歌舞伎『岩戸の景清』から「忠臣蔵外伝」

歌舞伎座『岩戸の景清』は、浅草歌舞伎や、テレビの『鎌倉殿の13人』がかぶさるのでしょうが、出演メンバーから思い出すのは昨年の歌舞伎座11月の『花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしかおみせ)』です。芝居の並べ方が面白かったのと若手の役者さんがここまできたのかとの思いから今でもよみがえります。国立劇場での「忠臣蔵外伝」の公演を二つ見つけました。

筋書の整理をしていてそうであったと気が付いたのです。歌舞伎座の筋書もそうですが、表紙に演目が書かれていないので、後で見直したいとき表紙をめくらなければなりません。何とも不便なので、表紙にはがせるテープを貼りそこに演目を書いておいたのです。

ありました。フライヤーもありました。2007年(平成19年)12月の「それぞれの忠臣蔵」と、2013年(平成25年)12月の「知られざる忠臣蔵」です。仮名手本忠臣蔵のパロディーもすでに吉右衛門さんが試みられていました。

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2007年の「それぞれの忠臣蔵」は『堀部彌兵衛』『清水一角』『松浦の太鼓』の三演目をやっています。

堀部彌兵衛』。堀部彌兵衛は、中山安兵衛を見込んで養子縁組を申し込み、安兵衛も考えた末申し入れをうけます。そして彌兵衛はさらに三歳の娘・さちを嫁女にといいます。彌兵衛は15年経てば安兵衛36歳でさちは18歳と半分でちょうどよいといい、堀部家に春が訪れるのです。しかし、15年後、主君仇討ちの年となるのです。このさちを隼人さんが演じています。

清水一角』は討たれる方の吉良家側の人物を主人公にしています。史実ではさしたる活躍もなく討ち死にしたようですが、講談などで勇士にまつりあげられたらしいです。河竹黙阿弥もその線に沿って書き上げました。

この人はのん兵衛で、仲間内からもつまはじきにされています。弟・与一郎は真面目で酩酊した兄を自宅まで連れ帰ります。家では姉が一角の肌着をこしらえています。その夜、陣太鼓の音に一角は「来た!」とばかりに跳ね起き姉の用意した肌着を着て、姉が渡してくれた女ものの小袖をまとい防戦のためかけだすのでした。

清水一角が染五郎(現幸四郎)さんで弟の与一郎が種太郎(現歌昇)さんです。

松浦の太鼓』の大高源吾が染五郎(現幸四郎)さんです。

そして2013年の「知られざる忠臣蔵」は『主悦と右衛門七』『弥作の鎌腹』『忠臣蔵形容画合』の三演目です。

主悦と右衛門七』では、主悦が隼人さん、右衛門七が歌昇さん、右衛門七の恋する呉服屋の娘・お美津を米吉さんが演じられていました。年齢的にも似合った役どころと言えるでしょう。

忠臣蔵形容画合(ちゅうしんぐらすがたのえあわせ) ー忠臣蔵七段返しー』とありまして、大序から七段目までが舞踏劇で演じられます。

歌昇さんが若狭之介、奴、猟師を、隼人さんが星野勘平を、米吉さんがおかるをつとめられています。

その他、『元禄忠臣蔵』や『仮名手本忠臣蔵』にも皆さん参加されていますので、『花競忠臣顔見勢』のときは忠臣蔵に対する想いはよりふくらんだことでしょう。

こうやってひとつひとつ手にしていくのだろうと思いつつ初春の『岩戸の景清』をながめていました。

吉右衛門さんは初代の演目を演じつつ新たな構成を考え、さらに後進の育成に力を注いでおられたことにあらためて気づかされます。それはもうつながっていると思います。

2013年の観劇に関しては書いていましたので、興味がありましたら開いて見てください。

2013年12月10日 | 悠草庵の手習 (suocean.com)

2013年12月11日 | 悠草庵の手習 (suocean.com)

2013年12月12日 | 悠草庵の手習 (suocean.com)

追記: 「四の切」の幕切れの宙乗りは、国立劇場が最初だったそうです(昭和43年)。三代目猿之助さんが書かれています。「当時の劇場スタッフが、宙乗り実現のために努力と研究をおしまず協力してくれたことは忘れられません。これが今日の猿之助歌舞伎がうまれるきっかけとなったのです。」歌舞伎界にとって国立劇場は大きな存在です。

追記2: 国立劇場「伝統芸能伝承者養成事業」の紹介としての動画がのせられました。こういう人たちが歌舞伎を支えているのだということが伝わりますので是非どうぞ。

【願書受付1/31まで】国立劇場「伝統芸能伝承者養成事業」をご紹介【歌舞伎ましょう】 - 「歌舞伎ましょう」日本俳優協会・伝統歌舞伎保存会【公式】 100i.net

追記3: 上の動画の猿四郎さんの棒の扱いをみて、『岩戸の景清』の隼人さんの長刀の扱いをもっと大胆にできたかもと欲がでました。綺麗でしたのでここまでかなとおもいましたが、若いのだからもっとダイナミックさに挑戦して莟玉さんの弓と対比させたら色合いが濃くなったなと思い描いています。言うのは易きですね。

松也さんももどられましたので、こころおきない千穐楽を祈っています。