映画『ぶっつけ本番』『SCOOP!』

撮影監督 高村倉太郎』(高村倉太郎著)によると、高村倉太郎さんは、中学生で写真にのめり込み、東京写真学校に進む。学校に松竹大船撮影所から募集があった。

昭和10年(1935年)映画法ができ、映画を上映する際、文化映画とニュース映画を併映することになる。国策の始まりである。松竹にも文化映画部ができて、昭和14年(1939年)に高村さんは、大船撮影所文化映画部所属となる。劇映画と文化映画の撮影助手として撮影にたずさわる。

ニュース映画会社は日本ニュース映画会社統合され、国策強化へと進むのである。高村さんも昭和16年(1941年)末そちらに呼ばれそちらに移るが昭和17年2月に入隊がきまる。昭和21年(1946年)復員して松竹大船撮影所に復職する。

高村さんは、ニュース映画には携わらなかったが、その経過がわかった。ニュース映画にたずさわり、戦争に行き復員して再びニュース映画に闘志を燃やす主人公にした映画が『ぶっつけ本番』(1958年・監督・佐伯幸三)である。主人公役はフランキー堺さん(松木徹夫)で、21年に復員する。このニュース・カメラマンには松井久弥さんというモデルがあるらしい。

松木はやっと再びカメラ撮影ができるようになり、事件が起きれば飛び出していく。ただ生活は貧しく、それを支えるのが妻・久美子(淡路恵子)である。次から次へと事件が起こり松木はスクープを撮るため、色々な手段を用いる。仲間の背中に乗っかて映すなどは朝飯前である。

この映画は録画してあったもので、こんな面白い映画があったのかと再度見る予定にしていたら急に録画器機を取り替えることとなり一度しか観れなくて細かいところは曖昧である。松木がかかわった歴史的な事件を列挙できないのが残念である。

殺人事件で捕まった犯人が現場検証に姿を現わすというので、その犯人の姿を撮るため、松木は警察の目をかいくぐって近づき犯人を撮ることができるのである。その場面が、後に観た映画『SCOOP!』にも同じような場面が出てきたのである。そのことは後にする。

映画ニュースは映画の上映の前に上映され、テレビの出現で、その伝達のスピード感に遅れがでてくる。後輩の原(仲代達矢)も松木に申し訳ないという気持ちを持ちつつテレビのほうに移ってしまう。それでも、松木は好い映像を撮りたいと頑張るのである。復員してきた父親とその家族の再会を駅のホームで撮ろうとする。ところが同じホーム上ではその感動的な場面が上手く入らない。松木はホーム下の線路に下りてカメラをかまえる。そこへ貨物車が入ってきて松木は亡くなってしまう。

亡き松木を讃える賞の授賞式があり、妻の久美子が亡き夫の代わりに出席する。松木は地味な仕事で、それを心から讃えてくれたのはかつての仲間の原たちであった。

「ドラマよりドキュメンタリーや文化映画のほうが、臨機応変に対応しなければいけないからですか。」の質問に対し、高村倉太郎さんは、次のように答えられている。「要するに劇映画の場合はある程度状況をつくれるわけですよね。文化映画っていうのは、相手によってはこっちが考えていないような悪条件のときもあるわけです。、、、「これじゃ写りません」では済まない。絶対ちゃんと写していかなきゃいけないから、その方法をいろいろ考えるわけです。」

ニュース映画となれば、ぶっつけ本番度はさらに増したことであろう。

映画『SCOOP!』(2016年・大根仁監督)は、フリーの中年パパラッチが主人公である。こちらは決定的瞬間を連続写真でとらえる。芸能人や有名人の個人的生活の一部を待ち伏せや隠し撮りなどをして雑誌社に売るのである。映画『盗映1/250秒』(1986年・原田眞人監督)のリメイクで、こちらは観ていない。

中年パパラッチ(都城静)が福山雅治さんでその下で指導される雑誌「scoop!」新人担当記者(行川野火)が二階堂ふみさん、何かと情報をくれるチャラ源がリリー・フランキーさんである。

静(しずか)はかつては優秀なカメラマンだったようであるが、今はあくどく私生活をあばくスクープ写真を追い駈けている。それが雑誌「scoop!」の売り上げを助けている。そんな時、女性連続殺人犯の現場検証があり今の犯人の顔写真を撮ることになる。『ぶっつけ本番』でも悪戦苦闘していたので、静がどう作戦を立てて見せてくれるのか楽しみであった。作戦は成功するが、結果的には野火に犯人の顔を撮らせるのである。

チャラ源はクスリをやっていてチャラチャラとしているようで腕っぷしは強い。静と野火(のび)をハングレから救ったりもするが、ついにクスリによって制御能力がなくなり静に電話してくる。格好いい写真を撮ってくれと。

静は野火を乗せて車を走らせる。チャラ源はすでに人を殺し、自分の娘を連れ、クスリで人格が無くなっている。静は何んとかチャラ源の気をそらし娘を安全な場所に行かせる。このあたりのチャラ源と静のやり取りは上手く静があしらうだろうと期待してしまうが思いがけない結果となる。

野火は最後の一瞬をカメラにおさめる。その写真は、静がカメラマンになるきっかけとなったロバート・キャパの写真「崩れ落ちる兵士」を思わせる。静の上司でもあり、静の元パートナーでもある定子(吉田羊)が、最後に愛された人がこの事件の記事を書くべきだと野火に記事を書かせる。

定子や、かつて一緒に仕事をした馬場(滝藤賢一)が、違う立場で静のカメラマンとしての生き方を受けとめることによってこちらも納得できるのである。静とチャラ源の関係。そして野火との愛も軸としてあるが、どうもそこが弱い。静は、カメラは素人である野火を通して自分には撮れない新鮮な写真を託したのであろうが、そこも弱かった。野火のどうしようどうしようという動揺から恐怖感にいってそこから静の自分に発信しているプロへのプロセスを受け取る過程の描き方にもう少し強弱が欲しかった。

おそらく野火が記事を書いて「写真・都城静」と書き残すところにそれが現れているのかもしれないが、リリー・フランキーさんの演技を押さえる効果までにいたらなかった。

殺人事件の犯人の現場検証のスクープねらいの成功で、映画『ぶっつけ本番』と映画『SCOOP!』がつながり、『撮影監督 高村倉太郎』で、ニュース映画の成立と劇映画ではない映像カメラマンと写真カメラマンのぶっつけ本番度を感じた次第である。

追記: コロナ専門家会議の議事録を作成しないのだそうである。価値あるものではないということなのであろうか。これから先の検証に凄く役立つものだと思いますけど。未知との闘いのあかし、残して下さいよ。

追記2: 霞が関のかなりの人々は億の0の数に対して軽いのではないかと邪推してしまう。1億は100000000である。(間違ってないでしょうね。緊張します。)税金は誰のものでしょう。← 感染症拡大により大きな影響を受けた事業者に持続化給付金(パチパチパチ!)の委託過程に疑問(?) 

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