ひとこと・寿ぎの中でのお別れ

坂田藤十郎さんの舞台を観た最後が、昨年の四月歌舞伎座での米寿を祝う『寿栄藤末廣(さかえことほぐふじのすえひろ)鶴亀』であった。その時の印象が強く、昨年の11月にテレビ『にっぽんの芸能』でも放映されたので再度鑑賞し、藤十郎さんの舞台に柔らかい光を放つ佇まいは、「寿」の言葉が似合う方であるとおもえた。

武智歌舞伎で歌舞伎を知らない者にも何か凄い事をされたらしいとおもわせ、お幾つのときだったのかお初の足の色香の芸を知り、心中の道行きに圧倒させられ、自己中のぼんぼんの柔らかさに笑わせられ、政岡、戸無瀬に驚かされた。

寿栄藤末廣 鶴亀』では、後に続く役者さん達に囲まれ祝われながら次世代の姿を見守りつつ、しっかり所作の息の止めと吐きどころを大切に押さえられている。(合掌)

少し時間を置いてから、あらためてDVDの『封印切』と『河庄』鑑賞いたします。

ひとこと・歌舞伎『蜘蛛の絲宿直噺』

蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)』

全神経を集中。常磐津と長唄の生が嬉しくなる。ツケも迫力あり。

猿之助さんの五役の変化は衣裳、動き、絡みと緩急自在。こちらも全てに敏感に反応。中でも幇間が気に入りました。着物の裏地の縞柄、さすが江戸っ子の遊びの粋。足さばきもいとおかし。

女房役の笑三郎さんと笑也さんの豪華衣装と佇まいが御殿の格をあらわす。

猿弥さんと中村福之助さんのはっきりした対照さがこれまたよし。隼人さんが土蜘蛛にねらわれそれも廓攻めなのに納得。福之助さんと隼人さんの存在感がなんとも若々しくすっきりしていて、それでいてぎこちなさが薄れた成長ぶりが頼もしい。

とにもかくにも楽しかった。それでいて陰でのチームワークの心意気が伝わる。襖の美しい絵から蜘蛛の巣へ。黒衣さんがラスト後ろから飛ばす蜘蛛の糸も効果抜群。

終わってみれば、あれは夢だったのか。下りてきたクモが可愛いかった。やはり夢だ。

猿之助さんの『鏡獅子』がみたい。

映画『白痴』『虎の尾を踏む男達』

映画『白痴』(1951年、黒澤明監督)は、ドストエフスキーの小説 『白痴』をもとにして場所を日本の札幌にし時代を戦争の終わった後にしている。主人公は亀田(森雅之)と赤間(三船敏郎)が北海道に渡る青函連絡船のなかで出会う。亀田がうなされて奇声を発したのである。

亀田は沖縄戦で戦犯となり銃殺寸前に人違いとして助かりそのショックから神経がおかしくなりアメリカ軍の病院に入院し退院して札幌の知り合いの家に行くところであった。赤間はこの亀田が気に入り自分のことも話す。好きな女がいて父のお金を盗み彼女にダイヤの指輪をプレゼントして勘当になっていた。その父が亡くなり遺産が入ったので札幌に帰るところであった。

二人は札幌で写真館に飾られている赤間の彼女の写真をながめている。圧倒させるような美しさの那須妙子(原節子)である。亀田は、この人はとても不幸せなひとであるとつぶやく。さらに妙子の目にこの目をほかのどこかで見た目であるとおもう。

亀田は父の友人である大野家をおとずれる。大野家は那須妙子と関係があった。妙子は政治家の妾の身であったが、大野家の秘書の香山(千秋実)に持参金付きで結婚させるという話ができあがっていた。香山は大野の次女・綾子(久我美子)が好きであったがお金も必要であった。亀田の出現でこの仕組まれた動きが大きく変わっていくのである。

誰も見ぬけなかった妙子の心の中を亀田の純粋さが感じとっていた。妙子にとって同じ感性それは光であった。亀田は妙子の目と同じ目をおもいだす。処刑されるとき自分は助かるが処刑される前の若いまだ少年のような青年の目であった。自分はどうしてこんな苦しいめにあわなければならないのかと目は語っていたのである。その目と妙子の目が重なった。

