浅草映画『三羽烏三代記』

久方ぶりの浅草映画である。人間関係やストーリーを理解しつつ、浅草を見つけていくのは楽しい鑑賞である。『三羽烏三代記』(1959年・昭和34年・番匠義彰監督)も『昭和浅草映画地図』(中村実男著)によると16か所も浅草風景が映像に出てくるということなので力がはいる。

三羽烏三代とは、初代が、上原謙さん、佐野周二さん、佐分利信さん。二代目が、佐田啓二さん、高橋貞二さん、大木実さん(鶴田浩二さんが抜けて大木実さんに代わる)。三代目が、小坂一也さん、三上真一さん、山本豊三さんということである。

初代にからむ女優が、水戸光子、三宅邦子さん、高峰三枝子さん。二代目には、岡田茉莉子さん、小山明子さん、高千穂ひづるさん。三代目には、九条英子さん、牧紀子さん、桑野みゆきさん。その他、津川雅彦さん、十朱幸代さん、宮口清二さん、渡辺文雄さん、永井達雄さん、浦辺粂子さんらオールスターの出演である。それもそのはず、松竹3千本記念作品とある。

出てくる主な家としては、浅草の老舗のせんべい屋さん(佐野周二、三宅邦子、小山明子、下宿人・高橋貞二)、お茶漬け屋(高峰三枝子、牧紀子)、高見家(大木実、高千穂ひづる、下宿人・小坂一也)で、お茶漬け屋と高見家には特に人が集まる。そしておせんべい屋には店員として雇われた桑野みゆきさんが実は教祖様の孫ということで、探偵の高橋貞二さん、新聞記者の佐田啓二さんがからみ、三代目たちは、同年代の遊び仲間としてにぎやかに楽しみ、町内会の飲み食いに会費を使う役員を懲らしめる。

夫婦関係、恋人関係、友人関係が交差して最後はそれぞれ落ち着くところにといった展開である。作品として軽い娯楽映画というところであるが、これだけの登場人物を人間関係を簡潔に上手く動かしている。

映画の出だしの高橋貞二さんが国際劇場で偵察しているのは、清川虹子さんと若い男性。舞台ではSKDのラインダンスが。舞台に見とれているわけにはいかない。清川虹子さんが連れの若い男性と劇場を後にする。国際通りから観音堂の前に移動。清川虹子さんは夫にやきもちを焼かせるために息子を若い恋人にしてのデート戦略であった。そこへ夫のトニー谷さんが出現。探偵の高橋貞二さんはな~んだとなる。

昭和34年であるから観音堂前もようすが違う。人は少なく大きな灯籠があって、ベンチがある。恋人の小山明子さんが登場しておせんべい談義。座るのが石橋を背にしたベンチ。宝蔵門(仁王門)もまだない。再建されたのは1964年(昭和39年)である。そのため征清軍凱旋記念塔がある。

今回、石橋について調べたら、現存する都内最古の石橋だそうで、元和4年(1618年)浅草に東照宮(現存しない)が造営された際、参詣のための神橋として造られたものだった。寄進者は徳川家康の娘の振姫(ふりひめ)の婿・紀伊国若山藩主浅野長晟(あさのながあきら)とある。

浅草に東照宮があったのだ。三峰社はありました。埼玉の秩父まで参詣に行くのはたいへんだったからでしょう。さて、浅野家となるとやはり気になります。浅野長晟はその後、安芸広島藩主になり浅野家宗家。赤穂浅野家は別家で、赤穂事件のとき浅野内匠頭(長矩)の弟・浅野大学(長広)はこの広島浅野宗家に預けられたのである。浅草寺の石橋が浅野家につながるとは面白い発見でした。

『勘九郎ぶらり旅~因果はめぐる歌舞伎の不思議~』の本に、大河ドラマ『元禄繚乱』で赤穂城を去る場面は実際に赤穂で撮ったと言う。こちらも行った場所なのでさっそくDVDをレンタルしてその周辺と討ち入りあたりを観た。当時内蔵助崩し過ぎと観たいと思わなかったのであるが、勘九郎(勘三郎)さんの大石内蔵助なかなか良かった。なるほどであった。

さて宝蔵門の本堂側に大わらじが奉納されているが、大わらじは魔除けなのだそうである。どうしてかなとおもったら、ここにはこんな大きなわらじを履くおおきなものがいるというアピールなのだそうで、高知県では大きなわらじの半分まで作ったものをかかげるところもあるようだ。半分というのが面白い。何かいわれがあるのか。日本では履物をぬいで家の中に入るが、衛生面では上首尾のような気がする。

映画のほうにもどると、当時の隅田公園が『青春サイクリング』の歌にあう風景だった。三代目が三人で小坂一也さんの歌を歌いながらサイクリングしているのである。サイクリング、サイクリング、ヤッホー、ヤッホー。

「首都高の建設で破壊される以前の隅田公園を撮った最上の映像」「川沿いの遊歩道、歩道、車道、芝生帯など、隅田公園の様子がよくわかる映像である。ただし、三列ある芝生帯の桜はまだ若木。植え替えられて間もない。」(『昭和浅草映画地図』)隅田川沿いに松屋や東武鉄橋などのお馴染みの風景画みえる。映像で見ていても気分が清々しくなる風景である。

1959年(昭和34年)代に活躍する松竹の俳優さんと浅草の風景を確かめられる映画でもあった。

追記: 『仮設の映画館』でドキュメンタリー映画『精神0』を観たいのであるが行きつけないのである。インターネットで行きつくというのも身体を動かすよりも困難な場合がある。新しい仮設の生活も大変である。

追記2: 検察庁法改正に抗議します。 ← 与党改正案に対し

追記3: 想田和弘監督のドキュメンタリー映画『選挙』を観ました。この映画から河井議員夫婦が選挙戦にどれだけお金をつぎ込んだか想像ができました。法定以上の金額を払ってでもウグイス嬢を確保したいかなど。観察映画手法面白い。

追記4: 「黒川氏の定年延長議事録」で検索しましたら「無し」と。関心のある方検索してみてください。こちらは、届くはずの10万円をあてにして浅草関連映画の購入したDVDの到着を楽しみに待って巣ごもりしているのですが、待ちくたびれて検索してしまった。頭痛がしてきます。

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