『ワンピース』からラスベガス映画(4)

ラスベガス映画の最終は、歌がたっぷりの映画と実話に基づいた映画とします。先ずは『ラスベガス万才!』(1964年・ジョージ・シドニー監督)。ドキュメンタリー『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』でエルビス・プレスリーについてマイケル・ケインは語る。

「エルヴィスは衝撃だった。驚いたのは歌でも世間の騒ぎでもない。あの動物的な感じだ。人生で初めて誰かを見て自由だと思った。何にもとらわれない自由。」

映画『オーシャンと11人の仲間』は1960年のラスベガス。映画『ラスベガス万才!』は1964年のラスベガスである。『ラスベガス万才!』の冒頭でラスベガスの街並みが映り、エルビスのラッキーが入っていくのがホテル「フラミンゴ」のカジノである。ラッキーはラスベガスで行われるカーレースに出場する予定である。そのライバルがイタリアのスピード王・マンチーニ伯(チェザーレ・ダノヴァ)であるが、恋のライバルともなる。二人の前に現れたのがラスティ(アン・マーグレット)。

名前も判らず、マチーニ伯は踊り子であろうと想像し、二人はクラブを次々訪ねショーの中に彼女がいないか探すのである。7軒訪ねる。『オーシャンと11人の仲間』で出てきた、サンズ、フラミンゴ、サハラへも行く。それぞれのショーを楽しませてもらえる。もちろんエルビスの歌も。

予想と違い、ラスティはホテルのプールでコーチをしていた。ラッキーはプールに落ち、お金を紛失してしまう。レースカーのエンジンを買うためホテルの従事員となり、賞金めあてに従事員の歌のコンテストに出場。優勝するが賞金はでなかった。仲間がエンジンを手配してくれ何とかレースに出場でき見事優勝する。カーレースの模様や周囲のラスベガスの風景も映像として見どころである。ラッキーとラスティは結婚しハッピーエンドである。

エルビスの歌声もたっぷりである。(「テキサスの黄色いバラ」「レディ・ラブズ・ミー」「好きだよ ベイビー」「恋の賛歌」「ホワッド・アイ・セイ」「愛の証しを」「ビバ・ラスベガス」「独りぼっちのバラード」)とにかく明るく楽しくエルビスの魅力を楽しみましょうの映画である。

次の映画は、「フラミンゴ」を創設したマフィアの男の『バグジー』と、ラスベガスを牛耳っていたマフィアがラスベガスから一掃される『カジノ』である。二作品ともかつて観ていたがつないで観ていなかったので今回あらためて観て、ラスベガスの誕生と流れが二作品で表面的ではあるがわかった。

映画『バグジー』(1991年・バリー・レヴィソン監督)は、マフィアの一員であるベンジャミン・シーゲルをモデルにした映画で、ラスベガスにカジノホテル「フラミンゴ」を建設しマフィアのラスベガス進出の道を切り開いた男の話しである。

ベン(ウォーレン・ベイティ)は、ニックネームをバグジーと言われていたが彼はこれを嫌っていた。俺は虫であっても虫けらではないと。ハリウッドで幼馴染の俳優ジョージの撮影現場で売れない女優のヴァージニア(アネット・ベニング)と出会い、恋仲となる。俳優という仕事にも興味がありキャメラテストを受けたり、発音の練習などもしている。

ラスベガスのギャンブル場を任され、ヴァージニアと仲間のミッキー(ハーヴェイ・カイテル)を連れ立って行ってみると小さな汚い建物であった。ヴァージニアはこんな汚いところに何の価値があるのかとくさす。しかし、売り上げは良いのである。ベンは砂漠の何もない場所で思いつく。ここにカジノ付きの豪華ホテルを建てることを。

1945年、ホテル「フラミンゴ」の建設のためマフィアの仲間たちから100万ドルの資金を調達する。ところが、建設予定は次々と変更され予定金額がドンドン超過してしまう。最終的にはは600万ドルと膨れ上がる。マフィアたちはバグジーが私腹を肥やしているのではと疑い始める。幼馴染のマイヤー(ベン・キングスレー)もバグジーを信用してきたがもうかばい切れないと手をひく。

やっとオープンにこぎつけるが、大雨で客足は少なく、雨漏りまでする始末で、バグジーはしばらく閉館すると伝える。バグジーはマフィアたちに呼ばれ飛行機で立つときヴァージニアが現れ自分は200万ドルを自分の物にしていたことを告げる。バグジーは取っておけといい飛行機で飛び立つ。そして彼は殺される。その後、マフィアがラスベガスに進出するのである。

