「三谷文楽」から文楽、歌舞伎へ(4)

これは『曽根崎心中』と『天網島時雨炬燵』を観なくてはと録画を探したらに二作品を一気に放送してくれていたのがあったのです。2006年に国立小劇場で上演されていた。パンフレットでは『曽根崎心中』が第二部であり、どうやらどうやら第三部の『天網島時雨炬燵』を鑑賞していたようである。

心中物には敵役と情に厚いひとが登場するが、『曽根崎心中』の九平次は本当に腹立たしい人である。醤油屋・平野屋の手代徳兵衛は親方に返さなくてはならないお金を九平次に貸すのである。ところが九平次は、借りていないという。印を落とし届けていて徳兵衛の持っている借用書はそのあとの日付だから徳兵衛はかたりだというのである。窮地の徳兵衛。それがもとで徳兵衛と天満屋の遊女お初は心中をすることになる。

「天満屋の段」はお初が徳兵衛を打ち掛けに隠し縁の下に導き入れる。そこには九平次もきていて徳兵衛の悪口をいう。お初は徳兵衛の悔しさを察し死ぬ覚悟を足でたしかめる。徳兵衛はお初の足を自分ののど元に持っていきその覚悟を知らせる。それによりお初も覚悟する。有名な場面の誕生でもある。

天神の森での心中となるのであるが、お初は白無垢に着替え、水色のしごきである。このしごきを縦半分に切って結んで長くし二人の体をつなぐのであるが、このしごきをつかっての二人の悲しくも美しい動きとなり、刀で二人は息絶えるのである。この場面が美しいので『其礼成心中』のおかつさんが実際には美しくはないと強調するのである。

お初がこのしごきを実際に切っているいようなので何か仕掛けがあるのであろうと思った。今回、文楽、歌舞伎、映画等と録画を整理したのである、もう一本文楽の『曽根崎心中』の録画があった。2002年、秋田県小坂町の康楽館で上演されていたものである。人形遣いのお初は蓑助さんで、徳兵衛は勘十郎(この時は蓑太郎)さんである。2006年と同じであった。案内も両方とも山川静夫さんである。

水色のしごきがカミソリで切れていく仕掛けをみせてくれたのである。糸でぬってあってかみそりを充てると糸を引っ張って半分に切れていく形となるのである。

康楽館には花道があるので、蓑助さんの提案で、天満屋を去る場面と天神の森への出の場面を花道を使ったのである。空中を動くお初と徳兵衛は足も地に着かずという心持であろうから違和感はなかった。映像では一方向からであるが、両方向のお客さんに満足されてもらうみせどころであったとおもわれる。アンコールで蓑助さんは花道からで180度に対してわかる細やかな人形の遣い方であった。劇場によってその雰囲気にも多少変化がでてきて同じ演目でもあきなかった。

天網島時雨炬燵』は、妻子ある紙屋を営む治兵衛(勘十郎)が、曽根崎新地紀の国屋の遊女小春(和生)との心中である。すでにふたりは心中の約束をしていたがなかなか会うことができない。小春を探して河庄の外に立つ治兵衛。中では小春が頭巾を被った侍の相手をしている。そして小春は心中しなくていいようにしたいと告げるのである。それを聞いた治兵衛は裏切られたと脇差を小春めがけて投げつける。

侍は治兵衛を格子に縛り付ける。それをはやしたてる恋敵の太兵衛。それをいましめる侍。侍は治兵衛の兄の粉屋孫右衛門(玉女・現玉男)であった。

孫右衛門は小春が心中する気がないので安心する。ところが、小春の心変わりが治兵衛の妻おさんからの手紙によるものだとわかるのである。孫右衛門は治兵衛と小春の間に入り、小春の心情を思いつつも手を切らせようと苦心するのである。この孫右衛門の情を出すのが難しいと住大夫さんは話された。

映像のほうにはそのあとの治兵衛宅「天満紙屋内の段」がない。治兵衛は自宅に帰る。おさんは夫の様子から小春が自分の手紙で心中を思いとどまったことを知り、小春は一人で死ぬつもりだと察知し小春を助けるために算段する。今度はそのおさんの気持ちに対して二人は申し訳ないと心中の道を選ぶのである。

簡単にいえばそうなるが、かなりほかの人とのお金と人間関係もあり複雑にからみあっている。

歌舞伎の『心中紙屋治兵衛 河庄』は、文楽とは趣がかなり違っている。まず丁稚がおさんの手紙を持参し小春に渡すのである。この丁稚が愛之助さんであった。(1997年大阪松竹座収録・歌舞伎名作撰))そのため観客も早々と小春の心変わりを理解するのである。小春(秀太郎)はひたすらじっと耐える。事情を知らず裏切りと思う治兵衛(藤十郎)は腹立たしさから小春を懲らしめようとし、それを止める孫右衛門(富十郎)とのやりとりがなんとも可笑しさをともなう見せ所となっている。

治兵衛と孫右衛門の浪花ならではの間の取り方とテンポは絶妙である。孫右衛門には本心を打ち明けたくなる小春を押さえる役目もある。その難しさがありながら笑いも入れるという歌舞伎ならではの「河庄」である。

文楽と歌舞伎の持っていき方の違いが分かりやすい演目の一つかもしれない。上方歌舞伎のほうは役者が演じているうちに工夫が加わり変化していったのであろうか。この間は真似をしようと思っても簡単にはいかない芸域である。

三谷ワールドが個人的嗜好から勝手な味付けができて本人は自己満足しています。

整理していたら断捨離できなくなりました。録画して忘れていた面白い組み合わせの舞台もでてきたのです。観るだけ見て録画するだけしての現在ということでしょう。ぬり絵していけるかな。努力しましょう。

追記: 緊急事態宣言延長のうちに新型コロナの変異株の拡大を防いでほしいです。ワクチンで希望が出てきたのに敵は手ごわいです。先におさえこまなければ。

追記2: 東日本大震災から10年。様々な報道がなされていた。被災地で当時10歳だったお子さんも成人されたわけである。成人された方が10年を通して見てきたことから自助ではどうすることもできないこともありますと語られていた。つらい状況をしっかり見つめられ前をむいて生きておられている若い力にこちらが光を当てられているようなパワーをいただいた。

追記3: 新型コロナの変異株のなかには、感染力が強く、15歳以下の子供たちの感染が多くなっているともいわれている。科学的検証をしっかりしてもらい対策を早急に検討していただきたい。若い力が未来に羽ばたけるように。

追記4: お気に入りは冷蔵庫に張れるミニホワイトボード(100均)。気がついた時に買い物の品物を書き込みスマホで写真に撮って買い物へ。バーッと記憶のままに品物を選び、じゃまにならないところで写真を見る。買い忘れたものを足してレジへ。有料配達も上手く利用して自転車で。

若いお母さん方電動自転車でお子さん乗せて頑張っています。電動はもう少し先の楽しみにとっておきます。