この映画は非常に長くて2時間45分である。第一部が「愛と苦悩」、第二部が「恋と憎悪」である。妙子は亀田を選ばずに赤間を選ぶ。亀田は二人を追いかける。赤間は妙子の心が自分に無い事を知って亀田を殺そうと考えたこともあった。綾子が現れて亀田は綾子に恋をする。妙子への愛とは違うものであった。妙子はそれを感じていて綾子を天使として亀田を傷つけずに一緒になってくれる人として希望をもった。

しかし、綾子は妙子が亀田の理想の女性で自分と亀田の間に入って邪魔をする者と思われ、妙子と対決するのである。亀田の妙子に対する愛は、処刑の時何もできなかったあの青年と同じ妙子を傷つけないで救えないか、いや妙子の魂をじぶんが守り救わなければという愛であった。綾子への愛とは別物であった。

心のねじれは悲劇へと向かわせる。残った綾子は「私が白痴だったわ」とつぶやく。亀田の白痴は純粋さで、綾子の白痴はおろかという意味である。

出演者の個性がきわだっている。原節子さんの存在が強烈でそれでいながら心はガラスのように壊れやすく、いやすでに壊れていて、森雅之さんはそのかけらを集めて修復しようとしているようにもみえる。

この札幌のロケでは有島武郎さんの旧宅が使われていた。ロケをした家は1913年(大正2年)に建てられた家でこの家で森雅之さんは幼い頃を過ごしたことになる。『札幌芸術の森』に保存されている。森雅之さんが生まれたのが1911年で有島武郎さんの文学年表からすると、『北海道開拓の村』にある旧有島邸が森さんが生まれた家ということになりそうである。

映画のクレジットには美術工芸品提供がはっとり和光とあるのも興味深い。

ドストエフスキーの小説 『白痴』をもとにした玉三郎さん主演の映画がありました。『ナスターシャ』(1994年、アンジェイ・ワイダ監督)。これは映画館で観たのを思い出したがとらえられなかった。見直す予定なので、再度挑戦し納得したいものです。

映画『虎の尾を踏む男達』(1945年、黒澤明監督)は59分と短い。歌舞伎の『勧進帳』の映画化である。脚本は黒澤明監督。「虎の尾を踏む」は、長唄『勧進帳』の最後「虎の尾をふみ毒蛇の口をのがれたる心地して陸奥の国へぞ下りける」の詞からきているのである。安宅の関所をこえる時の義経一行の気持ちである。

弁慶(大河内傳次郎)、富樫(藤田進)、義経(岩井半四郎)、亀井(森雅之)、片岡(志村喬)、伊勢(河野秋武)、駿河(小杉義男)、常陸坊(横尾泥海男)、強力(榎本健一)梶原の家来(久松保夫)

強力の榎本健一さんの動き、表情、せりふがこの噺の軽さと世情を現わしている。音楽は服部正さんで、長唄の詞の一節を使って合唱にしたり、独唱や重唱などを挿入し映画の『勧進帳』を楽しめるようにしている。

安宅の関では梶原の家来を登場させ、勧進帳を読む弁慶と富樫の緊迫の場面を、弁慶と梶原の家来にかえ、勧進帳を読み終わる寸前でのぞきこもうとさせている。勧進帳を隠して巻き取る弁慶の優位性の雰囲気となる。

弁慶と富樫の山伏問答も簡潔にし富樫は関を通ることを許可する。そして「虎の尾を踏み~ 虎の尾を踏み~」と合唱がながれる。

そこへ梶原の家来が呼び留めて弁慶の義経を打つ。驚いて止めに入るのが強力である。何が起こったかわからないのである。その様子を見て富樫は家来が主君を打つはずがないと逃がす。

弁慶が義経にあやまるところで、強力がいう。そういうことだったのか。弁慶が気が狂ってしまったのかとおもったと。ここで初めて義経が顔をあらわす。十代目岩井半四郎さんは襲名したのが1951年なので本名の仁科周芳となっていてDVDなので(岩井半四郎)とクレジットされている。

そこへ富樫の家来がお酒を持参する。その盃に富樫氏の八曜紋が描かれているので、富樫は弁慶に対し、あなたの行動には感服したとの意があるのだろうと想像できる。

ここでの舞も強力がどじょうすくいをいれて陽気に踊る。そして弁慶がひとさし舞うと立ち上がって場面がかわる。見事な雲である。強力が酔って寝込んでいる。彼は目をさまし夢ではなかったのだと確信し、飛び六法で立ち去るのである。最初に観たときも面白いとおもったがやはり上手く作りあげられていると再度まいってしまった。

