映画『ステキな金縛り』から『スミス都へ行く』『素晴らしき哉、人生!』(1)

映画『ステキな金縛り』(2011年・三谷幸喜監督・脚本)は、予告映像を観ておふざけ過ぎじゃないかなと感じて観ていなかった。この際観て置こうと鑑賞したら可笑しくてラストはウルウルときた。相も変わらず面白い事を考えるものである。

法廷劇あり、サスペンスあり、家族愛あり、幽霊とのガッチリタッグありのエンターテイメント映画である。そして、映画『スミス都へ行く』(1939年、フランク・キャプラ監督)、『素晴らしき哉、人生!』(1946年・フランク・キャプラ監督)のお土産付きである。もちろん映画の中でも陰で活躍してくれているのである。

主人公・宝生エミ(深津絵里)の部屋に、写真とその横にDVDのパッケージ『スミス都へ行く』が飾られている。この写真の主は亡くなったエミの父(草彅剛)であるらしい。エミは売れない役者の恋人(木下隆行)と同棲している。そして彼女は、優秀とは言えない弁護士らしい。

そのエミが殺人犯の弁護をすることになる。妻殺しの被告人・矢部(KAN)は、自分はその時間は奥多摩の宿に泊まっていて落ち武者の金縛りにあっていたと主張する。エミはその宿を訪ねる。宿の主人夫婦(浅野和之、戸田恵子)は何度も警察に聴かれへきえきしている。

エミは被告が泊った同じ部屋に泊めてもらうことになる。さて金縛りはあるのか。落ち武者があらわれる。名前は更科六兵衛(西田敏行)。六兵衛は北条氏の家臣で裏切者の汚名をきせられ打ち首にあっていて無念のあまりさまよっていたのである。エミは、六兵衛に証人として法廷に立ってもらうことにする。奇想天外である。ありえないことを実行するのがエミの弁護士としての使命感である。成り行き任せのとこもあるが、その勢いは止められない。

エミの父が好きであった映画『スミス都へ行く』の内容をすこし。アメリカのある州出身の上院議員が亡くなり、その後任を決めなくてはならない。知事、もう一人の上院議員・ペイン、この地を牛耳っている新聞社経営のテイラーは自分たちが操れる人物を探す。ボーイスカウトのリーダーである田舎者のスミスが選ばれる

スミスの父は、正義感が強く悪の凶弾に倒れていた。その時親友だったのがペインで、スミスはペインを尊敬しており、ペインに推薦され上院議員になれたことをとまどいながらも喜びでいっぱいだった。彼はワシントンで議事堂を眼にして感動し、リンカーン記念堂ではリンカーンが自分を待ってくれていたと思い込むほどの愛国者であった。

スミスは何か仕事をしなくてはと、地元の子供たちのためにキャンプ場の建設許可の法案を提出する。ところが、ペインは同じ場所にダム建設の法案を出していた。これには不正がからんでおり、これを追求しないような政治にうとい議員としてスミスを選んだのである。スミスはペインやテイラーの罠にはまり落胆し故郷へ帰ろうとするが、秘書の助けもあって自分の法案を通すために闘うのである。

意見のある議員は立って意見を述べる間は、質問以外誰もそれをさえぎることはできないという決まりがあり、スミスは立ち続ける。地元の報道は、テイラーに牛耳られていて正しい報道はされない。ボーイスカウトの少年たちは正しい報道を自分たちの手で配達するが、テイラーはそれさえも妨害する。議会ではスミスはついに失神して倒れてしまう。

ペインは自分の行ないに嫌気がさし真実を語る。ついにスミスの勝利。議長がなかなか粋な人で合間合間でスミスの正義感に同調し楽しんでいるのが憎い。子供たちの活躍も目をひく。そうかそうかこういう映画で感動したのかと記憶を呼び戻す。

エミの父以外にもこの映画を好きな人が、いや幽霊がいた。あちらの世界からきた管理局公安の段田(小日向文世)である。六兵衛をそろそろあちらの世界に戻さなくてはならないという。エミは、『スミス都へ行く』のDVDを見てもう少し待ってくれという。段田は承知する。段田はキャプラ監督なら『素晴らしき哉、人生!』のほうが好きだという。次に会ったときエミはそのDVDを用意するからと段田に頼みごとをする。

もう笑えてしまった。DVDの『素晴らしき哉、人生!』のDVDは観ようとしてそばに置いていたのである。ジェームス・スチュアートを観るためではなく、グロリア・グレアムが出ているとの情報からである。アネット・ベニングもアカデミー賞とってもいいのだがと彼女の映画を観続けていて『リヴァプール、最後の恋』にぶつかる。かつてアカデミー助演女優賞もとったことがあるグロリア・グレアムがモデルの映画であった。それまでグロリア・グレアムを知らなかったのである。

グロリア・グレアムの映画を探して『素晴らしき哉、人生!』に行き当たり、観ようとしつつ、ひと月ばかり放置していたのである。観なさいとの催促である。参考までに記すなら『リヴァプール、最後の恋』にでてくるグロリア・グレアムの若き役者の卵の恋人役のジェイミー・ベルは『リトルダンサー』の主役だった少年で、『ロケットマン』では、エルトン・ジョンの作詞のパートーナー役をやっている。その成長には驚きである。話しが飛び過ぎた。

段田推薦の『素晴らしき哉、人生!』は次の機会に。段田が嫌いなのは、陰陽師系である。安倍晴明の友人の子孫である安倍つくつく(市村正親)は吹き飛ばされてしまう。