バグジーがスマートに描かれているが、実際は相当の抗争をへて上り詰めて行ったであろう。ハーヴェイ・カイテルがいたって静かで、『ガンジー』俳優のベン・キングスレーの耳を傾けながら、ウォーレン・ベイティの計算なしの夢を追う姿をささえている。アネット・ベニングが200万ドルかすめながら可愛い女としていての位置で、バグジーの死後、200万ドルを返還してすぐバグジーの後を追って自殺しているとしている。

とにもかくにもバグジーはラスベガスにマフィアを呼び込んだ人ということになる。1945年というと日本は原爆を落とされている。

映画『カジノ』(1995年・マーティン・スコセッシ監督)は実話に基づいているとある。上半身ピンク系で決めた男性が車に乗るとその車が爆発する。そこから(1983年)から10年前に話はもどされる。この男性は、エース(ロバート・デ・ニーロ)と呼ばれる予想屋で非常によく当たるので、マフィアの親分衆はエースから情報を得て儲けさせてもらっている。親分のリモはニッキー(ジョー・ペン)にエースの身辺護衛を命じる。

エースはそれほどの野心もなかったが、ラスベガスのカジノの「タンジール」を任せられることになる。エースは賭博関連で捕まったこともあり州法での免許がとれないが、申請していれば許可が下りなくても営業ができ、仕事の肩書を次々返ればいいと言われる。「カジノ支配人」「飲食店責任者」など。そうすると書類が後ろに回され申請中で営業が続けられるということになる。エースは仕事に対しては慎重で引き受けることにする。

カンザスシティーの親分たちへの上納金もそれ専用のルートがあり。親分たちも満足していた。そんな時、ニッキーがラスベガスに現れた。ニッキーは激情型でなんでも暴力で力を持つタイプであった。エースは少々問題のある女性・ジンジャー(シャーロン・ストーン)を気に入り結婚する。ところがニッキーとジンジャーは問題を起こし、FBIには目を付けられ、親分衆にも監視される。

1980年、FBIの盗聴器により「タジール」に検査が入り賭博管理委員会はエースのカジノ免許について審問会を開き、免許申請拒否の動議が通ってしまい無免許営業で叩かれる。

親分たちの身も危なくなり事情の知っている者は次々と消されていく。ニッキーも弟と一緒に消されてしまう。エースは車に爆弾を仕掛けられ爆発するが奇跡的に助かる。ラスベガスはその後様変わりし、大企業がカジノを買い占めデズニ―ランドの様相であると。その後エースは、ギャンブルの神様と言われた勘は健在で、一から始めての予想屋で相変わらず当てている。

映画『カジノ』はマフィアの世界そのもので、無情な殺し合いが繰り広げられる。ニッキーはエースが嫌な顔をするようにこちらが観ていても手が付けられないという感じである。どちらにしても悪事はそう長くは続かないと言う事でありそうであってもらわねば困る。バグジーがフラミンゴを建設してから35年以上(1945年から1980年頃まで)はマフィアの支配が続いたことになる。そして『オーシャンと11人の仲間』の1960年から『ラスベガス万才!』の1964年ころはハリウッドとも上手く共存していたということであろうか。

日本のカジノは始まるまえから怪しい雲行きである。「フォー・ホースメン」がイリュージョンで暴露してくれるとすっきりするのであるが。他にもはっきりしてもらいたいことが沢山ある。

映画『ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪』にロバート・デ・ニーロがでてきたのには驚いた。彼の両親は画家で、ペギーの画廊に絵を出してもらったのだそうで援助してくれたらしい。ロバート・デ・ニーロが三歳のときだそうである。ペギーの生前のインタビューから構成されている映画だが驚くべき人である。お金も使い方でこうも違うものなのかと思ってしまう。

追記: トム・ハンクスはエルヴィスの伝記映画の撮影のためオーストラリアで新型コロナを発症したのでしたね。回復してよかった。TV映画『ELVIS エルヴィス』(2005年)では、母の誕生日のプレゼントにレコードを作成しそこからスター・エルヴィスの誕生となるのであるが、1968年のテレビスペシャルの撮影までとなっている。エルヴィスは海外公演を望むがマネージャーのトム・パーカーが移民でアメリカの永住権をもっていないため再入国できないことをおそれてあきらめるのである。そして、ラスベガスでのショーへと。トム・ハンクスがトム・パーカー役である。超期待してしまう。