せっかくなので、歌舞伎の『勧進帳』(1997年・平成9年収録)のDVDも観る。映画で山伏に姿を変えているとの情報から弁慶が自分たちは艱難辛苦を通過してきたのだから作り山伏などではない。本当の山伏の姿だという。たしかにである。歌舞伎のほうは優美なつくり山伏なのが歌舞伎である。弁慶が團十郎さん、富樫が富十郎さん、義経が菊五郎さん、常陸坊が左團次さん、そして三之助時代の新之助さん、菊之助さん、辰之助さんである。

観慣れているのに、違う分野で観たあとのためか新鮮で、そうそうこうなるのであると一つ一つ確認する感じでしっかり堪能してしまった。長唄もたっぷりである。こういう交差も好いものである。

歌舞伎座『楊貴妃』

玉三郎さんの口上から始まる。今回の背景は金屏風であった。中央に向かって次第に屏風の高さが低くなっていく。DVD『坂東玉三郎舞踏集3 楊貴妃』の『夕霧』の背景が金屏風で舞台一面の高さになっていたのを眼にしていた。場所はかつての銀座セゾン劇場なので、広さから考えての舞台づくりということであろうか。衣裳の色も白系の銀の感じである。9月は歌舞伎座の前での「雪之丞変化」の感じであった。

DVDの『楊貴妃』を観ていたのでそのこちらの気持ちと玉三郎さんの話しや生の舞台と映像にさらに自分の中の映像が重なるという時間空間であった。

京劇の独特の手は仏画からきているということで、玉三郎さんが中国で京劇に触れた時シルクロードの風を感じ、それはシルクロードを渡ってきた楽器を収集して出来上がった音楽であるということであった。

ヨーロッパでのバックステージの見学の事にも触れられて、もっと近づきたかった美しい衣裳のことなど。ファッション系のドキュメンタリーを観るのが好きなので先日観た『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』が浮かぶ。インドの織物の色と刺繍、そしてそれらの布を重ねて洋服を作るデザイナー。歌舞伎の衣裳のようだとおもった。大きく映像に映し出される打掛、着物、帯、のぞく裏側の模様、重ねられた襟の色具合など、洋服にしたときの軽さと歌舞伎の衣裳の重さの違いでその模様などは自由自在である。玉三郎さんは様々な豪華な衣装を身に着けられることにも喜びを感じられていた。

楊貴妃』の衣裳となると刺繍である。そして長い黒髪に負けじと優雅に飾られた髪飾り。

今回の歌舞伎座映像バックステージでは玉三郎さんの楽屋にも。工芸品の部屋である。

楊貴妃』は、夢枕獏さん作で玄宗皇帝が亡き楊貴妃に自分の文を方士に届けさせるのである。方士は修業をして仙術を身につけ亡き人の魂と話しが出来るのである。舞踊集では彌十郎さん出十郎さんで今回の映像は平成29年の歌舞伎座で上演したもので中車さんであった。中車さんの方は仙人のイメージを強くしたのか老人となっている。それぞれの方士の設定にあった趣である。

楊貴妃が姿を現す時、「九華(きゅうか)の帳(とばり)」から出てくるとあるが舞踊集ではその様子を手のみで表現している。歌舞伎座では小さな東屋のようなところから「九華の帳」をそっと押し分けて現れるのである。具体的になるのであるが、最後姿を消す時も「九華の帳」の中へ消えていく。この最後は舞踊集で消える時は透ける幕の中に入っていきその姿が飛鳥時代の仏像のように見え幻想的で、こちらの方が好きである。

玄宗皇帝の言の葉は文箱に結ばれたひもで方士から楊貴妃に手渡される。映像ではそれを手にして舞うが舞台での玉三郎さんは手に何も持たない。すでにこちらの世界では見えていなくても見えているのですといわれているようである。

舞踊集では舞台の狭さから上手に動いてすーっとわからないように大きな扇を受け取り玄宗皇帝が作った曲に合わせて踊るが、今回は見えないように後見から受け取る形にしている。邪魔にならないように後見の姿もなるべく見えないようにして工夫していた。一人で舞うということでそうした工夫をいろいろ考えられたこともよくわかった。様々なことが浮かびたっぷり堪能させてもらえた。

