ヒップホップ文化(DJ、MC)

ヒップホップ文化のDJとMCの要素が難しい。馴染みのない音楽の分野なのでその関係の映画を観てやっと入口を見つけたようなものである。レンタル店のCDの棚に、HIPHOPの分野にラップ関係のCDが並んでいるのがわかった。アーティストの名前がわからなかったのでその棚を探すこともなかったが何人かの名前には目がとまるようになった。

その中で、映画『8 Mile』はヒップホップ文化を知る前に観ていたのでMCのバトルの緊張感やそこからのし上がっていく壮絶さは少しわかっていた。MCもエミネムもゼロ状態で、キム・ベイシンガーが出ていたのでそれならと観たのである。ヒップホップ文化を知って、あの映画の世界かと思い出していた。場所はデトロイトである。

MCの自伝映画やドキュメンタリー映画を観て、ヒップホップ誕生のことを探れたのがドキュメンタリー『ヒップホップ・レジェンド』(2005年)で、その後の様子を想像させてくれたのがドキュメンタリー『ライム&リーズン』(1997年)である。

ヒップホップ・レジェンド』でのインタビューから、ブロンクスで誕生したヒップホップ文化の大きな力になったのが、クール・ハーク、アフリカ・バンバータ、グランド・マスター・フラッシュ等で三人の名がよく出てくる。特にギャングであったアフリカ・バンバータの名前が多く出てくるし、本人も登場し語る。アフリカ・バンバータはギャングであった自分の経験からパーティーなども警備させる術を心得ていて争いなども上手くコントロールする形態を作り上げ、1973年11月12日ズール・ネーションを結成し、ヒップホップの四要素を一つにした。11月12日はヒップホップ誕生の日であり、11月はヒップホップの月としている。

音楽が好きだったバンバームは、人間が持つ否定的なエネルギー、互いに傷つけあったり喧嘩や縄張り争いへのエネルギーを前向きなエネルギーへと変えて行った。ブレイクダンスのバトル、MCのバトルで闘い、さらなる向上へと前進させていった。ミキシングをやるだけだったDJのバトルも行われた。

当時はディスコの時代で、ビージーズの音楽や映画『サタデー・ナイト・フィーバー』の世界である。黒人の貧民街で育った若者たちはお金がなく、ディスコには入れなかった。彼らにとってディスコから流れてくる音楽は脆弱であった。彼らは自分たちの音楽を作り出し、自分たちのブロック・パーティーを開いた。そしてバトルで自分たちを高めていった。

音楽業界は、ディスコ音楽が飽きられることを予想し次の音楽を探していた。そして目を付けたのがヒップホップ・ミュージックである。レコードが発売され、大ヒットするや、中産階級にも広がっていった。そして新しいDATレコーダーがDJに変わり、DJは重要ではなくなりヒップホップ文化も変化してしまうのである。

ドキュメンタリー『ライム&リーズン』では音楽業界で成功したアーティストから出身地で頑張るのアーティスト、女性アーティストなどのインタビューが続く。成功者はヒップホップがビジネスとしていかに人生を変えられるかそれも重要なことであるとし、ラップのスキルが少しでもあれば、曲を出して金を稼ぎたいし、ストリートから逃れることが自滅だというなら意味が解らないと語る。自分の生まれ育った場所でギャングだった者はその現実をラップに、売人はその現実をラップにしていった。そして契約したレーベルとのいざこざから自分のレーベルを立ち上げる動きとなっていく。

広域に広がったヒップホップは西海岸と東海岸での抗争へと進んでしまう。アーティストたちは、メディアが煽り立てていてお互いに何のいさかいもないと主張しているが、結果的に2パックとBIGの死によって終結する。

この辺りや自分たちのレーベルの立ち上げなどについては、映画『ノトーリアス・B.I.G.』(2009年)ニューヨークのブルックリン出身BIGの伝記映画))、『ストレイト・アウト・コンプトン』(2015年・カリフォルニアのコンプトン出身のグループN.W.Aの伝記映画)などと合わせて観るとつながってくるが過激さもあるので要注意。

ヒップホップ・レジェンド』は、『ライム&リーズン』の後に制作されているので、インタビューに応じたアーティストはヒップホップの原点を忘れずにその精神をつなげることが重要だと考えている人が多い。

そして行きついたのがドキュメンタリー映画『自由と壁とヒップホップ』(2008年)である。パレスチナ人の若者たちがヒップホップによって自分たちの詞と音楽を作り出していく。ガザ地区と西岸のヒップホップが壁を越え、検問を越え交流するのである。知らなかったことを教えてくれ、さらにヒップホップの力を伝える見事な映画であった。映像の撮り方、編集に説得力がある。私的ヒップホップ文化のジグザグ道はここに行きつけた。

その他参考にした映画・『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』(50セント主演、彼の半生がベース)、『ヒップホップ ・ヴィ・アイ・ピーズ』(ヒップホップのビッグスターたちのインタビューとライブ映像)

追記: 『悠草庵の手習』をスマートフォンで見ると画面のサイズが合わないようです。原因がわかりません。スマートフォンの画面をトントンと二回軽くタッチすると見やすくなります。見て下さっている方にはご不便をおかけし申し訳ありません。宜しくお願い致します。