追記2: 映画『トラブルINベガス』。キム・ベイシンガーが出ていたので観た。ハーモニーがエルヴィスのなりきりさんに会うとその人は事故死してしまう。ベガスのエルヴィスなりきりさん大会へ行くことになり、すべてのなりきりさんが事故死。事故死の原因が見どころ。ハーモニーは少女時代エルヴィスに会っていてそれは幸福を呼び寄せる力があった。軽いラブロマンスコメディ。

同じような軽さで映画『トラブル・イン・ハリウッド』あり。プロデューサーのロバート・デ・ニーロが撮影現場や映画関連の人間に振り回される。本人役でショーン・ペンとブルース・ウィリスも登場。どちらも期待半分でかるーく鑑賞されたし。

『ワンピース』からラスベガス映画(3)

ラスベガスでイリュージョンのショーをしつつ、パリの銀行からお金を盗むのが映画『グランド・イリュージョン』である。この映画に出会ったのは、この映画に出演しているマイケル・ケインと関係している。

映画『イエスタデイ』でビートルズについてもう少し知りたくて、ドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYZ A WEEK~』(2016年・ロン・ハワード監督)を観た。リバプールから出発して、世界中をまわり、ツアーをやめてスタジオにもどるまでが描かれている。日本での公演は、武道館を使うことは許さないと右翼が主張し警察に囲まれての移動にはビートルズも驚いたようである。駆け足でビートルズの経緯はわかった。

ドキュメンタリー映画『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』はマイケル・ケインが案内するイギリスの60年代である。マイケル・ケインが若い頃に主演した映画『アルフイー』の映像を使って進行に役立てている。アルフィーは、正面を見て観客にたびたび説明したり話しかける。その映像を利用しナレーターの言葉に替えている。60年代の若者の様子の映像であるから、若いマイケル・ケインと上手く合っている。そして時には、現在のマイケル・ケインがナレーターに現れたりと、彼が現実にその時代を生きた証が伝わってくる。

イギリスは、社会階級がはっきりしていて、マイケル・ケインは労働者階級であった。アクセントが違うらしく、彼は劇団でしゃべり方を練習していたので、映画で若き将校役を貰えたが監督がアメリカ人だったからで英国人なら駄目であったとしている。そして、俳優組合に名前を登録する時、好きなハンフリー・ボガートの映画ポスター『ケイン号の叛乱』が目に入りマイケル・ケインとする。

リバプールではビートルズがブルースの店で自分たちの歌を歌う。「世間は突然才能ある労働者階級の存在に気がついた。豊かな才能だ。革命だった。」貴族の真似をしない若者がロンドンに集まった。60年代のヴォーグは言葉の訛りでモデルを除外したが、ツィギーは、コックニー訛り(ロンドンの労働階級の英語)でモデルになった初めての女性である。これは知りませんでした。

1945年、労働党政権が始まると医療保険制度ができたり食生活も改善し、皆が教育を受けられるようになった。ポール・マッカートニーも「グラマースクールに行けたよ。無料でいい教育を受けられた」と発言している。面白かったのでマイケル・ケインの出演映画をつらつら検索していたら『グランド・イリュージョン』にぶつかったわけでラスベガス映画に加えた。

映画『グランド・イリュージョン』(2013年・ルイ・レテリエ監督)。4人のスーパーイリュージョニストが「アイ」に導かれて「フォー・ホースメン」を結成する。初めての仕事が、ラスベガスでショーをしているうちにパリの銀行の金庫からお金を頂戴しその模様を観客に見せると言うものである。

「アイ」とは、古代エジプトにあったといわれる秘密集団である。彼らは巧みなマジックで、王の食べる物を奪い奴隷に分け与えた。その目的は、マジックで正義の天秤を守ること。「フォー・ホースメン」はその信奉者なのであろうか。奪ったお金は、ショーの観客にばらまかれる。

リーダーのアトラス。脱出の天才・ヘンリー。メンタリスト(催眠術)・メリット。カードの奇術師・ジャック。

この4人のパトロンが保険王のアーサー・トレスラーがマイケル・ケインである。そして、「フォー・ホースメン」のショーの種明かしをする老マジシャンのサディアス(モーガン・フリーマン)。盗みをするわけであるから当然「フォー・ホースメン」はFBIの捜査官に追いかけられる。この逃走劇も見ものである。