いつかふたたび全てを生で『楊貴妃』を観ることができるであろう。『老松』も生で観たい舞である。

https://www.tjapan.jp/entertainment/17396921

追記  能の『楊貴妃』も基本に考慮されているので「九華の帳」は能の作り物から考えられたのだと気がつきました。能の『楊貴妃』も観てみたい。胡弓、筝、尺八などの楽器で大陸へと誘われますが筝といえば驚かされたことがあります。亡くなられた箏曲家の二代目野坂操壽さんと娘さんの野坂恵璃さんが25絃筝で伊福部昭さん作曲の『交響譚詩』を演奏されているのをテレビで観ました。伊福部昭さんが箏曲を作曲されていたことにも驚き箏曲の力強さにも圧倒されました。融合されると新しい世界が広がるのが素敵です。

ひとこと・玉三郎舞踊集『お夏狂乱』

坂東玉三郎舞踊集5『お夏狂乱』のDVDを十数年ぶりで観る。同じDVDを持っている友人にも観てもらった。彼女もすっかり忘れていたようである。

開口一番、お夏が可哀想で泣けたと。そこまで感情移入しなかったが。段四郎さんの酔っ払ったあの足みた。みた!みた!踊りになっている乱れて乱れていないあの動き。喜劇性が邪魔をしない表現。あの酔っ払った馬子さえも狂ったお夏にこれはどうしょうもないと去ってしまうのがお夏の可哀想さを増してしまったのよ。そうみましたか。

こちらは子供たちが出て来て『本朝白雪姫譚話』のあの子役さんたちの確実な間のとりかたと発音の美しさを思い出していた。お夏の方の子供たちの悪戯は残酷でもある。

それからは映像作品『松の功』『此君』『』『ゆく春』『白百合』の話しへと尽きない。以前は退屈でよくわからなかったけれど、懐の深かさが感じられた。そうよね。着物の柄にまで心が動いてしまうし。時間が経過すると見方も変わる。まずはあるものをもっと生かさなければ。

ひとこと・歌舞伎座『口上』『鷺娘』

玉三郎さんの『口上』での語りを聴いていると、幼いころから本当に踊りが好きで歌舞伎座で踊ることを夢見て歌舞伎役者になられたのであろうと思えた。歌舞伎座で踊ることができるからこそ歌舞伎の修業にも耐えられたのでは。そして歌舞伎に関係のないかたが立女方(たておやま)の位置までに。胸が熱くなる。

歌舞伎座の奈落を説明されつつ、歌舞伎座の建物を含めての玉三郎さんの歌舞伎と一体の生きざまをみさせてもらっているようだった。舞台の映像、立ち姿、今までに観た舞台とが頭の中で早回しで構成。うなずいている自分がいる。

鷺娘』は起き上がる。さらなるこれからの道へ。

玉三郎さんでしかできない舞台構成なので、慎重に感染を避ける玉三郎さんらしい徹底ぶりの舞台である。

追記: こちらの書き込みなど読んでいない友人が『鷺娘』を見にいったそうだ。封印された『鷺娘』を見ることができて感謝で、アンコールで涙が止まらなかったとの事。かつて『鷺娘』を一緒に観た友人にその話をしたら、今の時期そういう涙はいいねと。 

ひとこと・歌舞伎座『かさね』

静かで座席にゆとりがあって開幕と同時に物語の世界に入っている。結構好きな環境である。

かさねが可憐でそれでいて奥女中づとめの物腰があり、与右衛門もこうなれば一緒に死のうかとおもってしまう。

赤いふくさを使ってのクドキの小さな赤がかさねの想いを伝える。ところが、与右衛門はワルな奴なんです。因果応報はこれを許さなかった。それがかさねにかぶさってしまう。逃れたい与右衛門。ついにかさねの恨みはさく裂する。美しい右側の横顔が哀れで悲しい。

幸四郎さんと猿之助さんの息があっていて、そろって足踏みするたびにあらがえない世界に深入りし物語が完成されていく。捕手の目の真剣さがいい。

友人に話したら「うんうん、わかるわかる。歌舞伎座行く。」よかった。これで友人の見方で二回たのしめる。

追記: 友人は猿之助さんのたもとの扱い方の美しさに見とれたのことである。お腹に子供がいることを伝えるしぐさ。鏡を見せられる時のいやいやのしぐさ。悪の幸四郎さんも美しく、好きだなあ、あの『かさね』。長電話。 

『ワンピース』からラスベガス映画(1)

