ひとこと・映画『ラスト・クリスマス』と歌舞伎『傾城反魂香』

今年のクリスマスソングは映画『ラスト・クリスマス』(2019年・ポール・フェイグ監督)でエミリア・クラークが歌う、ワム!の「ラスト・クリスマス」である。自分の居場所を探しあぐねてあたふたとしていた女性が一人の男性の登場で彼を探すうちに自分の居場所をみつけるというヒューマンラブコメディーである。

意味深なワム!の「ラスト・クリスマス」の歌をこんな感じで歌わないでというかたもおられるであうが、映画の主人公が明るく歌える自分をつかんでの歌である。そこがいい。

映画の原案・脚本がエマ・トンプソンである。

歌舞伎座の『傾城反魂香(けいせいはんごんこう)』。主人公又平も居場所がなかったひとりである。戯作者になるまで近松門左衛門さんも居場所が無かったのかもしれない。心中物の登場人物もそうである。今回の作品は奇跡によって又平は自分の居場所を確保する。勘九郎さんの又平が若さにその喜びがあふれていた。女房おとくの猿之助さんが 白鸚さんの又平の時よりも一層しっかり者の恋女房にうつる。女形としての手が美しい。

勘九郎さんの又平をみていると、八十助時代の三津五郎さんの小柄な身体で喜ぶ又平を思い出した。この方が出れば勘三郎さんも浮かんで、又平の嬉しさと重なって複雑な涙となった。鶴松さんと團子さんが頑張っている。つながっていくのでしょう。

自分の居場所を見失うことはどんなときもきついものである。

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