イリュージョンと銀行強盗の種明かしもあるので、これは騙されて深く考えずに観るのが良いであろう。映画だからできるのだと思わずに、こんな場面を実際に観れたら楽しいだろうなと思って気軽にそのスピード感に突き合うのが暑さしのぎになるかも。おたのしみが半減するので、映画の内容はここまで。

アトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)、ヘンリー(アイラ・フィッシャー)、メリット(ウディ・ハレルソン)、ジャック(デイブ・フランコ)、FBI捜査官・ディラン・ローズ(マーク・ラファロ)、フランス人の女性捜査官(メラリー・ロラン)

続編の『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』(ジョン・M・チュウ監督)は、新たに「フォー・ホースメン」が仕掛けるのは巨大IT企業オクタ社の陰謀の暴露である。オクタ社の代表を催眠術にかけ全て公表させるというねらいであったが、何者かにショーはさえぎられてしまう。ホースメンは逃走。気がついたときには4人はマカオにいた。これこそ最強のイリュージョンなのか。敵はだれか。

敵から出された命と引き換えの条件は、全ての情報に潜入できるコンピューターのチップをマカオ科学館から盗み出すこと。チップをカードにはめ込んで4人がパスし合い、警備員の目をごまかすのが格好いい。8割がた実際に俳優が練習しての実演だという。さすが『ステップ・アップ2: ザ・ストリート』『ステップ・アップ3』の青春ダンス映画のジョン・M・チュウ監督である。動線は美しくである。それにしても大掛かりな映画を担当したものである。ラストに謎解きがあるので、そこから映画を俯瞰する必要がでてくる。

ヘンリー→ルーラ(リジ―・キャプラ)、天才エンジニア・ウォルター(ダニエル・ラドクリフ)

また話しが飛ぶが、『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』の飛行機のトリックから大林宣彦監督の映画『北京的西瓜』(1989年)を思い出した。実際にあった話で、八百屋さんが中国の留学生のために八百屋がつぶれそうになるまで応援援助するのである。中国に帰った留学生たちは八百屋さん夫婦を中国に招待し皆で再会することとなる。

この映画を撮った時、中国では天安門事件があり、撮影のために中国から全面協力すると言われる。大林宣彦監督は守られて撮影するのであればこの映画の意味がないと、飛行機で八百屋夫婦が移動する場面は、航空会社の練習用の飛行機のモデルで撮影し、その理由も説明するという方法をとったのである。大林監督の時代のなかで起こった歴史を残す一つの試みであった。

またまた飛んでテレビドラマ『半沢直樹』で、重要書類をPCの中の秘密の部屋に隠すが半沢側と黒崎側とで消去と開示の闘いが緊迫感を与え面白かった。このくらいのハイテクの導入は実際にありそうで納得してワクワク感を増幅させるが、凄すぎてよくわからなかったというところまでいくと観客不在となることもある。「オーシャンズ」も「イリュージョン」もそのあたりの匙加減が大切と思える。

さらにドラマで猿之助さんの台詞の繰り返しも話題になったが、歌舞伎の源氏店では一人の呼びかけも「ご新造さんえ、おかみさんえ、お富さんえ、いやさお富」というのがあるのを思い出し表現が上だよなと。現在、幸四郎さんが歌舞伎座で言われている。そして繰り返しのとどめが「土下座野郎!」も河内山の「馬鹿め!」がぱっと浮かび笑ってしまった。

現代ドラマでの歌舞伎役者さんの土下座野郎は中車さんが最初ではありません。海老蔵さんが松本清張さんの『霧の旗』(2010年)で土下座しています。この作品は桐子という女性が主人公なのですが、海老蔵さんを主人公にしていたのがちょっと不満でした。

今回の書き込みは盛り込みすぎかも。ラスベガス関連映画は『グランド・イリュージョン』一作ですのに。

『ワンピース』からラスベガス映画(2)

映画『オーシャンと11人の仲間』と『オーシャンズ11』は、人を殺すことなくラスベガスのカジノの売り上げを頂戴するという内容である。『オーシャンと11人の仲間』ということは12人で仕事をしたということになる。『オーシャンズ11』は、続編『オーシャンズ12』『オーシャンズ13』があり、さらにダニー・オーシャンの妹が女性陣でオーシャンズを組織する『オーシャンズ8』がある。