アニメ映画『ワンピース フイルム ゴールド』とテレビアニメ『ワンピース シルバーマイン編』を観た。

ワンピース フイルム ゴールド』の方を先に観た。黄金船「グランド・ゾーロ」の主でカジノ王がテゾーロである。金大好き、お金大好きである。それには生い立ちの体験が関係しているがそれは略す。「グランド・ゾーロ」に乗り込むルフィ一味。このカジノでルフィはつきにつきまくって勝ってしまうが突然つきが逃げてしまい大負けをして船底の牢獄へ。

ゾロは黄金で固められ公開処刑がきまる。上流人にばけて行動するナミたち。さて運命はいかにである。

複線としてナミのかつてのライバルであるカリーナが登場。テゾーロ側である。ナミとカリーナの関係も混戦模様。さてテゾーロのエンターテイメントであるゾロの公開処刑は成功するのであろうか。ナミとカリーナの勝負はいかに。

このアニメ映画から頭の中はラスベガスに飛んだ。歌舞伎の弥次喜多の宙乗りよりも一足飛びである。そのため見せ場は無い。

その前に『ワンピース シルバーマイン編』を少し。島全体が銀の鉱山である。そこを根城にしているのがシルバー海賊連合でトップがビル。地下は線路の迷路でその上を走るトロッコ人間・テベロンがユニークなキャラである。当然ルフィを追撃する。

ルフィを神髄しているバルトロメはルフィと行動を共にしてルフィの活躍のたびに感動する。感動しまくるのが笑える。そして黄金船のテゾーロの部下であるタナカさんがここに出ていて、シルバーからゴールドにつながっているのがわかる。ビルはタナカさんを通してテゾーロに上納金を納めていたのである。シルバーの上にゴールドの存在があることがわかる。納得。

ラスベガスへ飛ぶのは映画『オーシャンズ11』(2001年)であるが、これは映画『オーシャンと11人の仲間』(1960年)のリメイクであるが、時代差もあり内容はかなり違っている。ただ『オーシャンと11人の仲間』のラストの落ちが好きである。

映画『オーシャンズ11』にも出てくるカジノホテル「ベラージオ」の前では噴水ショーをやっているようだが、そこで新作歌舞伎『獅子王』(2016年)を演じたのが染五郎(現幸四郎)とその仲間たちである。

https://www.kabuki-bito.jp/special/more/more-other/post-japankabuki/

獅子王』はテレビでも放映された。観た時、背景が千々に変化し物語の中に没入するというより与えられるものに振り回されるという感じであった。今想うに、さらに積み重ねてという前提があるので、第一歩は早すぎることはないのだということである。今回のように積み重ねの道が突然さえぎられることもあるのだから。

ドラマ『半沢直樹』から歌舞伎雑感

堺雅人さんとなればドラマ『半沢直樹』である。続編に入ったが、歌舞伎役者さんが増えて濃い。半沢直樹のあの屈託のない笑顔を奥さんの花ちゃんに向けるのはいつの事であろうか。次回も満面の笑顔は見れない可能性が高い予感。

歌舞伎って隈取が派手で見得を切って顔力が強く、顔で演技するように思われる方も多いかもしれませんが、歌舞伎は身体表現です。顔の演技は抑え気味で、身体全体でその役柄を観せる芸能です。猿之助さんや中車さんも歌舞伎では顔芸はおとなしい。時には新歌舞伎で披露する場合もあるが。猿之助さんは、今回は思いっきり楽しんでいるふしがある。

こちらは「ルフィ~、どこへいったの。もしかしてルフィまでどこかに閉じ込められてしまったのか。伊佐山め!」である。

他に注目度の高いのは、及川光博さんの渡真利である。京マチ子さんの映画を観ていてドラマ『晴れ着、ここ一番』に出会った。及川さんは京マチ子さんの孫で、祖母の教育方針の締め付けから失語症になってしまっている。その役がぴったりで気に入り、偶然テレビで及川さんを見た時は今度はどんな役か注目する。なるほど、微妙な演技差で役柄を現わしていますなと納得している。ただしそのドラマを見続けると言うことは無い。前作の『半沢直樹』は一気に観たので、今回も、半沢直樹を助ける情報源の収集役には満足。

金融庁・黒崎の愛之助さんもこれからの出演なので、どうなることか。ねっちりくるんでしょうね。松也さんを含めてテレビでの演技の濃さは別として自然です。かつては歌舞伎役者さんがテレビに出ると間やセリフ回しに違和感を覚えることもあった。浮いてしまうというか。近頃は浮くどころか鳴門の渦です。

