増です。← 有志の弁護士ら662人、安倍首相を刑事告発 「桜を見る会」を。その他、晴れない私利私欲の疑惑。

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