ひとこと・歌舞伎座『かさね』

静かで座席にゆとりがあって開幕と同時に物語の世界に入っている。結構好きな環境である。

かさねが可憐でそれでいて奥女中づとめの物腰があり、与右衛門もこうなれば一緒に死のうかとおもってしまう。

赤いふくさを使ってのクドキの小さな赤がかさねの想いを伝える。ところが、与右衛門はワルな奴なんです。因果応報はこれを許さなかった。それがかさねにかぶさってしまう。逃れたい与右衛門。ついにかさねの恨みはさく裂する。美しい右側の横顔が哀れで悲しい。

幸四郎さんと猿之助さんの息があっていて、そろって足踏みするたびにあらがえない世界に深入りし物語が完成されていく。捕手の目の真剣さがいい。

友人に話したら「うんうん、わかるわかる。歌舞伎座行く。」よかった。これで友人の見方で二回たのしめる。

追記: 友人は猿之助さんのたもとの扱い方の美しさに見とれたのことである。お腹に子供がいることを伝えるしぐさ。鏡を見せられる時のいやいやのしぐさ。悪の幸四郎さんも美しく、好きだなあ、あの『かさね』。長電話。