さて歌舞伎は『新版 雪之丞変化』について。このフラウヤーを観た時、中車さんが5役でこれは無理であろうと思った。いくら玉三郎さんが特訓をしてもそれほど簡単に習得できる歌舞伎ではない。さらに、浪路の名前がない。橋蔵さんの映画では浪路は大川恵子さんで、長谷川一夫さんの映画では若尾文子さん。重要な役である。疑心暗鬼のわくわくドキドキ感である。

中車さんの顔が映像で大きく映った時には笑ってしまい納得でした。そうきますか。それなら5役も務まります。顔芸は得意ですから。今まで玉三郎さんと共演して出来上がった役どころは身体と台詞で勤めあげられた。そこらへんは玉三郎さんもぬかりはありません。浪路も役者としては出現しませんでしたが話しとしてはきちんと登場し押さえられていた。

そしてもう一人映画では登場しなかった秋空星三郎の七之助さん。中村雪之丞の玉三郎さんの役者より上になる役者で、色々芸について雪之丞に教えるのである。「はい、はい」と神妙になって聴く雪之丞。七之助さんやりずらいのではと内心思いましたがしっかりと雪之丞に自分の役者魂を伝えてました。

親の仇をとってそこで役者として終わりではなく、その後も役者として雪之丞は立派に精進していくということになるのである。上手く3人の役者さんでまとめたなとの感想であった。ただ名前がないが狂言回しのような役を若い役者さんがつとめられ、なかなかの力演であった。これを書くにあたり捜したら玉三郎さんが語られていた。その中でお名前を知りました。(鈴虫・尾上音之助、坂東やゑ六のダブルキャスト)どちらの方だったのかはわからないのであるが、いいお役をもらったとおもいます。

玉三郎が語る、『新版 雪之丞変化』|歌舞伎美人

新版 雪之丞変化』が昨年の8月なのである。ふり返ってみればコロナのこの時代、出演人数を制限しての新作歌舞伎がすでに試みられていたと言うことになる。昨年は若い役者さんも沢山出演されていた。

その後、染五郎さんと幸四郎さん、團子さんと猿之助さんは、『連獅子』に挑戦された。染五郎さんはそのたくましさにいまだにあれは染五郎さんのバーチャルとしか思えないのである。友人が染五郎さんがテレビに出ているのを見て色気があるという。舞台ではおっとりとしたマイペースかなと思っていて色気は感じられなかった。見方はさまざまである。そこで、『連獅子』を勧めたら大満足で観劇後はいつものところでカンパイだったそうである。

團子さんと猿之助さんの『連獅子』を観た友人は感想のメールがこない。2日後に会う予定なのでと会ったとたん開口一番「メールではなく直接言いたかった。年齢的にも最強の組み合わせ。」と超興奮であった。こういう時は勧めた方も一安心である。「いつもの『連獅子』と違っていたわね。」澤瀉屋型である。この二つの『連獅子』を並べてシネマ歌舞伎かDVDにしてほしいものである。こういう時代なのでDVDがいいですね。

前回の『半沢直樹』を観ていた友人は、2019年6月の『封印切』の丹波屋八右衛門の愛之助さんについてドラマと重なったみたいである。黒崎のねちねち感が八右衛門にも出ていて押さえた演技でよかったとのこと。わたしは悪くはないが、八右衛門の我當さんのあのテンポの可笑しさと憎たらしさにはかなわなかったと。友人は我當さんのは観ていなかった。ドラマって見る眼に影響するのだと知る。

女車引』は初めてで、松王丸の妻・千代(魁春)、梅王丸の妻・春(雀右衛門)、桜丸の妻・八重(児太郎)の舞踏なのである。児太郎さんが魁春さんと雀右衛門さんに囲まれて大丈夫であろうかと少しはらはらして観ていたが、なかなかしっかりとつとめられていて次第にゆったりと鑑賞した。友人は、雀右衛門さんの後ろの襟首に色気を感じてずっと雀右衛門さんを眺めていたそうである。これまたそれぞれの見方で面白い。

壽式三番叟(ことぶきしきさんばそう)』は、松江さんの千歳が抜群に良かったと一致。松江さんはこういう雰囲気が合っているのかと再認識。幸四郎さんと松也さんの三番叟は、やはり踊り込んでいるかどうかの差が出たと思う。松也さんは少しテンポが遅れていた。幸四郎さんは、操り三番叟の動きが所々で垣間見えていた。踊りは役者さんの踊り方があって、その踊り方が好きというお客さんも多い。たとえば松緑さんはきちんと基本が決まっていて好きであると言うお客さんの声をきいたことがある。友人も幸四郎さんの踊り方も好きで松緑さんの踊り方も好きだという。