映画『オーシャンと11人の仲間』(1960年・ルイス・マイルストン監督)と『オーシャンズ11』(2001年・スティーブン・ソダーバーグ監督)との間にはほぼ40年の経過がありラスベガスの町並みも違うしホテルの規模も違う。『オーシャンと11人の仲間』では、五つのホテル(サハラ、リビエラ、デザート・イン、サンズ、フラミンゴ)のカジノの売り上げを盗み、それぞれのホテルに仲間が分散して盗み出し、お金はごみ収集車一台で次々と回収していく。この仲間たちの関係は、第二次大戦のときの出撃部隊・82空挺部隊の仲間なのである。任務は数百ドルの解放である。実行開始日は大晦日。

12人の仲間たちが集まるまでが長い。泥棒の計画も全員がそろってから話が具体的になるのでそれまでが少し退屈させる。ジミー(ピーター・ローフォード)の富豪の母が何回も離婚しており、今回再婚する相手が曲者で、後にオーシャンたちの盗みに介入してくる。オーシャンの妻とその愛人。トニー(リチャード・コンテ)の元妻なども複線として登場する。

五つのホテルに侵入した仲間たちの偵察と仕事ぶりに入ると面白さが急増する。ここからは仲間のお手並み拝見である。楽しんでいるうちにお互いの顔を順番に眺める思いがけないラストへと突入。

オーシャンがフランク・シナトラ、サムがディーン・マーチン、運転手のジョシュがサミー・デイビスJr.は実際にラスベガスのショーに出演していて、彼らのショーには客席にそうそうたるスターの顔があったらしい。今に比べると場所も狭く舞台と客席は和気あいあいとして親密であったとのことである。

映画の中でサムは歌手として歌いつつ女性客を魅了し、偵察の役目を果たしている。トニーは電気関係担当でその仕事をしている途中で邪魔になったのが酔っぱらいの女のシャーリー・マクレーンである。それを上手くあしらうのがサムである。

ここで飛ぶが、映画『何という行き方!』(1964年・J・リープ・トンプソン監督)でシャーリー・マクレーンがディーン・マーチンをはじめ、ディック・V・ダイク、ポール・ニューマン、ロバート・ミッチャム、ジーン・ケリーを相手に多種多様の演技をみせているのには驚く。近い映画では『素敵な遺産相続』、『あなたの旅立ち・綴ります』でもしっかり存在感を示している。

映画『オーシャンズ11』は、三つのホテル(ベラジーオ、ミラージュ、MGMグランド)のカジノの売り上げがベラジーオの金庫に収まるので盗みに入る場所は一箇所である。ただこの三つのホテルを経営するべネディックが相当な冷血無比な男である。ホテルに関しては全て細かく把握している。金庫への通過の暗唱番号も毎日変えている。

ダニー・オーシャンは仲間のラスと二人で、仕事に必要な能力を持った仲間の人選をしていく。そのため仕事が始まるとどうしてこの人が選ばれたのかが観る側も納得できるようになっている。ただダニーはお金だけではなくもう一つべネディックから盗む、いや返してもらう目的もあった。元妻のテスである。テスはベラジーオ美術館の館長をしていてべネディックの恋人になっていた。

実行はボクシング大会のある日が売り上げも多いと言うことでその日にきまる。『オーシャンと11人の仲間』の頃に比べるとホテルも巨大化しハイテクの警備網も完備している。オーシャン側もそれなりの準備が大がかりである。そこに変装(詐欺師)というなりすましの仕事が必要となる。その腕がまだないのがライナスである。ライナスの気の焦りがこの仲間の弱点であるがどうにかカバーされる。そして強奪成功である。

さてテスの方は、べネディックがテスよりもお金が大事だということが映像でテスに知らしめダニーはテスの愛をとりもどすことに成功。ダニー、テス、ラスの車を、べネディックの部下が尾行する。続くのかなと思わせられる。

ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)、ラス(ブラッド・ピット)、フランク(バーニー・マック)、ルーベン(エリオット・グールド)、モロ兄弟(ケーシー・アフレック、スコット・カーン)、リビングストン(エディ・ジェイミソン)、バシャ(ドン・チールド)、イエン(シャオボー・チン)、ソール(カール・ライナー)、ライナス(マット・ディモン)、べネディック(アンディ・ガルシア)、テス(ジュリア・ロバーツ)

オーシャンズ12』(2005年)では、べネディックに命と引き換えにお金を返すことを要求され金策のためテスも参加することになる。盗まれたお金は保険で補てんされていたのであるがべネディックは許さなかった。ラスの恋人が登場したりとこちらもなかなか面白い。ラスのいつも何かを食べてるシーンは減るが。

