上野から四世鶴屋南北終焉の地へ(2)

江東区が出している『史跡を訪ねて』をぱらぱらとめくっていますと歌舞伎役者さん関連のことがありましたので続けることにしました。

そもそも「深川」という地名の由来から。この地を開拓したのは大阪からきた深川八郎右衛門他6名で、徳川家康が鷹狩に来た時に村の名前がないため八郎右衛門の姓を村名にと命じられたのです。そして深川村の鎮守のお宮が深川神名宮でした。

深川神名宮は下の地図で番号10の下にある朱丸です。

深川神明宮を左に移動しますと、小名木川の沿いに三つの青丸があります。芝翫河岸(しかんがし)と呼ばれていました。そこに二代目中村芝翫さん(四代目中村歌右衛門)が住んでいたからです。

芝翫さんが六歌仙を上演し、喜撰法師の清元の歌詞に「我庵は芝居の辰巳常磐町、しかも浮世のはなれ里」と自分の住んでいたところを詞にしたというのです。というわけで、十代目三津五郎さんのDVD『喜撰』(江戸ゆかりの家の芸)を久方ぶりで観ました。出だしがこの歌詞でした。ラストは「我が里さしてぞ 急ぎいく」で深川の常磐町の家へ帰るのです。

奇しくも今月の歌舞伎座第三部は、当代の芝翫さんが『喜撰』を踊られてます。

地図を下にさがりまして番号17から左に移動しますと浄心寺があります。そこに清元節の創始者・初代清元延寿太夫さんのお墓があります。今月の歌舞伎座の『喜撰』の清元は延寿太夫さんなのでしょうか。

そしてさらに左に移動しての青丸は三世坂東三津五郎さんが住んでいた永木横丁とおもうのですがこの地図ではよくわかりませんので悪しからず。それと「世」と「代」の使い分けもよくわかりません。『史跡を訪ねて』を参考にさせてもらっていますのでそれに合わさせてもらっています。

そこから、上に富岡八幡宮がありさらに上がると深川不動堂があります。境内を入った右手に高くそびえる石垣があり、石造燈明台です。石垣の四面には奉納者の名があり、南面中央部に九世市川団十郎さん、五世尾上菊五郎さん、初世市川左團次さんの名があり、団菊左時代を思わせます。

切絵図で番号14の富岡八幡宮の青丸はまだ深川不動堂はできていなくて、富岡八幡宮別当寺・永代寺に第1回目の成田山の出開帳がありました。明治に入り神仏分離令の時、出開帳で御縁のあるこの地に願い出て成田山から御分霊されました。

永代橋のピンク丸の二つは番外編として。一つは、赤穂浪士休息の場ですが、当時の浮熊屋作兵衛商店の主人が店に招き入れ、甘酒を振る舞ったといわれています。みそを作っていたので麹があったので甘酒もつくれたのでしょう。今も、ちくま味噌を作られているのです。知りませんでした。

もう一つは永代亭パンの会旧跡です。明治42年から44年頃まで青年文学者や芸術家たちがあつまり「パンの会」と命名しました。現在の交番隣あたりに、西洋料理店永代亭がありここを使ったようですが、高級な店ではなくポンポン蒸気船の発着所を兼ねた二階建て店でした。

パンの会」のパンは食べるパンのことだと思っていました。違ってました。ギリシャ神話の牧羊(牧畜森林を守る神)のことでした。バレエの「牧神の午後」が浮かびます。

パンの会の会員・上田敏、戸川秋骨、北原白秋、木下杢太郎、吉井勇、山本鼎、石井柏亭、倉田白羊、谷崎潤一郎、石川啄木、高村光太郎、等。(二代目左團次さん、初代猿翁さんも顔を出されていたようです)

とにかく深川は名を残した人など沢山の人々が住んでいました。そして様々の事件も起こり、芝居の舞台ともなっています。お寺も多いです。まだまだ確かめに行っていないところも多いのでリピートで散策を楽しめる場所でもあります。深川は広くてさらに『東海道四谷怪談』のお岩さんの流れついたとされる隠亡堀あたりとなるともっと東へ移動しなければなりません。ゆっくり地図で確かめつつ訪ねることにします。

さて上野から深川でしたが、上野から根津駅に行く途中も興味深い道筋でした。東京芸大美術館からすぐの交差点で、古い甘味処があり『桃林堂』とあります。さらに進むと寺院の門が左手にみえました。帰ってからふっと思い出しました。かなり以前、友人が上野公園周辺に御朱印をもらえるところが十か所あって、一か所行けないところがあったと。もしかして探せなかったのはここではないかと、護国院です。友人に電話するとどこをどう歩いたか混乱していて覚えてないといいます。地図を送ることにしました。

十か所(1か所で二つもらえる所があるので正確には九か所)全部がのっている地図をと探し、こことこことここ。人のことながら楽しかったです。

友人は御朱印の旅もままならず、近くの寺院の毎月変わる御朱印で我慢しているそうです。今、季節限定とか、月替わりの御朱印も多くなりましたからね。

上野公園で、九か所の内の一つ花園稲荷神社の前を通ったので、並ぶ鳥居の写真だけ撮ってみました。もちろん不忍弁天堂も入っています。

少しづつそっと、寺院めぐりをしたいものです。

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