吉右衛門さんと仁左衛門さんは別格。そんな感想を勝手気ままにしゃべりまくるのも観劇の楽しさである。出来れば数日おいてしゃべる方が冷静になって話題が増える。

生の身体表現がみたくなる。八月の歌舞伎座は迷いが増す。無事に迎えて無事に終わって欲しい。

映像ではドキュメンタリー『マイヤ・プリセツカヤ』が神業であった。こんなバレエであったのかとじっくり観れたことに歓喜である。これからも映像での時間が続く。DVDの紹介にアニメ映画『ワンピース フイルム ゴールド』が映った。これ観なくては。そして『ワンピース フイルム ゴールド』映画連動特別編『シルバーマイン』があった。さあこれからかたずけなければ。

半沢直樹がんばれ! 奥の手は伊佐山へのルフィからのパンチと大和田のポケットに新種の昆虫をもぐりこませること。

テレビドラマ『BG~身辺警護人~』の最終回に海老蔵さんが出演とのこと。観た事が無いので最終回みてみよう。テレビ朝日 30日(木)夜9:00~

追記

歌舞伎座の中の観劇は安心です。松竹さんも最大限に注意されています。その前から行き慣れた劇場ですので、一幕で休憩も無いので静かに入って静かに去ればいいことと思っていました。多分観劇されるお客さんは、そこまでの行き帰りの途中と道を検討されると思います。車でいければ安心度は高いです。そうできない時は悩みます。外にいる時間の長い、人との接触の少ない移動を検討。そのため乗る電車のいくつかのシュミレーションを検討。あとは暑くなりますので観劇者の自己体調との対話です。家を出て家に帰るまでが、今は観劇の作法ですから。

これからの観劇の一つの目安となることを願っています。

追記2

5日の歌舞伎座の三部が公演中止になったようです。即対応されました。舞台関係者の方々が自分の体調について言いやすい環境であってください。今はそれが大切です。この時期の重圧に押し潰れませんように。

追記3 歌舞伎、演劇など無観客舞台無料配信や動画などで愉しませてもらい、愉しませてもらっている。近頃あやしいコロナの動きなので、無観劇観客へ方針転換も考慮し始める。そこにいなくても誰かが潜んでいます。夏の怪談話。ただし、おあしは払いましたので足はあります。油断大敵。

映画『ステキな金縛り』からドラマ『ステキな隠し撮り~ 完全無欠のコンシェルジュ~』(3)

さて映画『ステキな金縛り』には、出演の時間に関係なく個性的な出演者が多いので、こちらの頭の中の整理を兼ねて紹介しておきます。

・すこぶる好奇心の強い裁判長(小林隆)

・六兵衛の子孫で歴史家として六兵衛の名誉回復のため慰霊碑建設に尽力する木戸(浅野忠信)

・殺された鈴子の姉の風子の夫でなぜか外国人的ジェスチャーの日野(山本耕史)

・エミの恋人の工藤と役者仲間でやる気だけはあるが売れていない村田(佐藤浩市)

・法廷画家で六兵衛が見えていている日村(山本亘)

・奥多摩からエミと六兵衛を乗せる落ち武者頭のタクシー運転手(生瀬勝久)

・ファミレスの店員(深田恭子)・ファミレスで六兵衛を見て驚く男(梶原善)・道路で六兵衛を見て悲鳴を上げる女(篠原涼子)・エミのボスを看取る医者(唐沢寿明)・テレビの中での心霊研究家(近藤芳正)・エミと並んでエンディングにとんでもない人が出ている(大泉洋)(その他・相沢一之、西原亜希、榎木兵衛 等多数)

映画『ステキな金縛り』の公開を記念して製作されたのがスペシャルドラマ『ステキな隠し撮り~完全無欠のコンシェルジュ~』(脚本・演出・三谷幸喜)である。『ステキな金縛り』の出演者を起用して、あるホテルの新人コンシェルジュ・西條ミエ(深津絵里)が、8人のスイトルームのお客様からの要望に応えるのである。上司のコンシェルジュ・菅原(小林隆)からコンシェルジュの言ってはいけない言葉「駄目です。無理です。出来ません。」をやんわりとつきつけられる。

