『ワンピース』からラスベガス映画(3)

ラスベガスでイリュージョンのショーをしつつ、パリの銀行からお金を盗むのが映画『グランド・イリュージョン』である。この映画に出会ったのは、この映画に出演しているマイケル・ケインと関係している。

映画『イエスタデイ』でビートルズについてもう少し知りたくて、ドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYZ A WEEK~』(2016年・ロン・ハワード監督)を観た。リバプールから出発して、世界中をまわり、ツアーをやめてスタジオにもどるまでが描かれている。日本での公演は、武道館を使うことは許さないと右翼が主張し警察に囲まれての移動にはビートルズも驚いたようである。駆け足でビートルズの経緯はわかった。

ドキュメンタリー映画『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』はマイケル・ケインが案内するイギリスの60年代である。マイケル・ケインが若い頃に主演した映画『アルフイー』の映像を使って進行に役立てている。アルフィーは、正面を見て観客にたびたび説明したり話しかける。その映像を利用しナレーターの言葉に替えている。60年代の若者の様子の映像であるから、若いマイケル・ケインと上手く合っている。そして時には、現在のマイケル・ケインがナレーターに現れたりと、彼が現実にその時代を生きた証が伝わってくる。

イギリスは、社会階級がはっきりしていて、マイケル・ケインは労働者階級であった。アクセントが違うらしく、彼は劇団でしゃべり方を練習していたので、映画で若き将校役を貰えたが監督がアメリカ人だったからで英国人なら駄目であったとしている。そして、俳優組合に名前を登録する時、好きなハンフリー・ボガートの映画ポスター『ケイン号の叛乱』が目に入りマイケル・ケインとする。

リバプールではビートルズがブルースの店で自分たちの歌を歌う。「世間は突然才能ある労働者階級の存在に気がついた。豊かな才能だ。革命だった。」貴族の真似をしない若者がロンドンに集まった。60年代のヴォーグは言葉の訛りでモデルを除外したが、ツィギーは、コックニー訛り(ロンドンの労働階級の英語)でモデルになった初めての女性である。これは知りませんでした。

1945年、労働党政権が始まると医療保険制度ができたり食生活も改善し、皆が教育を受けられるようになった。ポール・マッカートニーも「グラマースクールに行けたよ。無料でいい教育を受けられた」と発言している。面白かったのでマイケル・ケインの出演映画をつらつら検索していたら『グランド・イリュージョン』にぶつかったわけでラスベガス映画に加えた。

映画『グランド・イリュージョン』(2013年・ルイ・レテリエ監督)。4人のスーパーイリュージョニストが「アイ」に導かれて「フォー・ホースメン」を結成する。初めての仕事が、ラスベガスでショーをしているうちにパリの銀行の金庫からお金を頂戴しその模様を観客に見せると言うものである。

「アイ」とは、古代エジプトにあったといわれる秘密集団である。彼らは巧みなマジックで、王の食べる物を奪い奴隷に分け与えた。その目的は、マジックで正義の天秤を守ること。「フォー・ホースメン」はその信奉者なのであろうか。奪ったお金は、ショーの観客にばらまかれる。

リーダーのアトラス。脱出の天才・ヘンリー。メンタリスト(催眠術)・メリット。カードの奇術師・ジャック。

この4人のパトロンが保険王のアーサー・トレスラーがマイケル・ケインである。そして、「フォー・ホースメン」のショーの種明かしをする老マジシャンのサディアス(モーガン・フリーマン)。盗みをするわけであるから当然「フォー・ホースメン」はFBIの捜査官に追いかけられる。この逃走劇も見ものである。

イリュージョンと銀行強盗の種明かしもあるので、これは騙されて深く考えずに観るのが良いであろう。映画だからできるのだと思わずに、こんな場面を実際に観れたら楽しいだろうなと思って気軽にそのスピード感に突き合うのが暑さしのぎになるかも。おたのしみが半減するので、映画の内容はここまで。

アトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)、ヘンリー(アイラ・フィッシャー)、メリット(ウディ・ハレルソン)、ジャック(デイブ・フランコ)、FBI捜査官・ディラン・ローズ(マーク・ラファロ)、フランス人の女性捜査官(メラリー・ロラン)

続編の『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』(ジョン・M・チュウ監督)は、新たに「フォー・ホースメン」が仕掛けるのは巨大IT企業オクタ社の陰謀の暴露である。オクタ社の代表を催眠術にかけ全て公表させるというねらいであったが、何者かにショーはさえぎられてしまう。ホースメンは逃走。気がついたときには4人はマカオにいた。これこそ最強のイリュージョンなのか。敵はだれか。

敵から出された命と引き換えの条件は、全ての情報に潜入できるコンピューターのチップをマカオ科学館から盗み出すこと。チップをカードにはめ込んで4人がパスし合い、警備員の目をごまかすのが格好いい。8割がた実際に俳優が練習しての実演だという。さすが『ステップ・アップ2: ザ・ストリート』『ステップ・アップ3』の青春ダンス映画のジョン・M・チュウ監督である。動線は美しくである。それにしても大掛かりな映画を担当したものである。ラストに謎解きがあるので、そこから映画を俯瞰する必要がでてくる。

ヘンリー→ルーラ(リジ―・キャプラ)、天才エンジニア・ウォルター(ダニエル・ラドクリフ)

また話しが飛ぶが、『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』の飛行機のトリックから大林宣彦監督の映画『北京的西瓜』(1989年)を思い出した。実際にあった話で、八百屋さんが中国の留学生のために八百屋がつぶれそうになるまで応援援助するのである。中国に帰った留学生たちは八百屋さん夫婦を中国に招待し皆で再会することとなる。

この映画を撮った時、中国では天安門事件があり、撮影のために中国から全面協力すると言われる。大林宣彦監督は守られて撮影するのであればこの映画の意味がないと、飛行機で八百屋夫婦が移動する場面は、航空会社の練習用の飛行機のモデルで撮影し、その理由も説明するという方法をとったのである。大林監督の時代のなかで起こった歴史を残す一つの試みであった。

またまた飛んでテレビドラマ『半沢直樹』で、重要書類をPCの中の秘密の部屋に隠すが半沢側と黒崎側とで消去と開示の闘いが緊迫感を与え面白かった。このくらいのハイテクの導入は実際にありそうで納得してワクワク感を増幅させるが、凄すぎてよくわからなかったというところまでいくと観客不在となることもある。「オーシャンズ」も「イリュージョン」もそのあたりの匙加減が大切と思える。

さらにドラマで猿之助さんの台詞の繰り返しも話題になったが、歌舞伎の源氏店では一人の呼びかけも「ご新造さんえ、おかみさんえ、お富さんえ、いやさお富」というのがあるのを思い出し表現が上だよなと。現在、幸四郎さんが歌舞伎座で言われている。そして繰り返しのとどめが「土下座野郎!」も河内山の「馬鹿め!」がぱっと浮かび笑ってしまった。

現代ドラマでの歌舞伎役者さんの土下座野郎は中車さんが最初ではありません。海老蔵さんが松本清張さんの『霧の旗』(2010年)で土下座しています。この作品は桐子という女性が主人公なのですが、海老蔵さんを主人公にしていたのがちょっと不満でした。

今回の書き込みは盛り込みすぎかも。ラスベガス関連映画は『グランド・イリュージョン』一作ですのに。