えんぴつで書く『奥の細道』から(3)

奥の細道』に関係なく個人的に行った旅から、鹿沼今市日光を通り白河の関へと向かいます。白河の関の手前で『趣味悠々 おくのほそ道を歩こう』から紹介したいところを案内します。

鹿沼は、『奥の細道』には出てきません。『曾良旅日記』にでてくるようです。『奥の細道』と『曾良旅日記』をくらべつつ進むのがいいといわれるかたもいますが、手に負えませんので一つで進みます。

鹿沼       木のまち鹿沼(1)   木のまち鹿沼(2)

今市の杉並木   鬼怒川温泉と日光杉並木

芭蕉のこの旅は歌枕の地を訪ねる、その場に実際に立つというのが目的でもありました。歌枕とは、古くから人々が訪れ和歌を詠み、その土地が和歌に詠いこまれるようになって有名になり名所、旧跡となったところです。芭蕉がこの旅で初めて訪ねた歌枕の地は今市宿に向かう途中にある室の八島です。ここで初めて曾良が登場します。

私たちは同行したのが曾良だっとということを知っていますから最初から曾良が頭にありました。ところが芭蕉は『奥の細道』での曾良の登場も文学的計算に入れていたようにおもわれます。室の八島にある大神神社の由来を曾良に語らせてのさりげない登場です。

日光に関しては記録していませんので、行かれた方も多いのでご自分の旅の中で想像してください。東照宮への参道が今市付近から日光の神橋までの30キロメートルにおよぶ杉並木なのです。日光の東照宮は今のように自由に拝観できませんでした。芭蕉も紹介状を持参していました。

裏見の滝を見、含満ゲ淵(かんまんがふち)から日光を後にします。当時、華厳の滝を眺められるような場所はなく、裏見の滝が歌枕となっていました。

日光で驚いたのは日光駅から小杉放菴記念日光美術館まで歩いた時、途中から霧がたちこめてあっという間に前後が見えなくなったことです。日光の自然は軽く考えてはいけないなと思わせられました。

黒羽では弟子や俳諧仲間も多く長く逗留しています。名所、旧跡も訪れていますが特に雲厳寺には思い入れがあったようです。深川で親交のあった臨川寺・仏頂和尚(ぶっちょうおしょう)が修行し山ごもりしたお寺だったのです。

やっと『趣味悠々 おくのほそ道を歩こう』の映像を参考にさせてもらいます。黛まどかさんは『奥の細道』は、何度も訪れているそうで、芭蕉さんの追っかけかもと言われています。榎木孝明さんは初めてで楽しみにされています。

お二人の一回目の行程です。(NHKの放送画面からです。)

遊行柳→ 境の明神→ 白河の関

一面田んぼの中に立つのが遊行柳歌枕です。黛さんも芭蕉は歌枕を訪れるのが重要な旅の目的の一つであったと。ここで芭蕉が敬愛する西行が詠んだのが「道のべに 清水流るる 柳かげ しばしとてこそ 立ちどまりつれ」です。現在から芭蕉の『奥の細道』までが330年まえで、そこから西行の時代が500年まえ、私たちは800年前まで時間を経過させているんだと黛さんと榎木さんは感慨深げでした。『奥の細道』はかなたの時間空間への架け橋となってくれてもいるわけです。

関東と奥州の境です。このように国境の境をはさみ神社が並んでいてこの二社を境の明神と呼びます。

いよいよ白河の関です。芭蕉がたどり着いたときこの関は忘れ去られていてはっきりしなかったようです。白河神社があり芭蕉が訪れた100年後、白河藩の藩主は松平定信で今の場所を白河の関跡と定めました。その松平定信のお墓が『奥の細道』に出立した場所の近くにあるというのも奇遇です。

遠い過去に、郡山の知人にこの関に連れてきてもらいました。こんな立派な石柱もなく木々におおわれた凄くわびしい寒々とした場所でした。今想うと古関跡にふさわしかったのかもしれません。

③卯の花を かざしに関の晴れ着かな(曾良)

古人はここを通るとき、冠をかぶり直し、衣服を改めなおしたんだそうです。曾良はそんな改まった衣服もないのでせめて卯の花を飾りにして晴れ着としましょうとしています。奥州の地に対する古人の尊厳さが感じられます。

歌枕の場所に立って古人を偲ぶだけではなく、芭蕉は古人の歌に挑戦もしたのではないかと想像していたのですが、和歌や俳句の理解力が乏しく勝手に思っていただけです。

中西進さんの『詩心ー永遠なるものへ』の中で、遊行柳にむかいての芭蕉の句「田一枚植ゑて立ち去るやなぎかな」が「西行を相手とした勝負に、芭蕉は見ごとな一石を打ったのである」とされています。

こちらはそういうことなのかとその分析を新鮮なおもいで心に留める程度の力しかありませんが、和歌や短歌や俳句に親しんでいる方は『詩心ー永遠なるものへ』を直接読まれるともっと深く感じとられることでしょう。

能にも『遊行柳』がありました。広がりますがここで立ち去ることにします。

    

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