一番目の客は、芸術家(浅野忠信)で、色々探っていたらダンスの振付師で新しいアイデアが浮かばなくて苦しんでいた。ミエは盆踊りから発想して新しいダンスを披露する。どんな盆踊りだったのか、そちらが気になる。「ONCE IN A BLUE MOON」 

二番目の客は、映画監督(三谷幸喜)であらかじめDVDを見せられその感想を聴かれる。どうやら『ステキな金縛り』のようである。条件は自信の持てる言葉が欲しい。ミエは泣けたところは三か所。監督は七か所。しいて言えば七か所は多すぎであろう。最後にミエはバシッと決めの言葉を言う。13台の隠しカメラがフル回転。

三番目の客は、写真家(山本耕史)で、ミエにモデルになってほしいという。ミエは出来るだけ協力するとやる気あり。テーマはワーキングガール。部屋の中はドンドン暑くなっていくどんどん脱いでゆく。誰が。

四番目の客は、料理の出来ない料理研究家(竹内結子)明日のテレビの生出演のためにニョッキの実演練習である。この実習を見せられるのかと、しいて言えば退屈であった。しかし、このドラマの撮影は長廻しなのである。ハプニングあり。怪我されなくてよかった。

五番目の客は老人(浅野和之)である。愛人と一度だけこのホテルに泊まり至福の時間を過ごした。その愛人も亡くなり自分の命ももう長くはない。一時間でいいから愛人の代わりになってソファーに並んで座って欲しい。老人の話術に単純にダマされてしまって笑ってしまった。

六番目の客は、コール・ガール(戸田恵子)で一緒にいた国会議員(木下隆行)が亡くなってしまった。その死体の下に議員からプレゼントされた200万円のピアスがあるので探して欲しいと。大きな死体を動かして探しているうちに秘書(相島一之)が来て手切れ金を置いてゆき遺体を運び出す。役に立つ盆踊り。

七番目客は、シルク・ド・それゆけのスター(草彅剛)は、新しい技を考えなければならないので見ていてくれと。箱にライオンと入るのだそうであるが、なかなかスター一人が箱に収まらない。スターのオーラに箱が小さすぎるのかなんてことはない。技がないのでは。

八番目は会社員(西田敏行)で、会社のお金を横領していた。人生で最初で最後の贅沢にスイートルームに泊まる。一度でいいから誰かの役に立ち、ありがとうと言われたい。ミエは答えられるであろうか。

その他、怪我で包帯だらけの客(小日向文世)、歌手KAN、超ショートの小佐野(中井貴一)と外務省役人(阿部寛)、映画『ステキな金縛り』の宣伝をする阿部つくつく(市村正親)、最後はミエのコンシェルジュとしてのダメさぶりを見つめていた盗影犯人(生瀬勝久)

個性的な客(俳優)に深津絵里さんはよくコンシェルジュとしても俳優としても答えられていた。8人との長が回しであるからお疲れであったろう。ショートの客の要望も細かかったり想定外だったりで、よく言いますよと楽しかった。

三谷幸喜さんは歌舞伎の台本も書かれていて演出も。『月光露針路 日本風雲児たち』(つきあかりめざすふるさと)で原作はみなもと太郎さんの長編マンガ『風雲児たち』からである。映画『おろしや国酔夢譚』を観ていたので内容は分かっていたが、ロシアの宮廷をどう描くのかが興味あった。さすが歌舞伎役者さんと舞台装置である。

女帝カテリーナが猿之助さんで公爵ポチョムキンが白鸚さんである。猿之助さんは高杉早苗さんを思い出してしまった。ミュージカルでもベテランである白鸚さんは、さすが外国の高官のそのものであった。お二人で豪華絢爛な宮廷を描いてしまわれた。それに圧倒されながらも負けない光太夫の幸四郎さん。彼の願いは乗組員と途中で亡くなった者たちの魂を日本に連れ帰ることであった。(シネマ歌舞伎として10月上映予定。)

追記: NHKBSプレミアム『英雄たちの選択』(名優誕生!九代目市川團十郎新時代に挑む」の放送は大変よくまとめられていてわかりやすかった。活歴や川上音二郎との関係など。再放送は24日(水)午前8時~。川上音二郎との関係では茅ヶ崎の「ちがさきナビ」の「地図でめぐる茅ヶ崎と芸術」の地図が参考になると思います。http://www.chigasaki-kankou.org/faq/http://www.chigasaki-kankou.org/pamphlet/