ただオーシャンたちの盗みの見せ場はない。代わって一人華麗に行動してくれる人は用意されている。そしてライナスの母親が登場したのは嬉しい驚きであった。父のボビーが有名な泥棒であることらしいのは話の中に出てきたが、母親もとは。話しが過去と現在に交差して複雑であるが、一人一人のキャラは分かっており意外な展開が笑わせてくれる。ラスベガスでのことではないのでこのへんで。

オーシャンズ13』(2007年)は、アル・パチーノがでるので期待したが大御所の魅力の引き出し方が弱かった。場所はラスベガスであるがウィリー・バンク(アル・パチーノ)のオープンするカジノホテル・バンクは架空のホテルでもあるので簡単に進める。

オーシャン一味のリーベンがホテル王であるウィリーに裏切られ、そのことが原因で倒れ意識不明となる。さっそくオーシャン一味はウィリー報復を考える。しかし資金がないこともありあのべネディックに力を借りることにする。もちろん、べネディックがウィリーを快く思っていないことを知ってである。ウィリーはホテル格付の最高位「5ダイヤモンド」をもらっていた。べネディックはそのダイヤを盗むことを条件にした。

ライナスが腕をあげていたが、今度は父親のボビー登場で中々親離れさせてもらえない落ちがつき、いつも喧嘩しているモロ兄弟が意気投合するというおまけもあるが、期待度の高さに比して盛り上がりがいまいちであった。

オーシャンズ8』(2018年・ゲイリー・ロス監督)は、観る気がなかったが流れのついでと観たらドキュメンタリー映画『メットガラ ドレスをまとった美術館』(2017年)につながる内容で満足。女性陣もなかなかやります。

ダニ―・オーシャンの妹・デビ―・オーシャン(サンドラ・ブロック)が、ファッション界最大級のイベント「メットガラ」に登場するカルティエ貸し出しの宝石に挑戦するのである。これまた仲間を7人選んでいく。盗む場面は女性ならではの細やかさでアクションは少ない。ところが、兄の仲間のイエンを登場させ、あの軽業師のしなやかな動きで他の宝石もいただいてしまうという見せ場を作っていた。さらに、ダニーは裏切った恋人にも復讐をするというおまけつき。

メットガラ ドレスをまとった美術館』は、米ヴォ―グ誌の編集長・アナ・ウインター主催によるニューヨーク・メトロポリタン美術館で開催された「メットガラ」の準備の模様からドキュメントしたもので、大変興味深いものだった。そのアナ・ウインターも『オーシャンズ8』に顔を出しており、上手い所に照準をあてた。華やかさも加わり、デビ―が兄のお墓で祝杯をあげて語るのがおしゃれである。

一応これで<オーシャンズ>から解放させてもらうことにする。

『ワンピース』からラスベガス映画(1)

アニメ映画『ワンピース フイルム ゴールド』とテレビアニメ『ワンピース シルバーマイン編』を観た。

ワンピース フイルム ゴールド』の方を先に観た。黄金船「グランド・ゾーロ」の主でカジノ王がテゾーロである。金大好き、お金大好きである。それには生い立ちの体験が関係しているがそれは略す。「グランド・ゾーロ」に乗り込むルフィ一味。このカジノでルフィはつきにつきまくって勝ってしまうが突然つきが逃げてしまい大負けをして船底の牢獄へ。

ゾロは黄金で固められ公開処刑がきまる。上流人にばけて行動するナミたち。さて運命はいかにである。

複線としてナミのかつてのライバルであるカリーナが登場。テゾーロ側である。ナミとカリーナの関係も混戦模様。さてテゾーロのエンターテイメントであるゾロの公開処刑は成功するのであろうか。ナミとカリーナの勝負はいかに。

このアニメ映画から頭の中はラスベガスに飛んだ。歌舞伎の弥次喜多の宙乗りよりも一足飛びである。そのため見せ場は無い。

その前に『ワンピース シルバーマイン編』を少し。島全体が銀の鉱山である。そこを根城にしているのがシルバー海賊連合でトップがビル。地下は線路の迷路でその上を走るトロッコ人間・テベロンがユニークなキャラである。当然ルフィを追撃する。

ルフィを神髄しているバルトロメはルフィと行動を共にしてルフィの活躍のたびに感動する。感動しまくるのが笑える。そして黄金船のテゾーロの部下であるタナカさんがここに出ていて、シルバーからゴールドにつながっているのがわかる。ビルはタナカさんを通してテゾーロに上納金を納めていたのである。シルバーの上にゴールドの存在があることがわかる。納得。

