映画『ホテル・ムンバイ』『英国総督 最後の家』

映画『ホテル・ムンバイ』(2019年・アンソニー・マラス監督)は、2008年にインドのムンバイで起きたムンバイ同時多発テロで占拠されたタージマハル・パレス・ホテルが舞台である。テロリストに占拠されたホテルでは無慈悲な殺人が行われ、ホテルマンたちが何んとかお客を助けようと必死の行動にでる。

厨房で事件に気が付いた料理長が先頭にたち、恐怖におののき隠れているお客をさらに安全な場所へ移動させることを考える。もしこの場で去りたい者は誰も責めないから立ち去るようにと指示する。そして残った者だけで速やかに行動開始となる。

その中には、妻のお産が近い従業員アルジュン(デーヴ・パテール)もいた。彼は、出勤時間に遅れたため帰るように言われるが、料理長は彼の頼みを受け入れ仕事をくれたのである。彼はお金が欲しいのと同時にこのホテルでの仕事に誇りをもっていた。ホテルマンの話しであるが、観ていると今現在、新型コロナウイルスで闘われている医療関係者の方々の姿と重なってしまう。皆さんは意に反して無防備の中で頑張られているように思える。

フロントでは各部屋のお客に危険であるから部屋から出ないでくれとテロリストに隠れて電話で伝える。テロリストはそれを利用して、助けに行くからドアをノックされたら開けるようにと指示させる。言い終るとホテルマンは殺され部屋をノックして部屋のお客を殺していく。容赦ないのである。

テロリストには次々と指令が入って来て考える猶予など与えない。しっかりマインドコントロールされつつテロを実行していくのである。料理長やアルジュンたちはテロリストに悟られない部屋に何とか多数のお客を誘導できた。しかし、そこも見つけられそこから脱出を試みる。ぎりぎりの選択であった。そのことによって多くの人質の命が助けられた。

独自に何とか赤ん坊を助けようとする夫婦とベビーシッター。赤ん坊は母親と再会することができた。そして、アルジュンも妻のもとに戻ることができた。新たな命が守られる希望の兆しが見えるラストとなりホッとさせてくれる。アルジュンはシク教徒でターバンをきちんと巻くことを大切にしている場面が印象的であった。シク教徒としての理念もきちんと持つ青年であった。

映画『英国総督 最後の家』(2017年・グリンダ・チャータ監督)は、1974年、英国が300年間支配していたインドの独立のため最後のインド総督として就任した家族と、総督官邸につとめる使用人同士の恋愛の行方を描いている。

映画なので歴史的事実は差し引いて観るが、またまた知らなかったことを示唆してくれた。映画『ガンジー』は感激して観た記憶があるが歴史的成り立ちは残っていない。見直さなくては。

インド総督として着任するルイス・マウントバッテンは、なるべくスムーズにインドに主権を譲渡したいと思っている。インドは宗教的な問題を抱えていた。ヒンドゥー教徒とシク教徒の国民会議と少数派のイスラム教徒のムスリム連盟とに大きく分かれて対立していた。国民会議はネルーが、統一インド独立を主張。ムスリム連盟はジンナーがインドと離れパキスタンとして新たな国を作ることを主張。ガンジーは、統一インドとして最初の首相をジンナーにと提案するが、国民会議から反対され受け入れられない。

総督官邸には500人からの使用人がいるがそこでもヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立が発生してしまう。インドの他の地域では大きな暴動が起り、統一インドが無理と考えたマウントバッテン総督はイギリスにインドとパキスタンに分離して独立させるべく英国にもどり許可をとりつける。

独立にインド人は歓喜するが、いざ分離独立がなされると今度は国境を挟んでのそれぞれの国への1400万人の大移動が開始された。その混乱から食料が不足したり長旅で病気になったり、くすぶっていた宗教対立など想像を越える大惨事が出現する。

そうした時代の流れの中で総督官邸に使用人として雇われたヒンドゥー教徒のジートとムスリムのア―リアとが再会する。アーリアはジートが警察官だったとき面倒を見た囚人・アリの娘だった。二人は愛し合っていたが宗教の違いから再び離れることになってしまう。そして独立後の混乱の中で運命的な出会いがあり結ばれるのである。

もう一つ大きな事実があった。第二次世界大戦で英国も国力が弱まっていてチャーチルは1945年にすでにジンナーにパキスタン建国を約束していたのである。マウントバッテン総督は自分が色々の人々の意見を聴いて苦渋の決断と思っていたがすでに出来上がっていて自分は利用されただけだと言う事を知るのである。マウントバッテンは独立後も家族とインドに残り混乱の中で人々の支援する。

映画の最初に「歴史は勝者によって記(しる)される」と出てくる。映画としては分かりやすくまとまっていた。恋愛関係により社会の変革の中での個人ということを盛り込んだのであろうが、歴史的流れの方が興味深くそちらのほうが面白かった。知らないことの入口となってくれた。

追記1: かなり前からDVDも郵送によるレンタルに変えた。政府からのマスクの配布が始まるであろうし、それとぶつからないように、配達してもらう回数も少なくするためレンタル枚数を増やし、先に送ってもらうようにした。この時期、郵便配達の方やスーパーの方、配送の方、宅急便の方達には感謝である。ごみを収集してくれる方たちも。映画『希望の灯り』はスーパーで品物を補充する人々の話しで静かに淡々と進む映画である。悲しい事も起こるがジーンと心に沁みわたり、おだやかな冷静さを補充してくれる。

追記2: 安倍総理が3300円(2枚)のマスクのことを口にされ値段高いと思ったが、このマスク大阪府の「泉大津市マスクプロジェクト」で作らたものと知る。泉大津市は現在日本一の毛布のまちとして繊維に関しては長い歴史があるらしい。使い心地も良さそうで、かなりの洗濯回数にも耐えるらしく良品質のようである。泉大津市記憶に残しておこう。