ラスベガスへ飛ぶのは映画『オーシャンズ11』(2001年)であるが、これは映画『オーシャンと11人の仲間』(1960年)のリメイクであるが、時代差もあり内容はかなり違っている。ただ『オーシャンと11人の仲間』のラストの落ちが好きである。

映画『オーシャンズ11』にも出てくるカジノホテル「ベラージオ」の前では噴水ショーをやっているようだが、そこで新作歌舞伎『獅子王』(2016年)を演じたのが染五郎(現幸四郎)とその仲間たちである。

https://www.kabuki-bito.jp/special/more/more-other/post-japankabuki/

獅子王』はテレビでも放映された。観た時、背景が千々に変化し物語の中に没入するというより与えられるものに振り回されるという感じであった。今想うに、さらに積み重ねてという前提があるので、第一歩は早すぎることはないのだということである。今回のように積み重ねの道が突然さえぎられることもあるのだから。

ひとこと・東京芸術劇場公演

東京芸術劇場のシアターイーストで野田秀樹さんの作・演出で『赤鬼』が、シアターウエストで文化座の『フライ、ダディ、フライ』が上演されていたのですね。16日まで。無事に千穐楽をむかえられますように。また何かがあっても、その原因を共有することが、これからの演劇上演の力となります。

↓ ジャンル検索を 〇演劇・ダンス にすると見やすいです。

https://www.geigeki.jp/event_calendar/

ひとこと・テレビ『ぶらぶら美術館・博物館』

明治神宮創建100年。「神宮の杜芸術祝祭」が開催されている。BS日テレの『ぶらぶら美術館・博物館』(11日夜8時~)で放送される。あの森にどんなものが出現するのであろうか。わくわくする。

https://www.bs4.jp/burabi/#about

神宮の杜を歩いた時のことを思い出しつつ楽しませてもらうことにします。

明治神宮の森から映画『三月のライオン』場面の散策

映画『母』・『どっこい生きてる』

映画『』(1963年・新藤兼人監督)。場所は広島で、広島に原爆が落とされてから18年後の広島が映されている。18年後の広島がどんな様子かを見れる映像としても貴重である。

夫に捨てられた母親が三人の子供を育て、その娘が三回結婚し母親としてどう生き抜いて自分を取り戻していくかが描かれている。観ていると主人公である民子がこのままもっと悪い状況にはまり込んでいくのではと心配になる。ところが民子は自分を取り戻し、自分で選択し新しい命を宿すのである。

民子の最初の夫は戦死してしまう。二回目の結婚では夫の放蕩から息子・利夫を抱えて離婚。利夫は目がかすみ脳腫瘍であることがわかる。岡山の大学病院でなら手術できるという。しかしお金がなく民子は入院費を出してくれると言う田島と三回目の結婚をする。

民子は利夫を宿した時、この夫の子供は産みたくないと思ったことを思い出し利夫がいっそう不憫でならなくなる。手術は成功するが再発してしまい、3、4ヶ月の命と告げられてしまう。生きている間、利夫の望みは何でも叶えてやりたいと盲学校へも通わせ、オルガンも買ってやる。

オルガンは民子の弟・春雄がお金を出してくれたのである。春雄は母の期待から大学まで行かせてもらうが大学をやめバーで働いていた。その春雄が遊覧ヘリコプターに乗り上から広島市内をながめる。このあたりは脚本も書かれた新藤監督の上から広島を映したいとの意思を感じる。この優しい春雄がバーのママのパトロンと争い亡くなってしまう。

利夫も民子の腕の中で息をひきとる。気がふれたのかとおもわれる民子。病室のベットの上で民子は母から妊娠してることを知らされる。母は田島との結婚は一時しのぎのつもりですすめたのにと告げる。民子も田島を夫として受け入れられるか自問し続けてきた。

田島は利夫のために貯金を使いさらに借金までしてくれた。朝早くから夜遅くまで印刷機械に向かってやっとためたお金である。民子は一緒に働いていてよく知っていた。民子は自分の意志で田島を受け入れることを決めたのである。民子は宿った命に生きる力をもらっていた。利夫が点字で読んだ言葉が民子を包み込む。

母・芳枝の生き方と娘・民子の生き方を提示してもいる。それが杉村春子さんと乙羽信子さんなのであるからそれだけでも見どころありである。民子が自分の意志で命を宿すところは自分で判断する女、新しい母親を描いている。流されてきた自分をしっかりつかまえる民子。民子は時々頭痛に悩まされていた。それは民子の心から発信されていた何かへの抵抗だったのであろう。

利夫、田島、田島の娘、春雄に助けられ民子は新たな母となって再生された。

』の題字が岡本太郎さんである。

民子(乙羽信子)、芳枝(杉村春子)、利夫(頭師佳孝)、春雄(高橋幸治)、長男・敏郎(加藤武)、田島(殿山泰司)、医師(佐藤慶)、医師(宮口精二)、バーのマダム(小川由美子)、マダムのパトロン(武智鉄二)、文学座等。

バーのマダムのパトロンが武智鉄二さんで、なかなかの貫禄である。武智鉄二さんの映画『源氏物語』は、光源氏の衣裳が豪華で美しかった。衣裳が松竹衣裳とあり、あれだけの衣裳を新調はできなかったであろう。最後まで孤独な光源氏で衣裳が豪華で美しいだけに虚無感がただよっていた。

核兵器禁止条約の批准に43か国が参加。発効には50カ国・地域の批准が必要だそうである。被爆国がなんで批准しないのか。風化することを待っているのであろうか。待っていれば何でも国民は忘れると思われているようだ。

映画『どっこい生きてる』(1951年・今井正監督)。今井正監督の独立プロ第一作目の作品である。

日雇い労働者の生活をリアルに描いた映画である。朝早く駈けてどこかへ向かう人々。公共職業安定所に向かっているのである。そこで一日だけの仕事をもらうのである。一日働いて240円。ところが雇われる人数は決まっているからあぶれてしまう人も多い。

かつては職人を二人置いてオモチャのプレス工場をやっていたこともある毛利は戦争もあり、今は日雇い労働者である。家に帰ると大家が土地の権利を売ってしまったから家を壊すので出てくれとの催促。どうすることもできず妻・さとは子供二人を連れて姉のところへ行くことにする。

毛利は簡易宿泊所に行く。そこには日雇い仲間の花村もいた。求人募集の広告から毛利は旋盤工に雇われ喜ぶが、雇われても月給であるからそれまでが生きていけない。日雇いの仲間の水野に相談に行く。水野は秋山の婆さんに相談。婆さんは仲間を集めて給料日まで貸してやってくれと頼む。皆なけなしのお金を出してくれる。この頃一円も札である。423円集まり、毛利は水野と秋山の婆さん励まされる。

簡易宿泊所では花村も喜んでくれるのである。ところがである。花村がバクチに勝ち焼酎を一升瓶で買いご馳走してくれる。気のゆるみから毛利は酔っぱらい、かつては自分は二人の職人を持つ主人であったと自慢し始める。そして酔いつぶれる。気がつくとお金は無くなっていた。さらに工場にいってみると旋盤工の職もクビと宣告される。

意気消沈して秋山の婆さんを尋ね事情を話すとこっぴどく怒られてしまう。秋山の婆さんは観る側の代弁をしてくれる。観ていて何をやっているのかと思っていた。いまさら主人であったことを自慢して何になる。こういうところがあるのが人間なのかもしれない。

花村がお金になる仕事があると誘う。人の敷地に入って金属を盗むのである。朝鮮戦争特需で金属は高く売れた。泥棒と追いかけられ簡易宿泊所にもどると警察へ連れていかれる。妻と子供が東京に戻って来るのにお金がなくキセルで捕まったのである。姉のところも頼れる状態ではなかった。毛利は一家心中を決意する。花村が分け前のお金を渡してくれた。

最後の贅沢である。子供たちは遊園地ではしゃぎまわる。何んとか思いとどまってくれることを願う妻。そんな時、息子が池でおぼれる。必死に助ける毛利。

日雇いの職安に毛利の姿があった。心配していた水野は毛利を見て笑顔でむかえる。秋山の婆さんの姿も見える。どっこい生きている。

毛利(河原崎長十郎)、さと(河原崎しず江)、花村(中村翫右衛門)、水野(木村功)、秋山の婆さん(飯田蝶子)、大家(河原崎國太郎)、前進座等。

飯田蝶子さんの統率力のあるお婆さん役はいつもすばらしい。リアルで生き生きしていてへこたれない。長十郎さんの気の弱さと、どうやってでも生きていく翫右衛門さんのリズム感ある動きの対象もおもしろい。若い梅之助さんも話し方でみつけられた。

』も『どっこい生きてる』も暗い映画のイメージがあり、気持ちが沈むのではないかとおもいがちであるが、どっこい、当時の映画人の気迫が伝わってくる。そして名もなき人々の支えがどこからともなく湧き出してくる力がみえる。気をもらえる。